60.出発準備キター
エルフ達が商人に売り切れなかった余剰物資がある事を知った俺は
亜空間倉庫を使いマンチェスまで運ぶ事を提案した。
族長は置いといても腐りそうな食品とか油、商人の荷車には
到底乗りそうにない巨大なメガボアの牙を持って行って良いそうだ。
儲けの半分は俺にくれるそうだが良いのかそんなどんぶり勘定で。
ついでにメガボアってどんな大きさなんだ?商人に売った分除いても
トンの単位であるんじゃないか?そんなの銃があっても倒せるのか?
とにかくマリアさんの様子を確認しに行くついでに旅の荷物と
物資を亜空間倉庫に運びこんだ。
マリアさんはずっと動かない。
顔の汚れ、拭いてあげたいんだけど俺と触れた瞬間時間が進む。
何もしてあげられない、見る事だけしかできない。
気分が乗らない「萌え萌えキュン♡」で戻って、用意が出来たら
来るように言われた集会所に来たらバッチャとネッチャがいた。
茨の壁に守られたエルフの里は何も変わってないように見える。
働き者のエルフ達が声を掛け合って荷物を運んだり、
樽を数えて何やら葉っぱに書き込んだりしている。
でも集会所前にいる人間は俺一人になってしまった。
うるさい幼児の声も、あんなに嫌だったバルツ村も、
恋しいような、不思議な感じがする。
「何してるの?もう出発だよ。準備はできたの?」
待っていたバッチャとネッチャが話しかけてきた。
「準備も何も。荷物は亜空間倉庫にしまったし。」
「大魔法使いだねエアは。あんなに沢山入るとは思わなかった。」
「どの位入るのか僕にもわからないけどね。」
「それなら裏で顔を洗ってきな。そんな顔覚えられたくないだろう。」
バッチャが俺の頬を撫でながら言った。
気が付くと頬が濡れている。
泣いてたのか?俺。
エア君の姿をしてるけど中身は成人だぞ。
『全く情けないですね。』
水場に向かうとテンプレが念話してきた。
『うるさい。それより今度はアネゴ言葉に聞こえたぞ。
混乱するからエルフ語の翻訳統一しろ。』
『相手の話し方を上手く伝える便利機能らしいですが、
かえって面倒ですよね。機能を切るようにします。』
『そんなのがあるなら最初から普通に聞こえるようにしろ!』
水場でマリアさんに貰ったハンカチを見て、また涙が出て来たので
テンプレに八つ当たりした後集会所に戻るとバッチャが族長を呼びに行った。
「エアヴァルトよ。友誼を結びし羊飼い達の依頼により
お前をマンテェスまで送り届ける。
長く厳しき道なれど、我が一族の者の案内に従うように。」
うーん。のじゃ言葉の方が可愛いかもしれない。
族長の歳を知ってるけど外見だけはロリだし。
『マニアックですね。アンタの好みはキョヌーだと思っていましたが
そっちも行けるんですね。』
『感想にイチイチ突っ込んでくるな!
可愛いにはいろんな意味があるんだよ。
だいたいあれはロリじゃないだろ。実年齢知ってるのか?』
『・・・胸ないですもんね。』
コイツは俺の価値観をどう思っているんだ?
いや、キョヌーは好きだけどさ。
その後も続いた族長の言葉を聞き流しているといつの間にか集まってきた
エルフ達が俺に抱き着いてきた。
「気を付けてね」
「上手く行くと良いね」
「また来てね」
口々に別れを言いながらキスしまくられる。
夢のハーレム・・・体が子供なのが残念だ。
「エルフ風のスキンシップは人間には激しいかな?
我々にとっては普通の挨拶なんだが。」
もう少し夢が見たかったが。
現実を教えてくれてありがとう、バッチャ。
普通に挨拶で頬にキスするんだって。
まあ仲間と認めないとしないそうだから好意は
持ってもらってるらしいから良いや。
美人のエルフ達全員とキスを交わしたけど、
これファーストキスなんだろうか?
「挨拶は済んだか。それでは行くが良い。」
族長が何やら刻んだ板を取り出して来た。
「マンチェス伯爵の通行証だ。
シャーフラント全土で通じるはずだが
反乱を起こした連中に通じるかどうかは解らんから
注意して使うように」
受け取ったバッチャがベルトに吊った袋に入れる。
「では行ってきます。 エアヴァルト、練習した通り私についてきなさい」
俺が頷くと、バッチャは目の前から消えた。
速すぎるよ、と思いながら俺も集会所前の大木に駆け登ると
バッチャとネッチャが微笑んで待っていてくれた。




