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140.港へキター

「あら、エア意外と早かったのね」


「昨日のうちにお別れはしておきましたから。


 マリーお嬢様こそ早かったですね」


「用事が簡単にすんだからね。王孫殿下も王都からついてきた連中も


 王都に帰る事しか興味がないみたい」


それは、さぞかしご立派な”お言葉”をかけてもらったんだろうな。


同席していたらしい護衛騎士の冷たい態度でなんとなくわかる。


「それとお嬢様はつけなくても良いと何度も言ってるでしょ。


 使用人じゃなくお友達なんだからマリーと呼んで」


そう言われても、強烈なオーラがあってお嬢様と呼んでしまうんだよな。


フルオロ伯爵をフルオロと呼び捨てに出来ない以上の威圧感がある。


「努力しますけどいきなり呼び方変えるのは難しいです」


「お友達になって下さらないの?ショックだわ」


「そういう訳ではなくて、お友達になんて光栄なんですけど、なんというか、その」


「エアは本当にいい子ね。わかったわ。ありがとう」




駄弁ってる間にもどんどん準備は進み、馬車の用意ができた頃には


フルオロ伯爵が現れ俺の立ち位置を指しながら言った。


「おはよう。お前は護衛としてマリーの後ろに付いててくれ」


「おはようございます。どうかされましたか」


なんか憔悴しているような気がする。


「王族が亜人の見送りなぞ出来るか、という奴がいてな。


 情勢が全く分かっていない」


「そういえば王孫殿下はお出ましにならないのですね」


「朝早くから王族を使い立てするなとさ。


 自分達の方が上だと言いたいのだろう。


 全く下らん」


「王孫殿下ってそんな方なんですか」


「殿下本人にそこまでの意思はない。


 王都から逃げてきた取り巻き連中がロクでもない。


 向こうの派閥に入れてもらえなくて、こちらへ来た奴らだ。


 程度が低いのも納得だな。」




リヒトの使節団は、こっちが揃うのをどこかで見ていたのだろう。


なん呼吸か位の時間で大きな客間に続く扉が開いて整列した状態で


こちらにやって来た。


「おはようございます。辺境伯爵令嬢、フルオロ伯爵


 大変な時期にもかかわらず過分な御もてなしをしていただき


 感謝しております。


 本来の任務は果たせませんでしたがあなた方の厚意は


 帝国として受けさせていただきます」


「ありがとうございます。遠路ご足労をいただきましたのに


 我が国の事情でそのままお帰りいただく事になってしまい


 お詫びの言葉もありません。」


「どこの国にも事情がありますからな。仕方ない事です。


 それでは我々は帰らせていただきます。


 お名残惜しいですが、風の都合がありまして。」


「それは残念なことですわ。


 せめて港までご一緒させて下さいませ」


「重ね重ねの厚意感謝いたします。


 お言葉にお言葉に甘えさせていただく事にいたします」




貴族って凄い。こんな会話張り付いたような笑顔で全く自然に


するんだもの。いつ練習しているんだ?


リクロー宰相がフルオロ伯爵に小声で


「今回のは貸しだからな」と言っていたのを含め、ほんとそう思う。




『アンタには無理な世界ですね』


『自覚はあるよ。貴族に転生させてやると言われて喜んだのが


 恥ずかしい。』


テンプレと念話しながら馬車に乗ったのだけど、車寄せから門まで


辺境伯館にこんなに人居たんだ、という位人がいる。


よく見るとダチョウ娘達までいて、しかも泣いている。


声を出さないけど皆の目が主賓でなくマリーお嬢様に向いているのが


無礼にならなければ良いけど。




館の外から港までの道の場合は遠慮がなかった。


朝早いのに人々が集まっていて”マリー様”と声がとぶ、


そんな道をしばらく行くと船着き場についた。


リヒトの船は2本マストの速そうな船だった。


川船と違って甲板があり、ずっと大きい。


「見送りはここまでで良い。辺境伯爵令嬢。


 急ぐのだろう?貴女の必要な所に行ってあげなさい」


「それは儀礼に反します。きちんとお見送りしないと」


「形に拘るお方ではないとお見受けしますが」


甲冑の上からマント姿のマリーお嬢様をみながらリクロー宰相が言う。


「私は貴方に賭ける事にする。隣国の混乱はハッキリ言って迷惑だ。


 早急に鎮圧してもらいたい。」


宰相閣下、軽快に船に乗り込んで行く。


用意はできていたらしく、錨を上げ帆の向きを変えると船が動き出した。


「情緒はないが、ドラだテープだは省かせていただく。


 その代り私の部下を2名置いて行くので使ってくれ。


 人間の基準なら弓の名手達だ。役にたつと思う」


岸壁に弓矢を持ったエルフが並んでいる。


これはあれだ、恩を着せつつ情報を確認するスパイを送り込まれたと


いう事だ。


断りたくても船は行った後、強制じゃないか。


「仕方ないわ。お言葉に甘えて行かせてもらいましょう」


「傭兵ギルドの集合場所は港公園だよね。どの位来てるかな」


「警備隊の軽騎兵が幾らか来てくれるはずよ。町の警備があるから


 あまり大勢来られても困るけど」


しばらく行くと港公園が見えてきた。


お祭りをやっているようだ。


「えーと。マリーお嬢様、公園の周りに人が沢山いるけど…」


「傭兵には見えないわね。何かしら」




とにかく人だけはいるようだ。

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