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91.商機キター

抱き合っておいおい泣いているエルフ4人、特にネッチャは興奮気味。


「許せない、エッチャに意地悪した連中ギタギタにしてやる!」


ネッチャ、刑場でインガを見た時から少しヤバイ。


自分だけ家族と一緒にいたというひけめみたいなのがあるのかもしてない。


…午前中のゴロツキさん、ネッチャはあれでも加減してたんだよ。


インガの傷を見て怒り狂ったネッチャをバッチャが止めなかったら


大変な事になったと思う。




「ネッチャ、人語で話さないと通じないよ。少し落ち着いて。」


俺が話しかけると、ネッチャは気が付いたようにインガを抱きしめ


「エッチャ、見つけるの遅い、ゴメンナサイ」


と泣きながら何度も繰り返している。


気持ちは通じるらしくインガ=エッチャはネッチャと抱き合って泣いている。


一方セレローさんとバッチャは泣きながら今後の事を話している。




「とりあえず、カッチャと会った後は私が引き取る。


 この歳まで人間の中で育って今更魔物狩りで生きていくのは無理だ。」


「この子はモイモイの子だ、やっと見つけた。もう誰にも渡さない。」


「私はリュシアンの侯爵だ。この子に見合う十分な生活をさせてやれる。


 弓も剣も使った事がなく、魔力を練った事もない子供がモイモイで


 何をするというんだ!」


「何もできなくても構わない。モイモイにも料理だけして暮らしている者もいる


 武術は私が教える。」


「バッチャはもう年で無理だろう。今から教えて何年かかるんだ。」


「失礼な事を言うな。まだ200年やそこら生きるわ。


 それだけあれば一通り教えてやれると言っておろうが。」


「今はエルフもいろんな生き方が出来る時代なんだ。


 モイモイで危険な生き方をさせなくても良いじゃないか。」




ああ、こっちはそういう揉め方ね。


二人とも涙を流しながら自分が引き取ると言って譲らない。


エルフ語で泥仕合するからインガ=エッチャが困ってるじゃないか。




「バッチャ、セレロー侯爵様、落ち着いて下さい。


 まずは当人がどう考えているか確認されてはどうでしょうか。」


侯爵様に直接話しても問題、ないよねグタグタだもん。


なんで俺がエルフの仲裁しなきゃいけないんだ。


中身はともかく俺の公式年齢は9歳だぞ。年齢差計算も面倒な位だぞ。




こういう事はフルオロ伯爵の仕事だろ、と思って振り返ると


テーブルの料理を口に放り込みながら”任せる”みたいな目で見てきた。


いい加減にしろ、あなたが仲裁するのが普通でしょ?


初対面の外国の大使に直接話しかけたりしたくないわ。




幸い、二人とも少し落ち着いてくれたようだ。


バッチャが俺を紹介して、セレロー侯爵にちゃんと挨拶した。


ちゃんとって、順番は滅茶苦茶か。




とりあえずインガ=エッチャに話の内容を伝えたけど


当人はどうしていいかわからないみたい。


そりゃそうだ、人間に混じって生活してたのに、


伝説の戦士と外国の貴族の親戚だと説明されただけで


どっちか選べと言われたら俺だって困るだろう。




とりあえず、生みの母には会いたいらしい。


一度モイモイに行き、その後の事を考える。


誰がどう考えてもそうなるであろう結論に決まった後に、


エルフ3人がその後の事で口論を始める。


だから、それ今やっても仕方ないでしょ?


絶対何も決まらないよね?


ところで何故俺が仲裁してるんだ?




「その子供の言う通りだ。今はその位にしておくべきだ。」


料理を堪能したらしい伯爵が話の輪に加わってきた。


遅いんだよ!




「セレロー、時間がない。今度は隣の辺境伯爵館で会合だ。


 状況は察するが参加してくれ。身支度も必要だろう。」


「もうそんな時間か。わかった国家の為に私情は控えよう。」


「今度はリクローおじさんだからな、気が重い。」


「そう言うな、あの人も苦労してるんだ。好きでカネカネ言ってる訳じゃ無い」


「それは分かっている。人間やドワーフの中で調整してるんだからな。


 俺だって少なからずカネカネ言ってる。でもあの人はな…」


「ドゥンケルハイト王国の貴金属鉱山のほとんどは王都北部の山岳地帯


 シャーフラントには貧弱な銀山があるだけ。この差は大きい


 一国の宰相たる人にとって通貨は大事なんだよ」


「その黄金は商売でほとんど吸い上げているがな。


 少しは俺を信用して欲しいものだ」




リクロ―おじさんってケーキ、は関係なさそう。


俺が盗み聞きしてる事に気が付いたらしい二人が俺に話しかけてきた。


「リクロ―おじさんというのは俺たちの遠い親戚でな。


 リヒト帝国の宰相だよ。」


「リヒト帝国ってこの国の東隣の国ですよね。


 確か人間の国、ドワーフの国、エルフの国がいくつも集まったとか」


「小さいのによく知っているな。あの国の皇帝は人間だけど


 実権を握っているのがリクローおじさんなんだ。」


「その方が来られるわけですね。」


「ああ、先程船が見えたと連絡があった。


 辺境伯代理でマリーに行ってもらってる。


 そろそろこちらに来る頃だ。


 ああ、マリーを知らなかったな。


 辺境伯の一人娘だよ。」




相変わらず情報量の多い人だ、ついでに話が飛びすぎ。


二人は俺が聞いてる事に気づいていながら話を続けた。


子供と思われているとたまにこんな事もある。


「リクローおじさんを説得するならやはり金だぞ。


 味方すれば見返りがあると思わせる事が大事だ。」


「調度や料理は十分吟味したつもりなんだが」


「もう少し強い物が欲しいな、バーンと金の皿で料理を出すとか」


「下品だな。だがそうだ、他国の大使や揺らいでいる貴族連中を


 驚かすには有効かもな、今からじゃ間に合わんが。」


「結局、領内で金山が見つかったという話だけで行くのか?


 証拠もない話、台所事情が苦しいと勘繰られるだけだぞ。」


「そうだな。実力ではこちらなんだ、妙な小細工はやめておくか。」




あれ、ひょっとしたら、あれ、物凄く高く売れるんじゃね?


俺の頭の中でソロバンがパチパチと…使った事無いから


スマホでピッピと計算が始まった。


「あの、いい話があるんですけど…」




身支度を急いで欲しいらしいお付きの人にジト目で見られている二人に


俺は話しかけた。

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