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139.未明にキター

ドアをノックされてもすぐ開けてはいけない。


そう注意されていたのに開けてしまった。


『当然こうなりますよね』


『何が当然なのかわからん。手際良すぎだろ。


 普段から人さらいでもやってるんじゃないか?』


『アンタで遊ぶのが既にルーティーンになってますね。


 流れるような手際です。』


気が付いたらマリーお嬢様控室でメイク&着付けの真っ最中だった。


もう来ないと毎回思うのに、指定席みたいなのが出来ている。




「まだ暗いのに、何の支度ですか?説明して下さい」


「リヒト帝国の宰相を港までお見送りに行くのよ。


 船って、陸風の吹く朝に出発することが多いの。嫌になるわ」


少し離れた所で同じように着付けの最中のマリーお嬢様が答えてくれた。


「質問なんですが、国賓のお見送りにその姿で行くんですか?」


マリーお嬢様、ドレスではなく銀の胸甲をつけ剣を佩いている。


「問題ないわ。これも礼装ですもの。相手の了解も得ているわ」


「出撃するんですね。それでもお見送りされるんですね」


「お客様には礼を尽くさなければならないでしょ。


 侵入者への対処と同程度以上にね」


気が付くとメイドさん達の表情が硬い。


いつもは俺の顔を塗ったくってキャッキャしている


若いメイドさんなんて涙を浮かべている。


「ヒートモスの服を持っていたでしょ?あれを持って来た方が良いと思うわ。


 その服の上から羽織れるでしょ」


いつの間にか乗馬服を着させられている。前に貰ったのより高級な感じだ。


「これ、どうしたんですか」


「皆が作ってくれたのよ。私の護衛ならちゃんとした格好してなきゃ駄目だって」


前にサイズ測ったとはいえ一晩で、何人か徹夜してるだろう。


マリーお嬢様の鎧一式も光輝いていてどれだけ磨いたんだ、という感じ。


「張り切りすぎよね。何も特別な事はないのに。


 いつも通りお仕事をして、いつも通り帰ってくるわ。


 ここは私の家だもの」


「…」


メイドさん達、声が出ない。泣いてはいけないと言われているのだろう。


「お早いお帰りをお待ちしております」


リーダーらしき人が絞り出すように言うと皆が頭を下げた。


「行ってきます。私は大丈夫、この可愛い悪魔がいてくれる。


 留守中はフルオロ伯爵に任せてあるから心配ないわ」


この部屋に居て着付けやメイクをしている人は一緒には行かないようだ。


お付きの人で乗馬服を着ている人が一緒に出撃する人だな。


メイク道具を渡されているけど戦場まで持って行く気か?




「用意があるでしょ?一旦部屋に帰って済ませてきて。


 バッチャにも知らせておいてね。


 私は王孫殿下にご挨拶しなければならないから少し待ってね。


 あの子、朝が弱いのよ」


「王孫殿下をそんな呼び方して良いんですか?」


「あらいやだ。変な呼び方しちゃったかしら。隣国の宰相を


 お見送りする事もなく引きこもっているお方の事」


ええと、絶対マズいだろ。その言い方。


「心配しなくても場所はわきまえるわよ。身分には義務が伴うって


 言ってやりたいだけ」


マリーお嬢様ストレスマックスみたい。


周囲の反応を見てると状況が想像できる。怖いから近寄りたくない。


「王孫殿下の命という事にした方が良いってフルオロおじ様が言うから


 仕方ない。お言葉というのを貰ってくるわ。別にいらないけど」


頼むからそんなヤバそうな話俺にふらないで。


マリーお嬢様、30分位したら馬車の所へ来いと言って解放してくれた。


物の言い方、せっかちさはフルオロ伯爵そっくりだ。





とりあえず部屋に戻り「萌え萌えキュン♡」士気とかやる気を


破壊しにくる動作をやって物を取り出した。


矢や刃物を通さないヒートモスの服とAR-15の弾を少し多めに持った。


拳銃は普段持ち歩くのには良いんだけど当てる自信がない。


時間がないので急ぎ隣の部屋へ。


皆起きていた。昨日話しておいて良かった。時間なさすぎ。


インガ=エッチャがダチョウ娘達を呼びたがったが断った。


あいつらが来たらシリアス展開が無茶苦茶になりそうな気がする。


「毒消しをやるから持っていけ。大概の毒には効果がある。」


「ありがとう。あの魔物の肝だね」


「そうだ,生肝より調薬した方がずっと効果がある」


二人のエルフにギュウギュウされた昨日の続きだ。


キリがないので打ち切りにした。


亜空間倉庫と回復魔法が使える俺は生き残る確率が高い。


テンプレの警戒機能も多少は役にたつだろう。


『なんか言い方が気にいらないんですけど』


『頼りにしてます。テンプレ様』


面倒くさいが役にはたつ。


少し早いかなと思いながら館正面の車寄せの方へ行ったら


ご機嫌の悪いマリーお嬢様が既に来ていた。

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