127.表彰キター
エルフの男女比は六対一位、女性が圧倒的に多いらしい。
外見は整っていて年齢不詳だけど若く見える、今まで会った
エルフは皆そうだった。
でも目の前にいるのは髪は白く、顔には深い皺が刻まれていて、
どう見ても若くは見えないエルフ男性だった。
普通に考えればこういう人も居なければおかしいのかもしれない。
朝、フルオロ伯爵からバッチャ、ネッチャと一緒にリヒト帝国宰相の所に
行くよう依頼された。
偉い人に会うのは気が進まないんだけど、そこは居候の身、承知しましたよ。
会う事は確かに承知しましたよ。でも
「良いわよね、肌スベスベで。ニキビってどうして出来るのかしら」
「お嬢様、お化粧ができませんのでお静かに」
「あのー」
「髪飾りは明るい色にしてあげて。黒髪に合うと思うの」
「おーい」
「真直ぐで艶のある髪ね。手入れどうしてるの」
某社のシャンプーとリンス使ってるから、じゃない。
「ここまでやらなきゃダメなんですか」
「当たり前じゃない。相手は隣国の宰相よ。正装しなきゃ」
お嬢様が着替えの為に使うらしいこの部屋に来るのは二度目だが、
二回とも拉致同然に連れて来られて好きなようにいじくられるという
トラウマを植え付けられた。
「正装する程の要件って何かわかります?
それとマリーお嬢様まで来るんですか。」
「表彰したいって正式に申し込みがあったの。
エアはマンチェス住人という事になってるから。
領主代理の私も立ち会うわ。」
他所の国の人を表彰する時は相手の国に通知するのが礼儀らしい。
「表彰されるような覚えはないんですけどね」
そんな事があったので、俺はこれでもかというフリフリのドレス、
バッチャとネッチャはモイモイのエルフの衣装、ヒートモスの服を着ている。
エルフ二人が薄化粧なのに何故か俺だけコッテリ塗られた。
子供で遊ぶのはやめて欲しい。
「ご依頼いただきました二人に来てもらいました。宰相閣下。」
マリーお嬢様が実に優雅な感じで声をかけた。
「ありがとう。マリー・マンチェス辺境伯令嬢。
良ろしければ紹介していただけないだろうか」
「こちらがエア、マンチェスの住人です。その隣がネッチャ、黒い森
モイモイのエルフです。
そして、そちらにおいでなのが高名な戦士バッチャ殿です」
紹介された時に頭を下げた。ネッチャは俺のやったのを真似したようだ。
「それでは、メンドーサ一味討伐の表彰及び賞金の贈呈を行う。
マリー・マンチェス辺境伯令嬢には立ち合いと証明をお願いする」
「謹んで承ります」
細かい説明や表彰は宰相閣下ではなく、部下の人が読み上げて行く。
どうやら刑場横倉庫にいたのは兇状持ちの賞金首だったらしい。
やたら固い言葉でお褒めの言葉をいただき、金貨50枚の賞金をいただいた。
急展開過ぎて事態が呑み込めない。
「偉大なるモイモイの戦士バッチャよ。
良ければこの二人をどうやって鍛えたのか教えていただきたい」
「そこまで固い話し方をせねばならんか?リクロー。
人語では難しいが」
「バッチャ。私も偉くなったのだから、昔みたいに話すのは難しい…
皆、これから少しエルフ語で話す。複雑な話はしないから気にするな」
「賞金の支払い位なら本国の役人にやらせれば良い物を。
何が欲しい?リクロ―。」
「流石はバッチャ。話が早い。モイモイの戦士を何人か雇いたい。
できれば武術や魔法の指導が出来る者が良い。
賃金については出来る限り出す」
「黒い森のエルフ、特にモイモイに金で動く者はおらんぞ。
お前の所、灰色の森のエルフの戦士ではいかんのか?」
「森の魔物が減り、人と交わるようになってから戦士と呼べる者が
いなくなってしまった。
あの犯罪者に数十人のエルフが倒されたのに仇を討とうとせず
私に対処を依頼してきた」
「そこまで堕落しているのか。驚いた」
「だからモイモイの戦士に来て欲しい。ドゥンケルハイト王国が
この状態だ。戦火が飛び火してきた時のため戦力が欲しい」
「放っておけばフルオロが上手くまとめると思うがな。
行きたがる者がいるかどうかわからんが、お前の話は族長に伝えよう。」
「頼む。良い返事を待っている」
宰相閣下。
人間でもエルフ語わかるのは大勢いるんですよ。
俺もわかりますし、そこで知らんぷりしているお嬢様も。
「マリー・マンチェス辺境伯令嬢済まなかった。昔語りと武術について
話をしていた。皆もすまなかった」
微妙に嘘はついていないような気もするな。
「いえ、短い間でしたから全然かまいませんわ。
宰相閣下、エルフ語にもリヒトなまりはあるのですの?」
無邪気に笑って嫌味を言っているような気がする。
「多少は違いますよ。リヒト風の名前を持つ美しい辺境伯令嬢」
「そうですの。よくわかりませんが興味深いお話ですわね。
名前については母が付けて下さいましたの。
素敵な名前でしょ?とっても気にいっていますのよ」
何か嫌味合戦してないか。
「リヒト帝国を代表して感謝いたします。
よろしければリヒトにおいでになりませんか?」
「お誘いありがとうございます。リヒトは美しい国と聞きますし、
母の生家クリューゲル家には一度行ってみたいのですけど今は無理ですわね」
「物騒な話も聞きますし、御身のご安全のためにもなるでしょう
私は明日帰りますので同行されませんか。
船の貴賓室は空いておりますぞ」
「素敵な宰相閣下から熱烈なお誘い困惑してしまいますわ。
でも私はデビュタントもまだ、殿方のお誘いで船には乗れませんわ。
それに…」
「それに?」
「私の領地領民に手をかけるという事がどういう事か
教えて差し上げないといけない方々が大勢来られるみたいなの。
ご親切なお誘い感謝いたしますが、今回はお断りさせていただきます」
マリーお嬢様の表情は全く変わらず平静そのものだった。




