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金と黒の王国2  作者: 朔夜
彼女は手探りで進む
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22/47

第22話 彼女は遭遇する③

 いきなり、冒険者お仕事をやってみると言い出したエドガー様。

 当然、ルーシェリカさんは止めましたよ。

 

 今日の視察予定で、他に回るところもおありになるでしょう?――とか。

 そのもののずばり、わざわざエドガー様がなさるような仕事ではありませんから考え直してください――とか。

 貴方様は冒険者ギルドに所属登録しておられないので、依頼を受けることは不可能です――とか。


 ルーシェリカさんの奮闘を、隠れている護衛集団も密かに応援(何処からともなく『そうそう』『その通りです』とか、合いの手が入ってきました)してくれましたが、エドガー様の意思は無駄に固く、考えをひるがえそうとはなさいませんでした。


 いわく、今日予定していた孤児院訪問と神殿の寄進は当然こなしてから行く。

 いわく、何事も経験だ。似たようなこと(騎士団による定期モンスター討伐)は毎年参加しているから問題ない。

 いわく、私が登録していなくても、お前(ルーシェリカさん)が登録しているから手伝いとしての形でなら依頼を遂行出来るだろう?


「…………私の任務に同行なさると?」


 ちなみに。

 私達は、いまだ冒険者ギルド内に居ます。

 会話は周囲に人が居ないことを確認してから小声で行われているので、一見揉め事になっているように見えないでしょう。

 そのため、救いになってくれる可能性の高い第三者的立場の介入者が居ません。


「そう言っている。お前の今日の予定がどうなっていたか知らないが、悪い話ではないだろう?」


 確かに、戦力的な面だけ見ると悪い話ではないのです。

 現段階では推測でしかありませんけど、エドガー様かなりレベル高いハズですし。

 ただ、厄介なことにエドガー様の身分が高過ぎるのですよ。

 もしもが発生したらヤバ過ぎる。絞首刑は御免です。


「ああ……私が結果として、怪我をした場合のことを考えているか。それなら、一筆書くぞ。お前に責はないと、護衛あいつらに証言させる」


 ルーシェリカさんは、しばらく考え込みました。

 エドガー様にここまで言わせておいて断った場合、どうなるのかを考えているのでしょう。

 やや経って、エドガー様に顔を向けます。


「……現在、エド様の警護についておられる方と話をしたいのですが」

「許す」

「では少々お待ち下さい」


 ルーシェリカさんはそう断って、エドガー様から数メートル離れると、何処に居るとも分からない護衛に向けて小声で話しかけました。


「あの方は御意志は堅いようです。この件について、そちらの御意見は?」

「……我が君とて、自分が無理を言っていると自覚なされている。きっぱり断っても、そちらが我が君の御不興を買うことにはならない」


 何処からか、くぐもった声が返ってきました。

 そういえばエドガー様、命令だと一度も明言してきませんね。

 今日は冒険者の仕事をしてみる――と、断定口調で言っているだけで。あくまで意見という形です。


「城下視察は、我が君にとって半分休暇のようなものですし……今回のように丸1日時間が取れることは非常に稀なのです。それを考えると、御望みを叶えて差し上げても良いような」


 先程と違った声が、そう指摘してきます。 

 ルーシェリカさんは肩を落とし、溜め息をつきました。


「そちらとしては、私が断っても引き受けても構わないという方針なのですね。仮に引き受けた場合、戦闘での支援はしていただけるのですか?」

「恥ずかしながら、我々よりも我が君の方がお強い。支援する前にカタをつけておしまいになられるだろうが……集団に囲まれた場合に限り、確実に支援いたそう」

「…………分かりました」


 ルーシェリカさんは大きく頷くと、掲示板の内容に目をやっているエドガー様の元に戻りました。

 動けば分かるよう、視界内に入れていたのでしょう。

 エドガー様の視線が、真っ直ぐルーシェリカさんに向けられます。


「お待たせして申し訳ございません。エド様。では、結論を申し上げます」


  今日はエドガーと一緒に行動する

  丁重にお断りする


 えええぇ~!?

 ここにきて選択ですか!

 強制的に状況が進むんだろうと他人事で眺めていたので、びっくりしましたよ。

 ホント、どうしよう。


 一応、どっち選んでもルーシェリカさん的には問題ない状況です。


 引き受けた場合。

 利益メリットは、エドガー様のステータスが見れる可能性が高いこと、現在引き受けている依頼を決行出来ること、エドガー様からの好感度が上がりそうなこと。

 不利益デメリットは、今日1日の予定が自分で決めれないことです。

 断った場合。

 利益メリットは今日1日の自由。

 不利益デメリットは、エドガー様をがっかりさせるくらいで、本人も無理を言っていると分かっていることもあり、今後の影響は出ないっぽいことですね。


 むむむ。

 引き受けた場合の方が利益メリット多いです。

 同行か、PTインなのか選んでみないと分からないですけど、今日を討伐クエストに費やせるのは大きいですし。


 よし。決めました。

 一緒に行動しましょう。


「――エド様。その他の視察を済ませた後でということなら、私に同行して討伐クエストの遂行をなさっても構いません」

「そうか。感謝する。無理を言ってすまぬな」


 エドガー様は半ば断られると覚悟していたらしく、驚いたように少し目を見張った後、嬉しそうにふんわり微笑まれました。


 ……うわぁ。

 作った愛想笑いでない分、煌めきが段違いですよ。

 正直、眩しいです。浄化される……!


 ピローン!

 効果音と共に、天の声ナレーションが響きました。


『エドガーが一時的にパーティメンバーに入ります。

 エドガーに5体以上のモンスターが向かった場合、エドガー護衛集団による支援攻撃が強制的に発生します』


 よっしゃぁ!

 PTインです。これならエドガー様のステータスが見れますね。


 その後。

 ルーシェリカさんは、すっかりご機嫌になったエドガー様と共に、冒険者ギルドから脱出。

 残りの視察先――孤児院と六大神の神殿全てに、臨時秘書役で同行しました。

 ちなみに、いつもは護衛の中から、比較的外見が真面目そうな人間を秘書役に選んでやらさせているそうです。


 ちょこちょこ出向いた先の責任者に引き止められて、短時間の会談という形に発展したので、全部終わった時にはお昼を回ってましたね。


 昼食は勿論、エドガー様が奢ってくださいましたよ。 

 お高そうな店でしたが、エドガー様の顔パス。

 料理は実に美味しゅうございました。


 デザートのケーキが特に絶品。

 日本人わたしの味覚にも合う、外国産のお土産の菓子にありがちな、とにかく糖分をやたらブチ込んで甘ったるくなったというモノではなく、後味もしつこくない甘さ控えめ。

 エドガー様も普通に同じモノを食べていたので、こちらでの男性向けケーキなのかもしれません。

 そのデザートのソースで、この世界にもチョコレートの存在を確認しましたよ。こちらの世界ではコレットと呼ばれています。

 今まで見なかったことを考えると、コーヒー(この世界ではクァク)と同じように高価で、一般人に流通してないのでしょうけど。


「それでは、エド様。今からレイニドール街道でルバウルフ狩りを行いますが、よろしいですね?」


 王都の端。

 門の傍まで来ると、ルーシェリカさんが最後の確認とばかりに隣を歩くエドガー様に言いました。

 エドガー様は頷きます。


「こちらから言い出したことだ。相手が何だろうと、文句などない」


 そして。

 注目のエドガー様のステータスが、空中に浮かび上がりました。


  エドガー・ジェラルディ・レイニドール(22)

  レベル48

  称号 レイニドール王国第1王子

     祝福されし者

  HP 519112/519112

  MP ――

  状態・健康

  属性・光

  所持金 ?????ギラー


  戦闘スキル 長剣S(MAX)

        武神の祝福A

        連続攻撃A

        必殺攻撃A

        狙撃A

        投擲A

        命中C

        カウンターA

        頑強A

        戦女神の祝福S(MAX)

  一般スキル 王侯貴族A

        軍司令官S

        薬学知識B

  残りスキルポイント0P


  装備 ミスリルソード+3

    (攻撃力75%UP)

     ミスリルナイフ+3

    (命中率25%UP、命中時に麻痺・暗闇付加)

     オートクチュール+3

    (防御力25%、魔法防御力50%UP)

     巨大女王蜘蛛の糸で織った帽子+3

    (魔法防御力75%UP)

     なめし革の靴+3

    (素早さ50%UP、疲労軽減)

  所持品 アムリタ5


 れ、レベル48ィ!?

 HP6桁!?

 約50万って……RPGゲームのボスそのもののような数値ですよ! これは!

 衝撃、愕然のレベル差です。


 無理無理無理。

 絶対、レベル上げてもルーシェリカさんだけじゃ、もしVS戦闘になった場合、余裕で負けますよ。

 必殺攻撃スキルなんて、即死効果ありそう。

 範囲攻撃スキルを持ってないのが救いといえば救いですが、遠近対応可能ですし。


 その上、今のエドガー様の状態って、お忍び仕様。

 フル装備じゃありませんから、仮に対戦することになった場合、もっと強力なアイテム装備で攻められるハズです。

 王子様なだけあって、高価な武具も所持しているでしょうし。

 きっとエドガー様よりレベルが高いっぽいアレンさんを頼るしか、勝てない。


 ていうか、『アムリタ』ってどんなアイテムですか?

 確かどっかの神話では、飲んだら不死になる飲み物でしたよね?

 回復アイテムでしょうか?

 気になるので、チェックです。


『アムリタ。

 製作者ジェラール・ステア・ラル。回復魔法薬。形状は丸薬。丸飲みするか、噛み砕いて摂取すると効果が発動する。

 1つ飲めば、HPMP共に5000回復する。ただし使用者の最大HPMPが、どちらも回復量を半分以上下回る場合。状態が『ほろ酔い』か『酩酊』に変化する』


 …………こ、これって。

 あの時、ジェラールに飲まされた『謎の薬改』ですよね?

 更に改造したのか、液体ではなくなったようですけど。

 試験開始から数日しか経ってないのに、もうエドガー様に献上されているって――ジェラールはご主人様側の人間ではないということでしょうか?

 それとも。

 立場的には中立で、ルーシェリカさん(わたし)の仕事を手助けしているから、その代わりにエドガー様の方も何か献上しておかないとマズイってこと?


 非常に気になりましたが、これは後でも考えられます。

 今は、驚愕のエドガー様ステータスを存分に眺めて考えましょう。


 エドガー様の称号でも言っていますが、常時発動っぽい神の祝福が2種類もありますね。

 六大神からの加護じゃないからなのでしょう。

 MPがないので、魔法自体は使えないようですけど。


 嫌な予感がビンビンしますが、今回のようにエドガー様がPTインなんて機会、きっともう無いでしょうし。

 調べられる時、調べる。鉄則です。

 ちゃっちゃとチェック!!


『武神の祝福。生まれ落ちた時、武神ガルダーから授けられた才能である。

 武器スキルの素養を5種類、ランクSまで上げることが可能になる。

 エドガーの場合、適応されているのは短剣・槍・斧・格闘・弓』


『戦女神の祝福。生まれ落ちた時、戦女神アメリアから授けられた才能である。

 戦闘後、自らの取得する経験値が増加する。

 ランクDで50%、ランクCで100%、ランクBで150%、ランクAで200%、ランクSで250%分、増加』


 思わず、私はその場にガックリと膝をつき、項垂れました。

 『武神の祝福』は、まだいいです。

 エドガー様は色んな武器の扱いが得意だってことですから。

 で・も!

 『戦女神の祝福』が妬まし過ぎます!

 ランクUPするのに、どんだけスキルポイントが必要なのか知りませんけど、ものすご~く欲しいスキルですよ。

 経験値UPなボーナススキルなんですもの。


 このスキルがランクS(経験値2・5倍加算)まであるからエドガー様って、22の若さでバリバリの戦闘職である近衛騎士団長よりも強いんでしょうね。

 アレンさんも近い将来追い抜かれること確実。


 生まれが王族でさえなかったら、多分、エドガー様って下級神に成り上がれる可能性が充分にあるヒトだと思います。

 この祝福スキルのおかげで身一つさえあれば、ガンガン武功で成り上がれるますから、自然とレベルも上がりまくるでしょう。


 何とか気を取り直して立ち上がると、私はステータス表示を終了させました。


「……それにしても、レイニドール街道にルバウルフが出没しているのとはな……カットバニィの影響か?」

「ご考察の通りです」


 エドガー様のレベルではオーバーキルだろうと私が思っている間に、2人はさくさく進みます。

 あ。

 ちなみに同行が決まった時から、エドガー様はルーシェリカさんの速度に合わせて隣を歩いてくれていますよ。


 ジェラールに貰った『銀のアンクレット+2』を実は装備していたりしますが、ルーシェリカさんは2つとも右足につけているので、速度上昇効果が発動していません。

 現状では毒無効アイテムと化していますね。


 2人とも会話する必要性を感じていないのか、周囲に注意しながら無言で街道を歩いています。


 共通の話題は存在しているんですよ。

 ご主人様のこととか。

 時事ネタなんかは職務上精通していなくてはなりませんから、幾らでも盛り上がれるハズなんですよね。

 でも無言。

 2人の間に緊張感はまったくないので、あえて、無理を通してまで会話をしないことを選んでいるのでしょう。

 ピリピリしていないので、居心地のいい沈黙空間です。


 そんな状態でしたから、私はとりあえず好きなように思考を巡らせました。


 遮蔽物なんてほとんど見当たらないのに、護衛集団は何処に隠れているんだろう?――とか。

 エドガー様のレベルが高過ぎて、モンスターの方が避けていく可能性もあるから、今日の戦闘ゼロになったりしないかな?――とか。

 エドガー様が光属性だし、もしかするとライバルであるご主人様って闇属性? 主従でお揃い?――とか。


 結果として。

 戦闘ゼロにはならなかったので、一安心です。


 ルーシェリカさんは戦闘が発生するたび、ささっと1歩分前に出て、自分の後ろにエドガー様を庇おうとするのですが。

 エドガー様は、大人しくしてくれた試しがありません。


 庇った瞬間、『ミスリルナイフ+3』が投擲されて、ルバウルフ瞬殺が3回ほど続きましたよ。

 結果、ルーシェリカさんは戦利品回収係。

 先日のジェラール無双と同じパターンです。


「……そろそろ王都へ戻りましょう。到着が遅い時間になってしまいます」

「分かった」


 空を眺めながらルーシェリカさんが声をかけると、エドガー様はあっさり同意しました。

 まだノルマの達成数に至っていませんが、文句1つありません。

 本当に、冒険者的なことがしてみたかっただけのようですね。

 王都の外での散歩気分だったりして。


 そして、レイニドール街道を半分ほど戻った時――ソレは起こりました。

実は加護持ちでない人間は、先天的・後天的に特殊スキルを持ちやすかったりします。

エドガーのスキルはその中でもチートですけど。

『武神の祝福』の方は、スキルUPが魔法と同じ扱い(MPではなくHPが一定数上がる。HPがUPするスキルは他に頑強)

中の人は突っ込みませんでしたが、エドガーの恐ろしいところはさりげにスキルがほとんどランクSまで上がる点だったり。


あと、覚えたスキルが一定以上のランクになると、持っている組み合わせによっては新しくスキル覚えたりもします。

狙撃A+投擲Aで命中Cが出現とか。

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