82.質屋キター
質屋までは歩いてすぐ、というよりすぐそこ。
傭兵ギルドのある場所が金融街みたいになっている。
警備隊を出してるのがギルドだから近い方が合理的なのかもしれない。
あちこちに看板が立っている。
”高価買取、金貨買取 銀貨40.4枚””金貨売却 銀貨41.3枚”
なんか日本でも見た事あるような看板があちこちにある。
この世界に来て小数を初めて見たけど、銀貨0.4枚はどうするんだろう?
そんな表通りから一本入った所にある質屋の前で5人娘が立ち止まった。
ちなみにエルフ二人組と朝からずっとついてくるお役人プラス俺、
野球チームの人数で入れるほど大きな質屋じゃない。
ついでに人がいない。表通りの店は人でいっぱいなのに。
預かり書にサインしたオーリアと俺だけで入る事にした。
「ちょっと、店の前を塞がないでよ。カモ、もといお客が来なくなるじゃない。」
入店と同時にインガやネッチャの半分位の年齢であろう女性が声をかけてきた。
「この道、僕ら以外だれも居ないじゃない。」
「わかってないわね。誰にも見られたくない人だっているのよ」
日本の貴金属売却店と似たビジネスモデルのようだ。
「あの、質草なんだけど」オーリアが俺の後ろから声をかける。
この子達、自分達だけの時は強気なのにこういう場面ではからっきしらしい。
「なんだ、アンタか。今月も用意できたんだ、諦めれば良いのに。」
オーリアが大人しいのを良い事に店の女性の態度が悪い。
今後心の中ではBBAとする。
「品物を確かめたいんだ。ちょっと見せて下さい。」
「あんたに?ダメダメ、大事な質草出せるわけないじゃない」
「外にエルフの子がいるでしょ、あの子の短剣なんです。
物が確認できたら質受けしますから見せて下さい。」
「なに言ってんの、銀貨300枚よあんたに払えるわけないでしょ」
「銀貨はないけど、金貨ならあるよ、ほら。」
俺はエルメスの馬蹄型コインケースを取り出し、一瞬開けて見せた。
「凄い、10枚もある、ちょっと見せて」
ちょっと待てBBA、あんな一瞬で枚数が判ったのか、能力者じゃないだろうな。
それより、とっとと質草だせよ。
「ちゃんと払えるでしょ?だから品物を見せて。詳しい人に見てもらうから」
「えーと、質屋のシステム知ってる?アンタが買うときは別の値段になるの。
エルフの短剣よ、金貨50枚でも安いわ金貨100枚なら売ってあげる。」
「質草という事は所有権はまだオーリアだよね、じゃあ売っちゃダメじゃん。
僕がオーリアにお金を貸してオーリアが質受けするよ。
銀貨300枚分出せば良いんだよね」
「頭の良いガキは嫌いだよ。仕方ない、ちょっと待ってて」
BBAが奥に引っ込んだと思ったらすぐに出てきた。
?エルフの短剣とは違う剣を持ってるぞ。
「これは伝説のアダマンタイトの剣よ。重いけど、
硬くて研がなくても切れ味が落ちないのよ。
鋼の鎧も火花を出しながら切り裂く一品よ。
金貨10枚、こっちの方がお得よ。こっちにしなさい。」
『警告、目の前にあるのは劣化ウランです。短時間の接触は問題ありませんが
粉塵を体内に取り入れる事は危険です。』
テンプレが思いっきり念話してきた。
『本当か?この世界に何故そんな物があるんだ?』
『誰かが異世界から持ち込んだとしか思えません。』
あの人たちが持ち込むとも思えない、他にも変なことしてるのがいるらしい。
「いりません、何か黒くてまがまがしいし、
僕らが欲しいのはそれじゃありません。」
「小声(ちっ、勘のいいガキは嫌いだよ。)
ほんとに切れ味抜群で火花が出る魔剣なのに残念ねぇ。
小声(持ち主がみんな早死にするけど)」
BBA、心の声がダダ洩れだぞ。そんな物人に勧めるな。
というかBBAに教えてやった方が良いかな?
呪いのアイテムとは知ってはいるようだけど。
そんな事を考えている間に奥に引っ込んだBBAが今度こそ
エルフの短剣を持ってきた。
合図をしてバッチャ、ネッチャ、インガの三人に入ってもらった。
この段階で店の中は満杯、背の低い俺はギュギューされている。
鞘と鍔の刻印を確認する、エッチャと両親の名前が入っている。
剣を抜くと、汚い、錆びてはいないけど刃こぼれして渦巻き模様が
はっきりしていない。
「これは酷い、やすりをかけて研ぎなおしだな。柄も巻きなおしだな。」
「バッチャ、本物だよね。」
「それは間違いない。こんなに手入れが悪いのは初めて見たが」
エルフ語の会話はわからない筈だがインガが小さくなっている。
「薪割りしたり、岩に切りつけて遊んだりしたの…。ダメだよね。」
ダメだけど、この二人仕方ないで済ませてくれそうだよ。
テンプレが何も言わないという事は成分的にも問題ないんだろう。
「確認しました、質受けします。こっちの質札はこれです。」
「チェ、もっと儲かると思ったのに。じゃあさっきの金貨十枚ね」
「ちょっと待ってよ。表の店に金貨1枚は銀貨40枚以上で買い取りって
書いてあったよ。銀貨300枚分でしょ」
「なによこの子、事前に確認しとくなんて、とことん悪賢いわね。
ここじゃ両替しないわよ、表通りで換金しても、そんな大金
持ち歩くと危ないよ。悪い事言わないからここで金貨10枚払いなさい。」
いや悪賢いは違うだろ。ついでに表通りからここまで位
この人数がいて、お役人とエルフの戦士までいるのに危険な訳ないだろ。
頭にきた、虎の威パート2を使ってやる。
「じゃあ、この人の所に行ってどうすれば良いか聞いて来る」
「なによ、随分立派な名刺ねっ、ててててててて…」
BBAの手が止まった。
「困った事があったら助けてくれるって、外に役所の人もいるし来てくれるかも」
「さささささ、査察なんてされたら…」
朝のおば…素敵な女性、本当に偉いみたい。
「さささっと書類用意してね。あっお金は金貨7枚で良いよね
今まで利子で儲けたんでしょ。」
「それじゃ、銀貨290枚にしか
ならないじゃない。」
BBA計算早いし相場知ってるんじゃないか。
「役所まで行ってくる」泣きまねしながら言ってやったら
「あーもう、悪魔、悪魔だねあんた。わかったわよ、それで手をうつわ」
プンプン怒りながら書類を書いてくれた。
とりあえず一件落着。
…なんでこんな疲れる事してるんだっけ。




