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金と黒の王国2  作者: 朔夜
彼女は手探りで進む
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33/47

第33話 彼女は選び①

 本日はフレメイアの月、闇の13日。

 明日はジェラールと採取可能な大地の日です。


 私は扉に近づいて選択肢を発生させると『街に出る』を突っつき、まずは『商店街に行く』を選びました。

 冒険者ギルドでも別に良かったのですが、なんとなく。

 看板娘のグレーテルさんと挨拶を交わして、選択肢を発生させて、目的アイテムの在庫をチェックします。


 よし!!

 ありました。

 最大数が6ですよ。

 供給してくれたと思わしき、見知らぬ冒険者(多分)さん。どうもありがとう。

 あとはジェラールに会って一筆書いてもらい、シュダァ様に会ってお墨付きをもらって、セルマに会いに行けばOKです。

 ……セルマPTインフラグ達成一歩手前と言う状況に関わらず、何気にターン数が消費される気がしてきましたが、気にしない方向で!


 迷うことなく私はキラービィの針を不足していた3個分購入し、ウキウキしながら<青い鳥>を後にしました。


 次に、『冒険者ギルドに向かう』を選択。


 今日のうちに冒険者ギルドに行って、めぼしいアイテム依頼を引き受けておかなくてはいけません。

 引き受けてないと、前回と同じく採取地がジェラールの都合――ランダムになってしまいます。

 ジェラールのPTインによる恩恵を受けるので、その土地の採取アイテムは順調に手に入るでしょうが、前回のように都合良く採取したアイテムの依頼があるとは限らないのですよ。

 採取したいアイテムを最低一種類、決めておいた方が無難でしょう。


 難易度が高過ぎるものだと依頼達成数に至らない可能性もあるので、報酬が高額過ぎるモノは避けますよ。

 狙い目は、そこそこ高額で期間が長めというモノ。

 その辺の見極めが肝心ですね。

 低リスク低リターン過ぎては、いつまでたっても賄賂設定金額10万ギラーまで届きませんから。


  受付に向かう

  掲示板に向かう

  アレンに会いに行く

  冒険者ギルドを出る


 おや?

 通常選択肢に、新しいモノが加わっていますよ。

 今まで冒険者ギルド内にアレンさんが居て、向こうから話しかけてくるということはあっても、ルーシェリカさんわたしから探して接触するという選択っていうの、実は一度もなかったですし。


 一定の条件を満たしたか、アレンさんが暇を持て余している状態なのか。

 どっちでしょう?

 どちらもあり得ます。昨日、討伐クエスト達成報告しましたしね。


 実のところ。

 アレンさんの依頼を引き受けてから呼び方も変わっていた(友好度か好感度が上がっていた)ので、内心私は、いつ選択肢が出て来るかなーと思っていました。

 暇な時なら同行してもいい――って、初日に言っていた割に選択肢として出てこなかったので、むしろ、無いのがおかしいなと思っていたくらい。


 とりあえず、当初の目的を果たします。

 まずは、アイテム依頼の掲示板に行きますよ。

 さてさて。

 めぼしい依頼はあるでしょうか?


 …………う~ん。

 依頼票、あんまり変わり映えしませんね。

 こう、これだ! と、感じるモノがありません。


 いっそのこと、30万ギラーという超高額な『金色蜜リンゴ、2個』を狙うべきでしょうか?

 期限が『フレメイアの月、混沌の50日』までという長期間ですから、ジェラールと一緒に採取出来るチャンスがまだまだありますし、けっして不可能であるとは思いません。

 選びませんけど。

 だって非常に入手困難なモノだから、この値段なのでしょうし……ロゼみたいに、ジェラールがPTイン不可な期間があったりすると、たちまち入手難易度が跳ね上がりますからね。

 いざ選ぶとなると躊躇ってしまいます。

 

 しばらく考え込んで。

 私はアイテム依頼をあえて何も受けて行かないことにしました。

 今回も前回と同じく、ランダム採取にします。

 依頼に該当しないモノばかりとれるかもしれませんけど、今後出てくる可能性だってありますから。

 それに。

 アイテムを特定していないと、絶対数が伸びない代わりに種類が多く手に入る気もするので。


 決意すると、私はアレンさんに会いに行くことにしました。

 選択肢を突っつきます。


 ルーシェリカさんがきょろきょろと周囲を見回しながら歩き出したなーと思うと、ややあって、動きが止まりました。

 ぴたりとその視線が、一か所に定まります。

 そこには、カウンターごしにギルド職員の青年(中)と会話中のアレンさん(外)の姿がありました。


 さすがギルド長と言うべきでしょうか?

 アレンさんは自分に向けられるルーシェリカさんの視線に気づいたらしく、一秒も経たないうちに目が合いました。

 ちょうど話のキリも良いところだったのでしょう。

 職員の青年に何かを告げて、アレンさんがその場から離れると、ルーシェリカさんの方に真っ直ぐ近づいてきます。


「おはよー。ルーシェリカちゃん、今日も来てたんだ? 仕事熱心だなー」


 アレンさんが朝の挨拶をしてきたところで、私の目の前に文字が空中に浮かび上がりました。


  アレンと世間話をする

  アレンに同行を頼む

  挨拶して、その場を去る


 あ。やっぱり同行出来るチャンス到来でしたか。

 どうしましょう?

 私としては、セルマフラグというか、ジェラールの依頼を先に達成してしまいたいところなんですね。


 アレンの同行――PTインとは限らないところが、躊躇いポイントなのです。

 PTインなら一緒に戦ってくれるので、ルーシェリカさん的にも怪我などの負担は少ないのですが、同行であれば違います。

 初日と同じ感じに着いてきてくるだけでも、もしもの戦闘不能時の生還という方面では安泰。

 1人で経験値が積める、死亡回避としては問題無いので何も予定がなかったのなら、迷わずに同行を選んでいたでしょうけど。

 最初に言いましたが、明日はジェラールと1日採取で潰れてしまうので、その分だけセルマPTインが遠のきます。

 仮にロゼが任務から帰還していた場合は、彼女と出かける関係上、その翌日まで潰れますしね。


 しばらく考え込んで、私は『アレンと世間話をする』を選択しました。

 友好度が上がりそうだなと思ったからです。

 何かの情報くれるかもしれませんし。


 アレンさんはカットバニィ討伐の進行状況をサラっと話してくれました。


 前にも話してくれましたが、元凶であるソードバニィは私が遭遇した他にも何体か出没していたそうです。

 幸いと言っていいのか、冒険者ギルドのみならず、王国上層部に上げられた報告を受け取った軍部が動くのが早かったので、最悪の状況ではないもよう。

 ここにきて、ソードバニィだけではなくカットバニィも要討伐対象として新たに全ギルド所属者に指定することになったそうなのです。

 王国側からそのための補助金も出ることも決まったらしいですよ。


 カットバニィ自体は弱いモンスターですし、今までもかなりの数を倒しています。ソードバニィと同じ扱いなら、そこそこ儲けることが出来るでしょう。

 そこそこと言うのは、カットバニィは全体数が多いので、そこまで高値は付かなさそうだと思うからです。通常時に売り払うより割高なのは確かですから、儲けれるのは確か。


 私はアレンさんとの会話を終えると、そのまま受付に向かいました。

 もちろん、買い取りの方ですよ。


 その結果、買い取り対象であるカットバニィの爪のお値段は、1個当たり50ギラーということが分かりました。

 食品として利用価値があるバニィの肉が一番良い状態で12ギラーということを考えれば、多分、これでも大量発生前の数倍高値がついたのでしょう。

 ソードバニィの角の10分の1の値段ですが、アレとは強さも数も違いますし。

 まあ、コレくらいが妥当ですね。

 普段より上昇しているのは確かなのですから、冒険者的にも小遣い稼ぎくらいの感覚で見かけたら狩る様になるでしょう。


 もっとも。

 現物は現在倉庫の中ですから、今の段階で私は売れませんけど。

 しばらくは高価買取期間だと思うので、焦って運び込まなくても大丈夫でしょう。


 良いことが重なっていた私は、機嫌良く闇の神殿に向かいました。

 普段と同じくセシルさんに祝福してもらい、カーティス神に祈りを捧げます。

 そして、『寄進』をタッチ!


  100ギラー

  

  1000ギラー


 浮かび上がった選択肢ですが、ちょっと変ですよ。

 具体的に言うのなら、500ギラーの色がおかしいです。

 発光が抑えられて白っぽい曇りが掛かり、ほとんど文字が見えない状態ですね。昨日は他の金額と全く同様の、自己主張の強い色合いをしていただけに気になります。


 不審に思った私は、うっすら見えるだけの500ギラーを突っつきました。

 その瞬間、ブッブー! と、クイズ番組で不正解を出した時のような音が響きます。


『現在、この選択肢は実行出来ません。

 500ギラーの寄進を行うと、セシルがPTメンバーとして1日同行します。

 しかし、カーティスの力が強まる闇の日、闇神殿に務める神官は洗礼などの外すことの出来ない仕事を行うため、神殿の外に出かけることが出来ません。

 別の日に選択しましょう』


 天の声ナレーションが、そんな答えを教えてくれました。


 ああ。

 なんていうことでしょう。

 既にPTイン条件が整っていた人間が1人居たなんて。


 というより、各曜日にはちゃんとした意味があったんですね。

 闇の日にカーティス神の力が強まるのなら、他の神の属する曜日もそうなっているのでしょう。


 とにかく、500ギラーはPTインですね。

 しっかり覚えておきますよ。

 闇の日は駄目――つまり、ちゃんと文字がハッキリ見えている曜日なら、まず問題なく引き受けてくれると。


 この世界の物価を考えると、ちょっと割高なようにも思えますが、戦闘での負傷の可能性があるのに日当5000円と考えるなれば全然安いですし。

 見習い神官ではなさそうなセシルさんですから、割に合わない――ルーシェリカさんよりも低レベルということは無いでしょう。


 そう開き直ると、私は1000ギラーを突っつきました。

 昨日の今日で、100ギラー――スキル取得をしても意味無いですから。


「……では、私の後についてきてください」


 そう言って先導するセシルさんに連れてこられたのは。

 昨日スキル操作をした部屋の、さらに奥でした。


 ハッキリ言って、広いです。

 先程の部屋と同じく明るいので隅々まで良く見えるのですが、多分、騎士団の鍛練所と同じくらいの面積があるのではないでしょうか?

 中央の位置辺りの床に祈祷所にもあった光る魔法陣ッぽいモノがあるのが見てとれますが、基本的にはやたら広いだけの部屋で、私の目には照明以外は特に何も置いていないように見えます。


 もしかしたら闇神殿の神官達って、此処で定期集会でもしているんですかね?

 広さの割に何もないので、それくらいしか使い道が考えられないのですが。

 

 私が入ってきた方角とは別にドアが見えます。

 まだ続き部屋があるようですね。この王都の地下に、どれだけ闇の神殿が敷地面積を持っているのか結構気にかかるところですよ。


「この紋章の上で止まってください」


中央付近でセシルさんは立ち止まると、魔法陣ではなく紋章らしいモノを指差して言ってきました。

 その言葉に従って、ルーシェリカさんは足を止めます。


「では目を閉じて、楽にしていてください。私が良いというまで動かないように」


 どうやら、セシルさんは今から神聖術を使うようですね。

 神聖術の作動による眩しさを軽減するために目を閉じさせるというのは、昨日の体験から理解出来ますが、動くなってどういう意味でしょうか?


 ルーシェリカさんは素直に聞き入れて、目を閉じます。

 呪文も何も聞こえなかった昨日と違って。

 何と言っているのか理解は出来ませんでしたが、セシルさんの声で一定の韻を踏んだ詠唱のようなモノが発されているのが聞こえてきました。

 移動しているようで、セシルさんの声が段々小さく聞こえにくくなっていきます。


 そんなセシルさんの詠唱に合わせるように。

 足元の床――紋章から微風が立ち上り、ふわふわとルーシェリカさんのスカートを軽く持ち上がるのが、視覚は閉ざされていても触感で分かります。

 微風だけにとどまらず、一秒にも満たない時間ではありましたが、そっと撫でるように靴底から頭のてっぺんまで何か温かなモノが触れていきました。

 ちょっとばかり、むず痒いです。

 

「……はい。掛かりました。目を開けてください」


 ようやく出た許しに。

 すぐさま目を開けたルーシェリカさんの視界に飛び込んできたのは、3メートルほどの距離に立つ漆黒の女性の人影でした。


「セシル神官、これは?」


 ルーシェリカさんが硬い声で尋ねました。

 そりゃあ、そうでしょう。

 この人影――色彩が真っ黒でのっぺらぼうなのを別にすると、髪型も体格も服装も、ルーシェリカさんそっくりなのです。

 しかも、ただの影じゃありません。質量もありますし、ルーシェリカさんが身動きすると同じように動くんですよ。 


「正確に言い表すのならば、カーティスの御力で貴女の姿・能力を影に写し取って具現したモノですね」


 ルーシェリカさんから10メートルほども距離をとっていたセシルさんは、あっさりとそう答えました。


今回であのアイテムを入手出来るかは、サイコロ振って決めました。

奇数だったら×で、偶数だったら○。結果は4で、偶数だったので入手に。


久々にゲーム『金と黒の王国』バージョンのアレンの同行条件。


討伐・アイテム依頼を各1件以上達成している。

友好度と好感度の合計が35以上。

主人公のレベルが10未満――の3つです。


あくまで同行であってPTメンバーではないので、一緒に戦ってくれません。

その代わり、戦闘不能になりそう(瀕死状態)になったら、アレンが割って入ってモンスターを倒し強制的に戦闘は終了。

そのまま王城まで送ってくれます。

レベルが10を超えると、「俺が一緒についていかなくても、実力的に大丈夫そうだな」と言って同行しなくなります。シビア。

冒険者ギルドの依頼(種類問わず)を受けて三日以内に達成すると、アレンの好感度が5、一週間以内で2、一週間以降期日内で1上がる仕様。


セシルPTメンバー入り条件。


闇の神殿に10回以上通っている。

セシルの友好度・好感度のどちらかが20以上。

寄進コマンドで500ギラー支払う(毎回)


ちなみに、神官らしく好感度は『祝福』と『祈り』を選んでいるだけで上がる仕様。

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