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59.お出迎えキター

「行ってくる。」


手近な木に手をかけたバッチャが重力を無視するように木に登り


木から木へ飛び移って村を出て行く。


サルというかムササビというか、人間技じゃない。


まあ人間じゃなくエルフだけど。




一時間後、俺を含むバルツ村一同はエルフ達先導で


ロバ車を曳いて森の外に出ていた。


幼児達は世話をしてくれたエルフ達との別れを泣いて嫌がっていたのに、


知った顔の羊飼いを見つけ、家に帰ると言われて大喜びしている。


ちなみに、「エア、丸出しでエルフにキスされてた。」と言ってる君、


ちゃんと状況説明してくれないと誤解を招くからやめるように。




そんな話はマリアさんの話題で消し飛んで誰も聞いてなかったから別に良いけど。


「命に別状はないんだな?治って動けるようになるんだな?」


久しぶりに会ったセバスが何度も聞き返してくる。


「方法はあるんだ。ママは僕が絶対治す。」


酸素吸入と輸血が必要と言ってもわからないだろう、亜空間倉庫で時間稼ぎ


している事も含め、魔法で説明した。


詳細は理解できないようだが何とか納得すると目を閉じて何やらお祈りしてくれた。




セバスとマリアさんの付き合いは長い。


10代前半、日本でいえば中学生の小娘が


傭兵隊に回復魔法使いとして入りたいとやって来たそうだ。


いくらなんでも無理だと断ったが、どうしてもと言うし、治癒魔法使いは貴重なので


入れてしまったが、その後傭兵隊はリザートマンとの戦闘で大量の死傷者を出し


マリアさんは傭兵隊を辞めてしまった。




当時引退間近の老傭兵だったセバスにとっては娘か孫みたいな感覚らしい。


戦闘に連れて行った事を後悔していると前に言っていた。


引退して故郷へ帰ったら領主の奥さんになっていて、口のききかたに困ったとも


話をしてくれた。




俺たちがしんみりしている間、エルフ達は何をしていたか?


大きな馬車に積まれた塩や鉄くずやら麦やら


果ては生きた山羊まで品定めしていた。




集まっている人数はバルツ村の市より人数は多いかもしれない。


バッチャとネッチャが交渉役らしく魔石や魔獣の牙と塩樽を


指さして何やら言っている。




「マンチェスに持って行けば沢山の金貨に変わるんだがな。


 エルフ達にはそういう欲はないらしい。」


マリアさんの話の後、無言になり様子を見ていたセバスが呟く。


「あそこで取引している人は大儲けできるという事?」


「運ぶ途中で税を取られるけどな。まあ儲かるから西部高原まで


塩を掘りに行くんだろう。あそこで取引してるのは商人だ。」


水場で少し休むと行ってしまう人と、取引に参加する人がいるのは


そのせいか。


それにしても大勢の羊飼い&羊だ。この季節に西部高原から降りて来るらしい。


セバスにこんな沢山の羊は毛刈りの時以来だと言ったら、


麦畑に入るとトラブルになるからバルツ村の様な畑作地帯には羊はあまり近寄らない


と教えてくれた。


しばらくすると耳をバタバタさせてバッチャがやって来た。




「遅くなった。商人が離してくれなかった。」


「こちらこそ子供達を匿ってくれて有難う。助かった」


「古い付き合い。助ける、当たり前。気にするな」


セバスとバッチャは知り合いらしいがセバスが随分緊張している。


「偉大なる伝説の戦士バッチャよ


 モイモイの戦士に怪我を負わせてしまったようだ。


 よそ者の仕業とはいえ人間側の過ちだ申し訳ない。


 今後、こんな事がないようにするので許して欲しい」


「事情はだいたい聞いた。お前達関係ない。


 今回の事で責めない。」


「ありがとう。せめてものお詫びに塩と鉄の樽を私たちから贈る。」


「お前達、足らない。知っている。今年はメガボア捕れたから油や肉が沢山ある。


 商人の塩や鉄沢山交換できる。だから要らない。」


「本当にそれで良いのか?」


「それでよい。そうだ、脂樽一つあげよう。エアが仲間を助けてくれた礼だ。」


「いや、逆に貰っては話がおかしいだろう。」


「使い切れない程ある。気が向いたら塩か鉄で返せ。」


セバスは感謝して受け取る事にしたようだった。




気が付くとエルフ達は荷車で何度も往復している。


様子を見ていたバッチャが俺にエルフ語で話しかけてきた。


「エア、森に帰るぞ。仲間にお別れを言っておけ。」




その前からバルツ村の顔見知りの人達が俺の周りに集まってはいたけど


お互いお別れを言い出せない感じだったんだけどな。


「さっき会ったばっかりだし、一緒に帰りたいんだけど・・・。」


「事情は聞いている。納得がいくようにすれば良い。


男爵が勝手に決めた奉公の話はワシらは知らない事になっている。


マンチェスに行けば何とかなるかもしれない。」


セバスの言葉に大人達が頷く。


ジェニ子爵の良い噂も悪い噂もシャーフラントにも流れてきている。


ある程度信憑性があるから皆味方してくれるのだろう。


お互い手を握り再会の約束をした。


幼児達は騒ぎ疲れてロバ車の中で寝ていたけど口止めしなくても


大丈夫だろう。




「寂しそうだね。帰りたい?」


離れて行く集団を見ているとバッチャに話しかけられた。


「良い思い出はあまり無いんだけどね。でも帰れない。」


あれだけ脱出を夢みて計画を練っていたのに、いざ離れてみると


寂しいような気がする。


「上手く行けば帰れるんだろ?ここで良いならずっと住んでても良いぞ。」


バッチャが俺の頭を撫でながら言ってくれた。


「上手く行かなかったら本当にお願いするかもしれない。」


エルフ達は掘っ建て小屋みたいなツリーハウス住まいだけど


狭いのを除けば生活環境は村より良いと思う。


「大魔法使い殿ならば歓迎だ。もっともお前の能力は宝の持ち腐れかもしれんが」


「大魔法使いはやめてよ。爆音のする武器は魔法じゃないんだ。」


「聞いたが、他の魔法で十分だろう。お前は大魔法使いと呼ばれるように


なると思う。」


「ならないと思うけどな。それよりバッチャの事を伝説の戦士とか呼んでたけど


そんな称号で呼ばれてるの?」


「人間はそう呼ぶらしい。全く失礼な連中だ、たかだか80年前の事を


伝説だなんて。そんな昔の事じゃないだろう、年寄り扱いして。」


「80年前に何があったの?」


「人とドワーフの連合軍3000人余りが森に攻めて来たんだ。


私の矢に当たって死んだのが500人を超えたらしい。」




北欧どっかの狙撃手か、恐ろしい。


「弓だけじゃないのよ、小集団に分かれた相手には切り込みをかけて


斃した敵はそれ以上だったのよ。


あっという間に18人切り、なんて歌になったのよ。」


いつの間にか横に来ていたネッチャが話に割り込んできた。


「戦いくさとは言え殺しを誇ってはいけない。乱戦だったから


弓と違い正確な数は数えていない。」


うん、ライフルとサブマシンガンのあの人位の事はやったんだろうな。


バッチャの体に傷一つないけど。


話を聞くと怖い。セバスが緊張する訳だ。


「じゃあ行こう。荷物運び手伝ってあげて。」


ネッチャが俺の手を引く、エルフ達は体の割に力持ちで重い樽を荷車に


ひょいひょいと積み込んでいく。


『魔力を補助に使っています。自分の体重位は持ち上げられるみたいです。』


テンプレが念話してくる。


『やり方を教えてもらえば水汲みも楽になるかな。当分しなくて済みそうだけど』


『魔物の気配が全然しなくなりましたね。羊飼いの集団とエルフの護衛を


怖がっているみたいです。』


『まあそうなるわな。』




荷車を押して手伝うとエルフ達にかわるがわる撫でられた。


エルフ達にとって俺は小さくて可愛い、らしい。


日本でこれ位モテたかったな。

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