M82の試射
木から木へ樹上の道を行っていた時の話。
ヤバそうな魔物に何回も襲われたけど、普通は回避して振り切り、先を急いだ。どうしようもない時だけ戦うわけだけど、ここまで一回を除きネッチャ単独で倒していた。バッチャに言わせると修行らしい。
『エルフの弓術を分析したんですけど』
電池の節約でもしてるのか、用事がないと黙っているテンプレが、
小休止の時久しぶりに話しかけてきた。
『10年前のスマホじゃないんですから。私の電池は年単位で持ちます。
有用情報を教えてあげようとしたのに、必要ないんですか?』
『必要です。教えて下さい。テンプレ様』
『ふざけた頼み方ですが、良いでしょう。教えてあげます』
コイツの有用情報って結構な確率で役に立たないんだよな。
『エルフが弓矢に魔力を込め支えている様子を観察しました。
アンタも出来ると思います』
『嘘つけ、バッチャは百年かかると言ってたぞ』
『アンタが出来そうなのは支える事だけです。
魔力を微妙にコントロールして矢を飛ばすのは超絶技巧の域です』
『えーと、弓を引けるけど、命中精度は望めないって事か?』
『弓に関してはそうですね。でも銃も支えられますよ。
アンタ大きい銃は難しいってあきらめてたけど、
魔力で支えて撃てば重量と反動はそちらで支えられます』
『どうするんだ?』
『魔力は距離の3乗に比例して弱まりますから武器を構える必要はあります。
そのまま武器に魔力を集中するイメージを持てば、短時間なら固定できます』
マジか。
反動が大きいというネット情報を覚えていたので
試射もしなかった散弾銃も使えるかもしれない。
珍しい、本当に有益情報だった。
『珍しい、は余計です。素直に感心できないんですか』
『テンプレ様にはいつも感謝しています』
『まあ、アンタの性格は理解してますが』
樹上の道をAR-15を背負って動いていた理由は、
他に使えそうなのがないというシンプルな理由だった。
ボルトアクションライフルを試射した事があるんだけど、
この体では無理がある、ケガしなくて良かったという結果だった。
反動を上手く制御できる撃ち方はあるらしいけど、
知らないし、手は小さいし。
AR-15は実験で撃った魔物の死体に確かに大きな傷を負わせたけど、
魔物の体の大きさからみてしばらく動き回るんじゃないかと思う。
令和で聞いた話だけど、アフリカ象の密猟はAKやARで行われているが、
それは流れ弾も何も無視して数人で無数に弾を撃ち込んでから車で逃走するという。
大けがをした象は数時間か数日で倒れるので象牙だけ回収するとか。
倒れるまでの手負いの象はとっても危ないらしいけど、
そのリスクは考慮していない。
付近に住民がいたら大変だし、動物の苦しみも考えていない。
という事は魔物をAR15で撃っても同じ事になりそうだ。
大型の銃が使えるならそっちもテストしておく方が良いだろう。
その日、野営しようとした時に亜空間倉庫からバレットM82を取り出してみた。
バッチャ、ネッチャには美しくないと不評だったけどね。
魔力で支える動作は思ったよりうまくいき、ボルトを引くのにも魔力が使えた。
バカでかい音がするよ、と言っていた時タイミング良く遠くに魔物が見えた。
熊の体に甲羅みたいな魔物でネッチャが苦戦したヤバい奴だ。
ネッチャとバッチャに警告して耳をふさいでもらい、
ぶっつけ本番だったけど撃ってみる事にした。
耳栓していても聞こえる大音響とともに、50口径の弾丸が飛び出し
魔物の体が二つに千切れた。
振り返るとバッチャとネッチャが、こちらをじっと見ていた。
『対応可能だと言ったでしょ』
テンプレだけが冷静な念話を送ってきていた。




