138.命大事に、キター
作戦室の準備室?でフルオロ伯爵と話していたら歓声が聞こえ、
ドアをノックして伝令が入ってきた。
ノールド男爵が無血で降伏したらしい。
「朗報だ。情報を広めろ」
フルオロ伯爵はそれだけ言うと俺の方を振り返った。
「補完する作戦を考えるからお前は帰っていい」
それは有難いけど、ここは頼んどくべきでしょ。
今恩を売ったばかりだし。
「お願いがあります」
「今忙しいんだ。後にしてくれ」
「ノールド男爵の館に姉のレオニーがいるはずです。
子供が訳もわからずそこにいただけです。助けて下さい」
「一番子供のお前が言うのも変だな。
お前とは腹違い、ノールド男爵の孫でバルツ男爵の娘か。
何も咎めないというのは難しいかな。」
「お願いします。僕と同じ庶子で下働きしてただけです。
悪い計画なんて絶対知りません」
「貴族と言うのは連座で責任を取らされる事があるんだ。
だが、事情はわかった。考えておいてやる」
「お願いします」
こんなやりとりの後、部屋に帰ってバッチャとネッチャ、インガ=エッチャに
今日あった事を報告しに行った。
賞金の少なくとも半分はネッチャに渡すべきなのにカツアゲされてしまった事を
ちゃんと謝っておくべきだろう。
モイモイまで帰れそうだというのも伝えたかった。
「エアの方はそんな事になっていたのか。大変だったな」
「そんな訳だからお金とられちゃったんだ。半分はネッチャの
なのにごめんなさい」
「別にいいよ。お金なんて無くても困らないもん」
「でもモイモイにお土産とかいらない?
ノールド男爵領を通って馬車でしょ?きっとお金要るよ」
バッチャ達はノールドを通れるようになったのを知っていた。
今しがたまでセレロー大使がいて、今からでも行くみたいな話を
していたらしい。
相当なせっかちだ。フルオロ伯爵と気が合うらしいのも納得。
「まだ詳細はわからないんでしょ?」
「セレローも自分で言った後に気がついて
慌てて飛び出して行った。
準備と状況確認に数日はかかるだろう」
俺は残ってるお金を取り出した。
「返してもらったら絶対渡すから。本当にごめん」
「こんなに残っているのか?十分すぎる。金貨は使い勝手が悪いから
お前が持っていろ。銀貨だけもらっておく」
バッチャが俺の差し出したお金から銀貨だけ拾い上げ腰に吊るした袋に入れた。
「そんな。預かった魔獣の脂や牙、魔石のお金も渡してないのに」
「売る暇がないのだから仕方なかろう。 エアは正直だな。
人間やドワーフの商人の中には物だけ持ち逃げするのもいるのに」
「そんなのと一緒にしないで。モイモイの皆に何か買ってあげたかったのに」
「気持ちは嬉しいが、別に要らんぞ。マンチェスの食事は美味しいが
モイモイの食事も良かっただろ? 必要な物はそろっている」
バッチャはそう言うと思ってたけど、いつまでもそれでいいのかな。
「それに今回はセレローが一緒だ。
馬車の手配他全てやってくれるそうだから心配はいらん」
「それでも。インガ=エッチャは二人みたいに飛んでる鳥を射落としたり
魔物を狩ったり出来ないんだからお金いるよ」
「それでは金貨を一枚、インガ=エッチャに渡しておけ。
それで足りるだろう。本当はエアに一緒に来てほしいんだが」
「ごめん。事情があってここに残りたいんだ」
マリアさんを治療するまでここを離れたくない。
戦場に引っ張り出されたけど数日で決着が着くと言うから承諾した。
モイモイまで往復なんてしてられない。
テンプレが大丈夫だというから承諾したんだ。ダメだったら
獣人の毛皮で擦って静電気まみれにしてやる。
『一ヶ月位かかると言ってましたから、数日は余裕があるでしょう。
それと私は帯電しませんよ』
『だったら他の手を考える。すれ違いなんて絶対に許されない』
『地味ーな嫌がらせ考えそうですね。ご主人は星まで探しに
帰りましたから、ここ数日で帰って来る事は絶対にありません』
『その闇医者、相手してくれるんだろうな』
『同じ週刊・・・の仲ですから大丈夫ですよ』
『アブねぇよ。そんな昔から知り合いなんだ。両方まだ
残ってるのすごいな』
『アンタも相当危ないです』
テンプレと念話しているのを沈黙と考えたらしい
バッチャが心配そうな顔で話しかけてきた。
「お前の魔法は知っているから心配はしていないが、
危ないと思ったらすぐ逃げるんだぞ。
付いて行ってやりたいが、私が戦場に出ると黒い森の
エルフ全体が巻き込まれてしまう。勝手はできん」
「心配してくれてありがとう。危ないと思ったら隠れるから
大丈夫だよ」
「それが良い。無理はするなよ。周囲をよく見るんだぞ」
バッチャから見ると俺は頼りないんだろうな。
物凄く心配されている。
「もっと話していたいが、今日は早めに休め。
出る前に必ず来るんだぞ」
俺はバッチャとネッチャに抱きしめられた。
エルフ式の激しいスキンシップでインガ=エッチャが少し驚いているが
二人は俺を抱きしめ続けた。




