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128.同盟 キター

リヒト帝国の宰相はほんの少しだけ驚いた顔を見せたと思う。


でも、すぐに無機質な笑顔に戻ってマリーお嬢様に質問してきた。


「しかし大丈夫なのですか。マンチェスにそれ程多くの()()()


いるように思えませんが」


「何も心配しておりませんわ。マンチェス、シャーフラントは我が家が、父と母が


 愛し慈しみ、私わたくしに託した土地。


 その力がどれ程の物か、良く存じておりますわ。」




 質問の答えになっていない気がする。戦力あるのか?




「実に興味深い。美しき辺境伯令嬢よ。何かあったら是非リヒトへ


 おいでなさい。帝国は全力で歓迎いたします」


「重ねてのお誘い感謝いたします。でも先程も申しました通り


 当分は多忙ですの。」


「状況を考えず、失礼いたしました。13歳という年齢でこれ程の美しさと


 聡明さを持つ辺境伯令嬢を帝国の者にも紹介したいと思いましてな。」


「まあ、お上手な事。でも私、あと7日で14歳になるんですのよ。


 お国の方々に年齢を伝える時は思い出して下さい」


「それは残念です。当日に直接お祝いの言葉をお伝えしたかった。


 しかし、わかりました。帝国に帰りましてからお祝いを考えさせて


 いただきます」


「まあ、有難うございます。催促したみたいで恥ずかしいわ」


「いいえ。こちらから言い出した事なので。


 辺境伯令嬢はお祝いに相応しい方だと確信できました」


「買い被りだった、と言われぬよう努めますわ」




帝国宰相閣下とマリーお嬢様の会話の間も、リヒト帝国の人が


俺とネッチャに声をかけたり握手を求めてきたりしたけど


横の話を聞いてたので全然頭に入らなかった。


思い切り貴族会話してるけど


敵が来るけど大丈夫か?亡命するなら引き受けてやるぞって事だろ?


『その通りです。そして同盟の検討を約束してくれたようです』


『テンプレ、貴族の会話って面倒過ぎる。これからは三行にまとめてくれ』


『横着言わない。この世界の文化なんですから』


『腹芸とか苦手なんだ。でもマリーお嬢様の落ち着きの理由は何だ?


 お前の分析でも戦力的には不利なんだろ?』


『戦力というより人数ですかね。マリーお嬢様は


 その状態でも勝てると確信してるみたいです』


『大丈夫なのかよ、そんなんで。中二病の妄想で戦われたらたまらないぞ』


『中二病のワガママ娘なのは間違いないですが知能は高いようですよ。』


気が付くと金貨と賞状を持って部屋の外に出ていた。


ネッチャに分け前どうするか聞いたら


「エアに任せる。預かっておいて」と言われた。


そう来ると思ったよ。




*************************


一行が出て行くのを見送ったリヒト帝国宰相リクロ―は


少し不機嫌だった。


長い間追っていた凶悪犯がいなくなったのに、何故浮かない顔を


しているのか、副官が心配する程度には不機嫌だった。


「お前、辺境伯令嬢を見てどう思った」


「年齢の割にはしっかりしてるなと。晩餐会の時は人形のようだったのに」


「その程度の感想か?他に何か思わなかったのか」


「まだ子供だし絶世の美女ではないけど、美しい令嬢ではありますね。」


「そうか。帝国に帰ったら皇帝陛下と議会に働きかけてマンチェスと


 同盟を結ぶ。お前が奏上書の内容を考えろ。


 それから軍を増強する、そちらの内容も考えておけ」


「マンチェスの財政に対する懸念はもういいんですか?


 金の鍋はたいしたものではありますが価値を確認した方が良くないですか」


「あんな物の価値はどうでもいい。資金なら貸してやってもいい。


先物を買う。勝馬に乗る」




ドケチが金を貸しても良いと言ったので驚いている副官を見て、


リクロ―宰相は本当に不機嫌になった。




金など貯めても意味はない。


マリー辺境伯になるだろうあの娘に貸をつくれば


将来必ず役に立つ。


政治的にも軍事的にも能力は未知数だが、あの胆力と意志力


帝国に比肩できる人物が何人いるだろう。




屋敷の人間を見ただけでわかる。


あの娘が特別なのだ。フルオロは恐れられ敬意を払われているが


あの娘は愛され、心酔されている。


それがどれ程難しく稀な事なのか千五百年生きた自分は知っている。




何も心配していない。


あの娘はそう言い切った。私もそう思う。


町の様子も調べたが誰も逃げていない。




あの娘が領主でフルオロが補佐する。


ドゥンケルハイト王国のマクシミリアンより上、


はるかに信用できる。


この大陸でもっとも老練な政治家はそう決断した。

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