81.資本主義、キター
刑場のゴロツキ達にはいつの間にか家族らしいのが寄り添っている。
小さな子供が涙ぐんで睨みつけてくる横でお年寄りがペコペコ謝っている。
実際に殴られた4人は不満そうだったけど
付き添いのお役人に横を向いてもらって逃がす事にした。
その後すぐ応援に来た警察組織が刑場に集まっていた野次馬を追い散らした。
暴力はダメだよ、薬草は自分で採るんだよと一応言ったけど
あの人達守ってくれるかな?甘すぎるかもしれない。
刑場の広場には絶対違法建築とわかる建物が並んでいる。
横を向いてくれたお役人によれば勝手に住み着いてしまった
人々らしい。
子供がいっぱいいるし、飢えている人は見ないので
そこそこは暮らせているんだろうけど
スラムって出来てしまうんだな。
城壁が継ぎ足され広げられた様子から某町づくりゲームを思い出す。
そうだよ、現実逃避しないとやってられない。
「お尻が痛い、回復魔法かけて」
「なんであいつら許しちゃったのよ。私の服、ボロボロなんですけど」
「そうよ、返すから許して、じゃ収まる訳ないでしょ」
「ニャーのヒゲ、良い感じだったのに折れたニャ、謝罪と賠償を…」
慣れない通訳をやっているのに関係ない事をどんどん話しかけられるんだ。
「ニャー、ニャー無視するニャ、感じ悪いニャ」
「エアー、ちょっと良い物着て、怖いエルフさんとつるんでるからって
傲慢になっちゃった?いやーね。」
「小っさくて可愛いのにね、態度がこれじゃー。」
何度でも言うぞ、ナニが小さいって言いたいんだナニが、
まだ9歳だぞ仕方ないだろうが。
「ずーーっと4人に話しかけられながら通訳してる僕の身になってよ。
それでなくても揺れるし狭いし相手してられない!」
大声が出てしまった。
警察の馬車は役所の馬車より大き目とはいえ全体の造りが雑、
それに8人も乗ってるから結構狭い。
その中で俺はバッチャ、ネッチャとインガの通訳をずっとしている。
正直結構疲れる。バッチャの人語は聞くだけなら全然問題ないレベルなのに
俺に話を振ってくる。
少しは思いやりってものを持とうよ。
大きな声を出したのが効果あったのか、
オーリャ、ヘレナ、スターニャとダーナは自分達だけで話しだした。
「エアって男の娘のクセに怒りっぽいんだね。」
「小っちゃいからね、仕方ないよ。それよりこれ早く売りにいこうよ。」
「銀貨70枚、楽しみだニャ。肉も魚もいっぱい買えるニャ」
「全部は使えないよ。ギルドに払う手数料が銀貨10枚」
「なんでそんなに高いのよ!
あの受付の女が横領してるんだわ。間違いない。」
「オーリアが質に入れた短剣の金利、今月分が銀貨20枚」
「オーリアのせいね、オーリアの取り分から引くべきだわ」
「みんなで相談して決めたじゃない。他はないの」
「溜まってた部屋代2か月分銀貨15枚」
「あんな狭くて、スターニャなんて棚の上で寝てるのになんで
あんなに高いのよ。暴利よ暴利、ごうつく大家」
「棚の上が落ち着くから好きであそこで寝てるニャ」
「大きい支払いはそれ位かな?パン屋のつけとか細かいのは
いいよね。 えーといくら残るんだろ?」
「途中から指が足らなくなったニャ。計算は人間に任せるニャ」
「待ってね、えーと35枚か、半分になっちゃった。」
「酷すぎる!資本家の暴虐よ、貧困者からの搾取よ。」
折角話しかけてこないようにしたのに、
頭のネジが緩んでるどころか吹き飛んでるような話を大声でされて
通訳に集中できないじゃないか。
「銀貨は25枚しか残らないよ!他には借金ないんだろうね」
しまった、また大きな声を出してしまった。
小っちゃいと言われたせいでは、多分ないと思う。
「何あれ?腹立つ、なにもかも全部小っちゃいヤツ
魅力全然感じない。」
「えーと、計算はエアの言う通り残り25枚よ、一人5枚ずつよ」
「なんでダーナが数に入ってるの?アンタは参加しなかったじゃん」
「こっちに来るためにバイト途中で抜けたんだよ、日当なくなったんだから」
「じゃあ銀貨1枚で良いでしょ?服も破れてないし殴られもしなかったんだもん。」
「そんな事言う?取り返したの私だし、半分欲しい位よ。」
「取り返したのはエルフさん達でしょ。」
横で大きい声で言い争うのはやめて欲しい。
バッチャ、ネッチャ、インガは真面目な話をしているんだ。
インガは魔法は使えず、木登りもした事がない事が判明。
樹上の道なんて行けるはずがない。
エルフ達も重い物を運んだり、急がない時は黒い森の外側を行くそうだけど
今現在マンチェスから森の北側のルートは準戦闘状態。
バッチャとネッチャは強引に行くかとか恐ろしい事を言いだしたけど
インガが怖いからやめて欲しいと頼んでくれたので事なきを得た。
後はカッチャの話、戦闘は苦手で機織りが得意だとか、
弱いクセに人影を見ると森の外まで出たがるとか、
ネッチャがそれを見て武術に励むようになったとかそういう話。
インガはまだ頭が混乱しているみたいだけど、少なくとも
自分の母親には会いたいようだ。
そんな事を言ってる間にギルドに到着。
マンドラゴラはギルド経由で薬屋さんに渡されるそうだ。
賞金は天引きみたい。結構シビアだね。
尚、さっきの勢いはどこへやらで、大人しく押し頂いていた。
一日でこんな大金稼いだの初めて、またやろうとか言っている。
脳みそダチョウか?今度揉めたらどうするんだ。
まあ、平等にとか、インガのお土産代とか言って仲良くやって
思いやりもあるようなので助けてやるか。
「ねえ、短剣っていくらで質に入れたの?」
「えっ、エア払ってくれるんだ。太っ腹―」
「やっぱり、私の体が欲しいんだ。やだ、自分の魅力が怖い」
日本時代の俺でもこんなメスガキ興味ないわ!
「そんな話じゃなくて、いつまでも金利払ってたらもったいないじゃない。
少しずつでも元本減らさないと。金利も少しは減るはずだしさ。」
「何を言ってるか分からないけど、短剣は銀貨300枚で質屋に入れたんだ
お陰で部屋を借りられたんだよ。」
余計な情報をどうも、元本が銀貨300枚で月利20枚払ってる?
単利だとして月に6.67%、年利換算80%じゃないか、どこの闇金だよ。
こんなの抱えてるなんてバカじゃなかろか?
ギルドの受付嬢が呆れるくらいには高金利らしいけど、
双方が納得して結んだ契約は有効だそうだ。
異世界セチガライ。
どうしようか考えたけどモイモイのエルフには世話になったし、
その一族に借りを返しても良い。
モイモイの短剣なら値打ちあるだろうし。
一緒に質屋に行って交渉、場合によっては肩代わりしてやろう。
あぶく銭はある。庶民は全部銀貨で数えるらしいけど、
ギルドの人によると金貨一枚銀貨40枚位との事、
金貨値段上がってね?まあどうでも良いや。
質屋は両替もやってるから金貨払いは問題ないらしい。
家賃は相場がわからないのでこれまたギルドの人に聞いてみた。
月に銀貨8枚は町の中で5人寝られる部屋なら相場との事。
先月銀貨1枚だけの支払いしかできなかったのに
1カ月待ってくれてるという事は良い大家らしい。
よし、質屋だけで行こう、俺は資本主義に慣れてるんだ
この子たちみたいに丸め込まれないぞ。




