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125.朝練キター

寝坊してやろうと思っているのに目が覚めてしまうのは習慣なのか


エア君の体のせいなのか。


日本で朝練のある生活をしていたのは関係ないか。




そう、朝練している。


ネッチャと二人で体術の練習。


刑場横の倉庫から生きて帰ってこれたのは


攻撃を避ける基本的な動きができたからだと思う。


という事で昨日の夕飯の時、ネッチャに頼んで朝練してもらう事にした。


『私が助けなきゃ死んでましたよ』


『それもあるな。もう少し落ち着いてたら後ろの一人は


 殺さなくて済んだかもしれないと思って』


『銃を持って緊張状態だったんですから、仕方ないでしょ』


『仕方ないで殺されたら堪らないな』


テンプレと念話しているとネッチャから声が飛んできた。


「エア、集中して。基礎動作は大事なのよ。


 相手の動きを想像して、それに合わせて動くの」


ネッチャが見本を見せてくれる。


「わかった。避けながら踏み込むんだね」


「今の動きはね。避けて距離をとる時はこう」


考える前に体が動くまで基礎動作を反復するそうだ。


チートでいきなり最強とはいかないか。




「襲われた時逃げられるようになりたいんだ。


 それを重点的に教えて」


「離れれば魔法があるものね。じゃあ、


 こう動いてみて」




ちなみに銃の取り扱いで今までの教訓は次の3つ




教訓1.狭い所で味方や人質が居ると簡単には撃てない。


相手がわざわざ距離をとってから横列で向かってきてくれなかったら


危なかったと思う。


向こうの狙いは逃がさず部屋の隅に追い詰める事だったんだろうけど


反対側の壁際に横一列は撃ちやすかった。




教訓2.距離が近いと刃物の方が強いかもしれない。


刃物の攻撃を避けながらじゃ照準が付けられない。


乱射するとか散弾銃使うとかゲームであったけど


有効なんだろうか。


どっちみち味方がいたら制限される。




教訓3. 焦って狙わず撃っても外れる。


最初の拳銃射撃なんか14発中4、5発しか当たってない。


流れ弾で被害が出なくて良かったというレベル




思った程チートじゃないし、人を撃つと心理的にダメージが大きい。


仕方ないと強引に納得してるけど、交渉が効くなら絶対そっちの方がいいな。




「エア、また集中してない。大丈夫?」


ネッチャは俺が余計な事を考えるとすぐわかるらしい。


「ごめんなさい。変な事考えてた。」


「この辺で切り上げようか。なんか様子が変だし」


「ネッチャもそう思う?なんか屋敷の周りに人が集まってる気がする」


『結構な人数に囲まれています。どんどん増えてます』


テンプレから念話が入る


『囲まれた?包囲されたのか、何の前触れもなく攻撃されるのか』


『殺意とか敵意のような物は感じません。興奮はしているようですが』




「なんか向こうの方で騒いでいるから見に行こうか」


ネッチャが門の方向を指さした時、大歓声が聞こえた。




人々が歓声をあげたのは屋敷の扉から光輝く大きな金の鍋が


運び出されたからだった


「なるほど、あのサイズか」


「4人で重そうに持っているという事は…」


「演技かもしれないぞ」


「それにしても見事なものだ」


朝早くから来て良い場所を取っていたらしい人々が感想を言い合う。


「計量は昼からだったな」


「ああ、朝の鐘で領主様のお屋敷を出るんだとよ。


 その後金融街に運ばれて金の質を調べて、昼の鐘を合図に計量、


 賭けの締め切りも昼の鐘だ」


「金の質じゃなく、重さを当てるんだよな。よーく見なきゃ」


人々が辺境伯爵家の鉄の柵に張り付くように見守る中


金の鍋は馬車に積まれた。


「途中で見た方が近くで見られるんじゃないか?」


「通り道はもう見物人だらけだよ。賭けに参加しなくても


 一目見たいってのが大勢来てただろ」




大騒ぎしている野次馬の皆さんを見て


朝っぱらから何やってんの?というのが素直な感想だった。


ついでにフルオロ伯爵、何考えてるんだろう。




いつの間にかバッチャとインガ=エッチャも来ていた。


「相変わらず人間は金を見ると狂う」


バッチャがポツリと言うと


「別に狂ってはいない。ただ騒ぎたいだけだ」


答えましたよフルオロ伯爵。


さっきから見えてましたけど、ドヤ顔が嫌だから知らんふりしてたのに。




「伯爵おはようございます。何が狙いでこんな騒ぎを」


「おはよう。約束通り計量するだけだぞ。価値がわかったら


 黒い森のエルフのための基金にする」


「それだけにしては随分な事をされますね」


「俺は、鍋を正確に計量するため金融街まで運べと言っただけだぞ。


 計量する方にも都合があるだろうから、大体の大きさや


 時間、通り道は伝えたが」


「剥き出しで運ぶ事も伝えたんですね」


「いちいち梱包するのも面倒だろう?」


「賭け事はどうしてなんですか」


「それは俺が考えた事じゃない。多少のマージンは貰う事になってはいるがな。


 俺が考えたのはお前の事件より派手な事をやって、町の話題を変える事


 鍋の出どころを辺境伯爵家にする事だ」


すごい、徹底的に利用している。


「ご配慮有難うございます」


「見物人が大勢来たら町も儲かるから気にするな。」


「でも良いんですか今にも攻められそうなんでしょ?」


「まだ何日かかかるさ。外国の使節もそう思っているから残ってるだろ」


「そんな物ですか」


「まあ明日以降順次出て行く予定だがな。やっと静かに食事が出来る」


「昨日も大変だったんですか」


「連日なんでマリーもストレスが溜まっているようだ。


 なるべく相手をしてやってくれ。」


屋敷の中の事をフルオロ伯爵が知らないはずはないか。


「お話だけなら」


「伝えておこう。マリーにはもう少しだけ無理をさせる。


 いたわってやってくれ」




もうすぐ14歳って言ってたな。


急に両親がいなくなって、こんな大きな辺境伯爵家の


主人をやらされてるなんて無理どころじゃないと思う。


「伯爵様の方が適任では」


「立場があるからな。俺では話せない事が多かろう」




貴族って大変、ていうか面倒を俺に投げないで。

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