115.もっと悪い噂キター
回復魔法をかけてもらうと、心地よく傷が癒えていきます。
素晴らしい魔法だと思います。
問題はその前、生傷だらけ、瘤だらけ、なんなら骨の何本か折れてる
そういう状態にした張本人が治療している事。
治療してもらう有難さなんてありません。
治せるからって痛めつけるって性格異常者の所業じゃないですか。
バッチャ、あなたの事ですよ。怖くて言えないけど。
「自分が未熟だとわかったか?お前達だけで危険な場所へ行ってはいけない。」
バッチャはそう言うと白目をむいて泡を吹いているネッチャの治療にかかった。
ネッチャ、本当に大丈夫なんだろうか。
とにかくバッチャ半端ないって。
『訓練された人間の三倍速いですね。エルフの神経伝達速度は驚異的です』
テンプレが念話してきたけど答える余裕はない。
三倍速い?モイモイの象徴らしいヒートモスの服は赤じゃなくて緑だけど。
速度三倍の打撃ってエネルギーは二乗で効いてくるからとんでもなくないか。
そんな事を考えながら庭に座り込んでいると、昨日人質になっていた
四人娘とインガ=エッチャがやってきた。
「大丈夫?何やってるか見えなかったけど凄い音がしてたよ。」
ヘレナが一応気遣ってくれた。見てたなら止めて欲しかったんだけど。
「生きてはいるみたい。荷物引き上げてきたんだね。」
「たいした荷物はなかったからすぐ終わっちゃった。
大家さんにお別れ言ってきたけど、なんか寂しいな」
その気持ちは少しわかる。
俺も学生寮を出る時、掃除や整理をしていて寂しくなった。
新生活って不安だしね。
「それでね。これ」
重みのある巾着を渡された。
「なにこれ?」
「銀貨。31枚、いろいろあって減っちゃった」
「えーと。返してくれるの?」
「皆で話し合ったんだ。ちゃんと返さないとって。
足らない分は分割で返すから。それでいいよね」
案外ちゃんとした子達だ。
「わかった。じゃああと259枚だね。もう借金はないんだよね?」
「家賃溜めてた位で他の借金はたいした事なかったよ。
減っちゃったのは布を買ったから」
「布?」
「インガの服を縫ってあげようと思って。
私たち三人はお針子の見習いだったんだよ。難しいのは無理だけど
ちゃんとした服を贈りたいんだ」
「私は断ったんだけど、どうしてもって。嬉しいんだけど…」
インガが困ったような顔をしている。
「ニャーは不器用だから服は縫えないけど、他の事手伝うニャ」
「そういう訳で命の恩人のエアにお礼も出来ないけど、
今は勘弁してね」
「お礼なんていらないよ。お金は無理しなくていいからね
これ受け取ったら当面のお金に困らない?」
「衣食住は支給してもらえるみたいだから、多分大丈夫だよ。
いざとなったら貸してね」
相変わらず緩いけど、一応ちゃんとしてるんだよなこの子達。
「困った事があったら言ってね。出来る限りの事はするから」
「ありがとう。エアってこんなにいい子なのに…ごめんね」
「どうしたの?急に謝ったりして」
あれ、皆黙っちゃったぞ。
お互いに顔を見合わせている。。
「どうせ伝わるから教えるね。町のみんながエアの事悪魔だって。
悪い魔法で人殺しするって。」
返り血浴びた姿で歩いたのがマズかったな。
「私たちを助けるためにやったんだって説明したよ。
大家さんは分かってくれたけど、町中怖いエルフと子供の噂してる」
「ごめんなさい。馬車で買い物に連れてってやるって言われて
乗っちゃったの。あんな事になるとは思わなかったの」
「エアは可愛い子供だよって皆に言ったんだよ、でもね…」
やっぱり簡単に誘惑に乗ったな。
でも五人に泣かれたら怒れない、悪いのはこの子達じゃない。
何事かとやって来たバッチャとネッチャに事情を説明した。
「そういう話は仕方ない。本当の事を知っている者以外そうなる。
気にしない事だ。それしかない」
その手の被害を一番受けてそうなバッチャが言って俺の頭を撫でた。
とりあえず五人娘には気にしなくて良いと伝えた。
ネッチャも先ほどまで白目をむいてたと思えない笑顔で
気にしなくて良いと言っている。
バッチャの域には到底達せそうにないけど、仕方ないと思うしかない。
ああする以外に、どんな方法があっただろう。
今後、いろいろやり難くなるかな。
殺す行為を思い出すだけで嫌なのにさらに気分が重くなった。




