110.シリアルキラー?キター
亜空間倉庫でマリアさんに今日の事を報告してから銃の手入れをする。
俺の日課だけど第三者が見たら一人で喋った後、黙々と凶器を磨く
危ない奴だろうな。
他人に見せる気はないし、テンプレも何も言わないから別にいいけど。
『確かにやってる事だけ見れば立派なシリアルキラー、マスマーダーですね』
『少しは俺の心情を理解しろ。殺す覚悟はしてたけど、あんなに殺すとか
死体の具体的状況とかまで考えてなかったんだ』
自分のも結構グロかったけど、射殺体ってグロイ。
ドラマと全然違う、知ってますか?頭蓋骨って内側から爆発したみたいに
なるんだよ。撃たれた反対側の体も内臓が噴き出してるんだよ。
ドラマや映画で見るような死体と全然違うんだよ。
ごめんなさい。気分が悪くて誰かに八つ当たりしたい気分なんです。
『心中お察ししますが、やってしまった事は仕方ありません。』
『事実はその通りなんだろうけど、お前には慰めるとか、
励ますとかの機能はないのか?』
『あの状況では他に方法は無かったとだけお伝えしましょう。
相手は最後まで殺意を持って向かってきました。
躊躇してたらあなたが死体になっていました』
『そう思って割り切ろうとはしてるんだよ…』
この世界の人間は銃を知らない。
銃口を向けても、威嚇射撃をしても、目の前で射殺された人間がいても、
それでも怯まず向かってくるなんて。
武器を捨てて降伏してくれたら殺さずに済んだのに。
もし、誰かに銃を渡したらどうなるだろうか。何度も考えた事だ。
この世界の技術で量産化は無理だろう。少なくとも今は。
銃を持った少数者が無双する、はあまり考えられない。
魔法使いと同じ、確かに強いだろうけど、少数で銃を持っても制圧されると思う。
それより原理がわかれば模倣する奴が出て、エスカレートして…
フルオロ伯爵は危ない、俺の固有能力という事にしておけというのが
バッチャの助言だった。
多分、正しいと思う。
『判断できない事は先送り、状況が許すなら悪い事ではありません』
『という事はお前も判断できないんだな。』
当面俺の魔法という事にしておこう。
でも嫌だな、部屋の外で監視している人が絶対にいるのに。
やるしかないか。「萌え萌え、キュン♡」
誰も覗いてませんように。
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下町の酒場で今日の出来事を語り合っているのは
マンチェス警備隊、日本の警察と軍隊を兼ねたような組織の人々だった。
「間違いなくメンドーサ兄弟だった。」
町はずれの倉庫で殺人事件の検分をしたという女が青い顔で酒を
あおっている。
「凄腕の殺し屋だと聞いていたが、不覚をとったという事か」
「子細は不明、迷宮入りだ。これ以上調べるなとさ」
「目撃者の方はどうだったんだ。ちゃんと証言してくれたんだろう?」
「意味のある言葉を聞きとって調書にするのが大変だったがな。
『怖かったけど、ドンとなって血が飛んで』『エアが悪魔みたいに叫んで』
『ニャー、ニャー、ニャー』だぜ。
誘拐されたのも、殺されそうになったのを助けられたのも
間違いないらしいけど、細かい状況はわからん」
「下手人はエルフの戦士と小さい子供だって?どうやったんだろう」
「剣でやったのがエルフで魔法でやったのが子供らしい。
自分達でそう言っているのを門衛の連中が聞いている」
「詳しい事を聞く前にフルオロ伯爵に抱え込まれたからな。
我々じゃ手が出せん。おっしゃる通りの正当防衛で手打ちだろうな」
「おい、飲み過ぎだろう、何杯目だ?」
検死をした女が何杯目かの酒を飲みだしたのを仲間が咎めた。
「今日は飲ませてよ。死体は慣れてるけど今日のは特別だった」
「7人も死んだんだっけ?一度にそんなに見たらな」
「そんなんじゃない。死に方が考えられないのよ」
「死に方?」
「剣と魔法、どっちもあり得ない死に方よ」
「魔法の方は噂になっていたが、剣もなのか」
「二人やってる。それぞれ心臓を一突き、正面から気道ごと頚椎を一突き。
寒気がするほどの腕よ。
狭い部屋で戦って自分は傷一つ無しもあり得ないわ」
「魔法の方は聞いた、飯が食えなくなった奴が出た程の傷らしいな」
「酷い死体は見た事あるけど、あれ程は珍しいからね。
頭蓋骨がドワーフのハンマーで殴られたみたいに、
それとはちょっと違うか、とにかく砕け散ってたの」
「それは酷いな」
「そっちは良かったのよ。問題は鎧の方、小さい穴が開いてるだけだと
思って鎧を脱がしたら、内臓が飛び出してて…」
「おいやめろ、モツ焼きを食ってるんだ。」
「ここまで話したんだから言わせて。絹のキルティングの鎧下、衝撃を吸収する奴に大穴が開いてたの。どうやったらあんな事が出来る訳」
「爆炎の大魔女バッチャの関係者らしいからな、何かあるんだろう」
「伝説だと思ってたけど本当にあるんだな」
「何にしろ、俺達下っ端には関係ない事だ、
かかわるとロクな事にならん予感がする」
「賛成、詳しく調べなくても良くなったんだし、酒飲んで忘れちまおうぜ。」
同じような会話はマンチェス中で交わされていた。
警備隊関係者、運び出される死体を見た者、血まみれのエルフと子供を見た者
何も見ていないが話を聞いただけで面白おかしく話す者。
小さな子供の姿をした恐ろしい魔法使いの噂は町中に知れ渡っていった。




