136.護衛依頼キター
作戦室らしき大きな黒板のある部屋は静まり返った。
誰もがマリーとフルオロ伯爵を見ていた。
そのフルオロ伯爵の顔色は赤くなり、青くなりしたが
やがて落ち着いたようだった。
「マリー、君までそんな風に言わないでくれ。
ブロミアンを止められなかった時と同じではないか。
これ以上私を後悔させないでくれ」
「フルオロおじ様。止められなかったのは私も同じですわ。
お父様お母様に命に替えても争いを止め、
王国の国民、辺境伯領民を守ると言われてしまっては
どうする事も出来ませんでした。」
「そこまでわかっているなら…」
「今度は私が領民を守りますわ。残念ながら争いは始まってしまいました。
優しく気高いお父様お母様の説得も聞かなかったような乱暴者に
領内を踏み荒らされる事は許されません。
私の作戦は確実に勝ちます。私が危険なのは確かですが、
戦に危険はつきもの、恐れていては何もできません。」
「領主自身を囮に使うなどという作戦は邪道だと思わないか?」
「あら、囮ではありませんわ。多少前の方におりますけど」
マリーお嬢様はフルオロ伯爵も警備隊の隊長達も説得してしまった。
貴族令嬢の迫力胆力ってこんなに凄いんだ。
『あの娘は特殊ですね。 自分の死の可能性まで計算にいれて
成功を確信しています。』
『死ぬのが怖くないって事か?』
『達観というべきかもしれません。年齢的に信じられません』
『中二病で舞い上がっているだけじゃないのか』
『そういう部分もありますが、冷静で論理的な思考が
読み取れます。 作戦も見事です。』
テンプレと念話している間に考えをまとめたらしいフルオロ伯爵は
黒板に近づきマリーの書いた絵に何やら書き込んだ。
「マリー、明日の出撃を認める。
傭兵だけでなく、警備隊の騎兵も連れていけ。
人選や作戦の確認は我々がやるから君は仕事に戻ってくれ。
それと作戦は ”マンチェスの城壁で迎え撃つ”という噂を流す。
話を合わせておいてくれ」
「わかりました。頼りにしていますフルオロ伯爵。」
カーテシーをして出て行くマリーお嬢様に続いて俺も部屋を出ようとしたら
伯爵に腕を掴まれた。
「お前はまだだ少し話があるからこっちに来い」
黒板の横の部屋に連れ込まれた。大学の講義準備室みたいな小部屋だ。
「マリーと一緒に傭兵ギルドに行ったそうだな」
「行きました」
「マリーに金を渡したのはお前か?」
「渡したというか、貸せと言われて強引に取られたというか」
「両替商に絶対金を貸すなと圧力をかけておいたのが無駄になった。
全く余計な事をする」
「だから取られたんですってば」
「余計な事ついでで暫くマリーの護衛をしてもらいたい」
「ついでが物凄ーく遠くに飛んでませんか」
「2千に満たない兵で5千を振り回そうという作戦だ。
無理過ぎる。そばに着いて守ってやって欲しい」
「話聞いてます?」
「お前はマリーに気に入られているし、他に警戒されにくい
町の外にいる間だけでも護衛を頼む。」
フルオロ伯爵に頼み込まれて断れる立場じゃないんだよな。




