90.情報確認キター
少年野球チームから高校野球までやってたので説教される事には慣れている。
説教される側として気が付いた事は説教にも技術があって上手な人は理解しやすく
すぐ終わる。下手な人のは同じこと言っているのに理不尽に聞こえたり長くなる。
その俺がフルオロ伯爵の説教を聞いて感じたのは、言葉は上手くない。
ぶっきらぼうで説明不足、こちらが考えなければいけない事が多い。
ただ質問に嫌な顔をせず答え、理解させようとする意図がわかる。
俺が説教された人のランキングをつけたらかなり上位だと思う。
少なくとも、上級生になって説教する側になった俺よりずっと上手い。
「俺も悪かったな。バルツで庶子としての教育しか受けていないのを忘れていた。
護衛をつけなければいけなかった。」
「監視役だけじゃ足りなかったと?」
「お前がそういう反応をするから子供だという事を忘れてしまうんだ。
勘ぐりすぎだ。モイモイの戦士に護衛は要らないだろ?
人手が足りないから案内役だけで良いかと安易に考えてしまっただけだ。」
「そういう事にしておきます。」
「子供がそんな顔をするな。本当に他意はない、便宜を図れと命じただけだ」
これ以上続けると怒らせそうなので話題を変える事にしよう。
「おっしゃる通り田舎者なので、危険と言われても良くわかりません。
今の情勢を教えていただけませんでしょうか」
「お前本当に9歳か?わかった子供に理解できるかどうかわからんが、
かいつまんで話してやる。」
伯爵はお付きの人がずっと持っている紙とペンを受け取ると俺の横に座った。
「詳しい話は1日で説明しきれない。おおよそを箇条書きにしてやる。
詳しく知りたかったら誰かに聞け。」
・王都周辺の王族・中央貴族と国境付近を守る地方貴族で利害対立がある。
・マンチェス辺境伯家は宰相として両派の調整を行って揉め事を収めていた。
・数年前、マクシミリアン第四王子が宰相になり、対立が表面化していた。
・対立の主な要因は王国の財政悪化。
王族・中央貴族は地方貴族の領地を取り上げ財源にしようとしている。
・地方貴族派はこれに反発、財政悪化はマクシミリアン王子の政策が原因と追及
・国王は国が乱れるのを嫌い、マクシミリアン王子を解任しようとした。
・その発表で王都に貴族が集まったのを狙いマクシミリアン王子が
クーデターを起こした。
・国王と新宰相になるはずのマンチェス辺境伯、マクシミリアンの前の宰相だった
その父の前マンチェス辺境伯は王城炎上に巻き込まれ安否不明。
・次期国王第一王子フェルジナントも安否不明。
まだ幼くて儀式に出ず川遊びをしていた第一王子の息子マティアスは
マンチェスの町に逃れてきた。
・クーデター首謀者を除く大半の貴族は中立。
クーデター騒ぎに王都を脱出した者、残った者、
事情で領地に残っていた者の確認をとっている最中。
・クーデターはかなり雑、決起してから同調者を集めている有様。
対抗して地方貴族派も味方を集めている。
・この状態なので各所で両派が暗闘中、人の出入りの多いマンチェスは特に激しく
不審な殺人事件が発生している。
・フルオロと同行していた、それだけで地方貴族派と目される可能性大。
無能力な子供なら見過ごされるかもしれないが、注意した方が良い。
・モイモイのエルフが地方貴族派というだけで威嚇になる。
悪いと思ったが使わせてもらった。
お前まで巻き込んだ事をお詫びする。
「こんな所か。細かい事情は興味があったら誰かに聞け。
現在の情報は交錯していて俺にも完全にはわからん。
両派閥が自分の勢力を大きくしようと暗闘中だ。」
「とりあえず狙われる可能性については理解しました。
もう殺人があったんですね。」
「この町には人、物、情報が流れ込む。他国との関係もあり止められない。
いろいろ入り込んできている。お前が一人で出ると事件になる可能性がある。」
「わかればで良いんですけど、バルツ男爵家とノールド男爵家は
今どうなってるんですか?」
「お前の実家と関係者だな。王権派についたようだ。バルツ男爵一族、お前除く、
は王都で決起部隊に加わっているようだ。
ノールド男爵は領地に籠ってこちらを牽制、地方貴族派の戦力を分散させる
駒に使われたようだな。」
「駒、ですか。」
「あの位置でこの季節に籠城しても救援は見込めない。
あてにしてたであろうルーシー子爵にはこちらから手を回した。
領民達のほとんどは領主の為に自滅するほど愚かじゃない。」
この季節ジェニまでの北方街道は魔物が出るし、冬になると雪で通れない。
その事を言ってるんだろうな。
西のルーシー子爵は鉱山の秘密を守るとかで、関所を固めているところで
俺も良く知らないけど伯爵についたらしい。
「バルツ領とノールド領だけが孤立しているわけですね。
これからどうするおつもりですか?」
「王都の連中が動く前に排除する。お前には辛い事かもしれないが、な。」
うーん、レオニー位しか心配な人がいないけど、一応確認しておこう。
「ノールド男爵家の人達、どうなるんですか?」
「お前の心配するような事は多分しなくて済む。
ノールドにもバルツにも細工はしてある。」
多分スパイみたいな人が入り込んでるんだな。
よくわからない事がわかりました。
「何を察したのか知らんが顔に出すぎだ。全く可愛げのない。
マティアス王子と大違いだ。」
「話し合いで解決できれば良いなと思っただけです。
突然王子様が出てきましたが何の関係があるのでしょうか?」
「ああ、話が外れてしまったな。マティアス王子は11歳だが
お前と違って子供らしいという事だよ。良くも悪くもだがな。」
俺は中身22+1歳だから子供らしくないのは仕方ないよ。
「とにかく情勢が落ち着くまでここに居ろ。
王権派に捕まれば前線で働かされるか、ジェニ子爵の所か、…。
悪い事は言わない、ここにいろ。」
それは何となくわかっていた。
既定路線どおり伯爵の世話になろう。
マンチェスの町でやりたい事が沢山あるんだけどしばらく我慢だな。
向こうのテーブルでエルフ4人が大泣きしているのが気になるので
伯爵と俺はそっちに行ってみる事にした。




