116.お茶会キター
「一応ききますが、お嬢様が何故ここにいらっしゃるのですか?」
「天気も良いからお庭で午後のお茶会を開こうとしたら、
面白そうな事をやっると聞いたからこっちに場所を移してもらったの」
ウルトラハードトレーニングをしていたせいか、
いつのまにかギャラリーがいたんだけど、その中にひと際目立つ人がいた。
人、というか場所が目立つ。
パラソルを立て、椅子とテーブルをセットして優雅にお茶を楽しまれている。
昼食後に庭を見た時には無かったから、誰かが運んだんだろうな。
我がままに付き合わされるのも大変だ。
そこにいきなり引っ張ってこられた俺も大変だ。
「見世物のつもりはないんですけど」
「見世物にしてはつまらないわ。迫力はあるけど。
速すぎて何がどうなっているか見えないもの。
お芝居とは大違いで興味深かったけど」
俺とネッチャがひたすらブッ飛ばされる光景なんか見てて面白いか?
「お芝居と違って面白くしようと思っていませんからね」
やられてる方はひたすら苦しくて痛いんだよ。
「でも結構楽しめたわ。お茶会を開いたけど、お客様がいなくて困ってたの。
フルオロおじ様のお客様なら私のお客様でもあるわ。
ちょうどいいからいらっしゃい」
何がちょうどいいのか、理解に苦しむ。
「お茶会のマナーとか知りません」
「あら、簡単よ。お菓子をつまんで口に入れて、次にお茶を飲むだけよ。」
絶対、そんな事はないだろ。
エルフと仲間の娘たちは俺の危機を見ているのに裏切って
そそくさとどこかに行ってしまった。
結構いい子じゃんと思ったけどやっぱりダチョウ娘だ。恩を返せよ。
「そんなに警戒しなくてもいいわよ。本当にお礼がしたいだけなの」
「お礼?」
「何かをただ見物するって久しぶりだったの。
お芝居なんて見に行くのか、見られに行くのか分からないわ
衣装がどうとか、動作がどうとか、後で皆に感想をいわなければいけないとか。
じっくり見れるわけないじゃない」
なるほどお嬢様も大変そうだ。
「でも良いんですか?お茶会って社交の場でしょ。ちゃんとしたお客様を
招いた方が良くないですか」
「王孫殿下をお招きしたんだけどね。両親が心配だからって断られちゃった。
他のお客様はフルオロおじ様とどす黒い会話で忙しそうだし」
お嬢様、とっても丁寧な口調で悪口言ってますよ。
要するに、予定していたお茶会がキャンセルされて暇だから付き合えと。
「折角のお菓子、一人で食べても寂しいでしょ?少しだけお付き合い下さいな」
今度はおままごとに誘うみたいに誘われた。
たまに忘れるんだけど、今の俺は9歳の男の娘、気楽な話し相手と思われて
いるだけかもしれない。
「そういう事なら。無礼があったら申し訳ありません。何分乱暴なもので」
「その歳でそんな事を気にしないの。乱暴なのはわかってる、あげた服
もうダメにしたでしょ」
「えーと。その件については申し訳ないというか、仕方なかったというか」
「別に気にしてないわよ。あげた物をどうしようと、あなたの勝手だし。」
「そう言ってもらうと助かります。」
「本当に変な子ね。あ、悪口で言ってるわけじゃないのよ。
そんなに小っちゃくて可愛いのに大人みたいな話し方をして」
中身は22歳+αですから仕方ないです。
「お世話になっているので、ちゃんとしてなきゃいけないかなって」
「ちゃんとしてなくて良いから、事件を起こすな、ってフルオロおじ様なら言うな。
でも偉いわね、王孫殿下と大違い」
「?何を言われてるんですか?」
「他所で言っちゃだめよ。折角天気がいいから気晴らしに庭でお茶会しませんか、
って誘ったのに、両親が消息不明なのにそんな気分になるか、ですって。
誘ってる私の両親も消息不明なんですけど。」
「えーと。…」
「そんな顔しなくて良いわ。皆いろいろ言うけど、何日も経っているんですもの。
覚悟はできてるわ。貴族ってそういう物よ」
お嬢様はそう言うとピンと背筋を伸ばしたままお茶を淹れた。
「冷める前に飲んでね。結構いいお茶なの。」
「いただきます。えーと何を話せば良いですか」
「ちゃんとしてるじゃない。私のお客様に相応しいわ。」
いや、気を使うだろ普通。
「私はね、貴族なの。その事に誇りを持っている。
覚悟も無く、思いやりもない人は王族だろうと私の客に相応しくないわ。」
…えーと俺に何をしろと。
「困るわよね。ごめんなさいね。全部忘れて、昨日の大暴れの話聞かせて」
「血なまぐさい話で、僕の中でもまだ整理できてないんですけど」
「そうか、そうだよね。悪かったわ。じゃあ服の話しましょう。
私の子供時代の服、まだまだあるから着てみせて」
それ、絶対長くなるやつ。
「そんな、ご厚意に甘えるにも限度がありますから」
「だから気にしなくて良くってよ。
せっかく可愛いんだからお洒落しなきゃ。」
「でも汚しちゃったし」
「大体の話は聞いたわ。覚悟を決めて実行する人は好きよ」
ここまで、お嬢様少しも怖がっていない。
お茶会の補助をする人も、俺やバッチャを監視している人も
表に出さないようにしているけど明らかに怖がっている。
「変な質問ですけど、お嬢様は僕が怖くないんですか?」
「怖い?私に危害を加える理由はないでしょ。」
「それはそうですけど。…」
「私、人を見る目に自信があるの。昨日からずっとあなたを見てるから
どういう人間か、少なくとも理由もなく暴れる人間ではない位はわかるわ」
「信用していただいてありがとうございます。」
「出来る事なら魔法を教えて下さらない?それとお嬢様はお茶会では変だわ。
マリーと呼んで下さって構わないわ」
「いきなり、そんな訳にはいかないですよ」
紅茶もお菓子も美味しかった。
俺を見捨ててどっかに行ったネッチャとバッチャは損したと思う。




