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141.出撃、キター

埠頭と倉庫街の間の公園中に屋台が沢山出ている。


どう見てもお祭りだ。


「随分とお早いお付きで。お嬢様」


公園の中で待っていた、傭兵ギルドのギルドマスターが声をかけてきた。


「お仕事が早く片付いたの。早い方が良いでしょ」


マリーお嬢様は、返事をすると同時に飛び降りた。


踏み台も使わず馬車から降りるのはフルオロ伯爵の専売特許じゃないようだ。


「ジェフ、今日はここまででいいわ。先に帰って待っていて。」


マリーお嬢様が御者に声をかけた。


御者さん何とも言えない顔で「必ずお戻りください」とか言って


帰って行った。


『天性の人たらしというべき人ですね。使用人の名前を憶えて


 感謝の言葉を伝えたり、一緒に悪魔の子で遊んだり。


 親しみと忠誠心を意識せずに植え付けています』


『悪魔の子って俺の事か?確かにメイドさん達まで楽しそうにしてたが


 そんな用途に使われちゃ堪らないな』


『そんなアンタも嫌いじゃないでしょ』


『もう少し別の遊びを考えて欲しいけどな。』


うーん、嫌いではない。マリーお嬢様は本当に楽しそうに笑うから


釣られて笑ってしまう。俺が甘いのかもしれないけど。


テンプレと念話している間、マリーお嬢様はギルマスから


説明を聞いている。




「数だけならまだ集められますが、ご希望の仕事が出来る者となると


 この辺りが限界です。」


「無理を聞いて下さって本当にありがとう。


 感謝いたします。」


「お嬢様の周りに付く者の希望者も多くて断るのが大変でした」


「普段魔物狩りもしている方々よね?有難いわ」


「誰も見捨てない、というお嬢様のお心と作戦内容が伝わったせいでしょう」


「なら時間がないわね。作戦内容が相手に知られる前にやっつけましょう」


「そのお言葉、覚えておきます。終わったら、


 お嬢様の勇名は国中に広がるでしょう」


「縁談に困るといけないから、勇名なんていらないわ。


 ところで、この大勢の人達は何?情報漏れは困るんだけど」


「断ったのに来てしまった者と、お嬢様を見送りたい者ですよ。


 普段この公園で商売している人達が来たみたいです。」


傍らの人物達を見ながらギルマスが説明する。




「この公園を整備して物を売る事を許したのはお母様なの。


 人が増えた分の仕事を作るんですって。


 詳しい事はわからないけど、この公園で食べた物はみんな


 美味しかったわ。そう、見送りにきてくれたのね。有難う。


 それと出撃を断られた人には残ってもらわないと困るの。


 いつも通り仕事はあるし、町を守る人も必要でしょ」


「はい、そのように言い聞かせます。」


「お願いするわ。ところでいい匂いがしてお腹が減っちゃった。


 エア、ちょっと来て」




唐突に名前を呼ばれた。何事だろう。


「お魚のスープ、食べた事ある?魚の頭とか骨が入ってて美味しいのよ。


 食べる時気をつけないと小骨が刺さるけどね」


「魚のスープは食べた事あるんですけど、海の魚のはないです」


マリアさんの川魚ぶつ切りスープを思い出す。


「あそこにあるから行って来たら。子供には只でくれるのよ」


「少しならお金持ってますから大丈夫です。マリーお嬢様の分も


 買ってくれば良いですか?」


「そうね。私の歳だと本当はダメかも。お金は貸しといてね」


カツアゲ金額増加確定。銅貨数枚だろうけど。




で、買いに行ったんだけど、お金は要らなかった。


そもそも今日は商売でやってない、マリーお嬢様と


領主様の為にやっているんだそうだ。


そのマリーお嬢様の所望だと言ったら作ってた人が泣き出した。


それも驚いたが、あっちこっちから食べ物を渡されるのにも驚いた。


そんなに持てない。スープのカップだけで手が塞がってます!




魚のスープは完全にあら汁だった。


ネギとショウガが入った単なる塩汁。


シンプルな美味しさだ。




「どんな贅沢な食べ物よりもマンチェスの味だと思わない?


 この味は他所では食べられないよ」


マリーお嬢様、自分で作った訳でもないのに俺に自慢する。


確かにほっとする味だ。




「食べたら行くわよ。あの人と一緒に馬に乗って。」


いつの間にか馬を二頭曳いた獣人の女性が来ていた。


「エルザ、この子がエアよあなたが乗せてあげて。


 エア、エルザの馬に乗って。」


エルザという獣人はかなり小柄、40kgないだろう。


俺も荷物合わせて40kgないから、二人合わせて成人男性一人分?


かなり乱暴な考え方だけど。


乗馬経験のない俺が鞍にしがみつくとか、鞍に縛り付けるよりは


ずっとマシな考えだと思う。




騎乗したマリーお嬢様は演説を始めている。


誰も見捨てないとか何とかやって大盛り上がりだ。


これ、一線を越えた。行く所まで行く。

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