98.ブラック労働、キター
亜空間倉庫には40フィート・ハイキューブ(長さ約12.2m / 高背)の
冷凍冷蔵コンテナが何台もある。
電源も繋がってないのに冷えているのは不思議だったけど
時間が止まっているから最初に入っていた物が冷たいだけだった。
最初冷蔵コンテナの中にミネラルウオーターを入れて
冷やそうとしたら常温から温度変化しなくて絶句した。
時間の流れが止まっているんだからそりゃそうか。
何故こんな事を言っているかというと冷えた飲み物がビールと
ゲロ甘ジュースしか無いから。
9歳の体に酒は良くないだろうから論外として
ジュース類の趣味が俺と合わない。
かき氷のシロップか、という位甘いのとコーラしかない。
前者のゲロ甘ジュース、特に炭酸なしはマリアさんにも
エルフ達にも好評なのにコーラを出したらマリアさんは
変な草汁に砂糖を入れてもったいないと言い、エルフ達は
蟻んこの体液説と魔木の樹液説を唱えて議論していた。
そんな事はどうでも良い。
必要な物を集め最後に冷たい飲み物を持った俺は
横たわるマリアさんにもう少しだけ待ってね、
と言って亜空間倉庫を出る所だ。
「萌え萌え、キュン♡」
地味にダメージが蓄積されていく。
なお、他の物を冷たくしたい時はクーラーボックスに冷凍食品
と一緒に入れて解凍のついでに冷やすとか、太陽電池を使えた時には
ハンディ冷蔵庫に入れれば良い。
夏の間、マリアさんと俺の密かな楽しみだった。
エルフ三人の部屋はこれも彼らのリクエストで俺の部屋の隣だった。
ベッドが二台設置してある同じ造りの部屋二室をベッドだけ移動させて
三人部屋と一人部屋にしたみたい。
そこまで狭い部屋じゃないので三人部屋でも何とかなりそうだ。
飲み物と着替えを渡すとバッチャとネッチャは
インガ=エッチャにエルフの衣装を着せようとし始めたので
慌てて部屋を出た。
バッチャ、ネッチャ、インガ=エッチャが恥ずかしがってるから
無茶しないように。
俺だって恥ずかしいんだから。
なお、冷たいジュースを飲んだインガ=エッチャの反応は
「凄く美味しい」だった。世界よ俺の味覚がおかしいのか?
薄いカル〇スを飲みたい俺がおかしいのか?
こんな風に部屋でまったりしてるとお役人さんが呼びに来た。
朝早くから夜遅くまで同じ人、ブラックな職場だな。
「エルガーです。夜食を用意しました。
本日は人手が足らず、お部屋まで運ぶ者がおりませんので
申し訳ありませんが先程の部屋まで
お越しいただけませんでしょうか。」
部屋には簡単なテーブルがあったけど大部屋で皆と食べた方がいい。
バッチャ達と一緒に大部屋まで行く事にした。
移動途中で話したんだけど今日は俺たちの為に特別なんだって。
通常はこんなに遅くまで働かないらしい。
お役人さんに感謝しなければいけないな。
「エルガーです。もう飽きたのでこれで最後にします。
この部屋は厨房が近いので便利なんですよ。」
料理を出してくれる人達には疲労の色が見えたけど、
部屋には4人分の食事が用意されていた。
この食事が終わって俺たちが部屋に戻ったらお役人さんも
家に帰れると聞いたので早めに済ませる事にした。
手紙も渡してすぐ使いの人を走らせたとかで影の薄い割に
親切で有能な人らしい。
…自己紹介せず、静かに帰っていった。
部屋でテンプレに色々確認していたらネッチャが呼びに来た。
?声は同じだが滑らかな人語だぞ、髪型も違う。
インガ=エッチャがネッチャのエルフ服を着ている。
廊下に出ると、後ろで見ていたバッチャとネッチャが
「ほら、気が付いた」とかやっている。
精神年齢だけは若い連中だ。
その日は深夜まで通訳をやらされた。
バッチャもネッチャも意思疎通程度の人語は出来るのだけど
細かい所が伝えきれなくて何とももどかしいらしい。
それは分かるけど昨夜は船の中で丸まって眠っただけだぞ。
その上今日は早朝から今まで事件ラッシュだぞ、
子供をこき使いすぎじゃないか?
頭の整理が追いつかず体がだるい。物凄く眠い。
バッチャが俺の様子を見て話を切ってくれたけど、
限界がきてたみたい。
自分の部屋に戻りこの世界に来てからの最高級記録を更新する
厚い羊毛布団と上質な毛布のベッドに飛び込むと同時に
俺の意識はなくなった。




