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105.銃声キター

俺たちを監視してる人の目が集中してくるのがわかる。


インガ=エッチャが声に出して読まなかったのはファインプレーだろう。


「なんで支払い溜めちゃうの?それも立て替えてあげるけどちゃんと払ってね。」


俺は周りに聞こえるように大きな声で言った。


不思議そうな顔をしているネッチャとインガ=エッチャに


「お金貸すから部屋まで来て」と言って手を引いた。




二人とも何か察したみたいでついてきてくれる。


来なくていい監視も付いてくる。


俺の部屋に入った後、当然のように一緒に入ろうとする監視を


お金を渡して細かい注意をするからと言って阻止。


困りますとか言ってるけど、こっちはもっと困るんだ。


俺がブーたれ、ネッチャが威嚇してなんとか部屋には入れずにすんだ。


ドアの所で盗み聞き位はしてるだろうな。



ネッチャは人語を読むことはできるので、いろいろ理解したようだ。


”昨日の子供とお前の二人だけで来い。


他の者が来たらお前の仲間を殺す”


指定場所は昨日の刑場の横の建物。




何だこれ?昨日のゴロツキさんの顔が目に浮かんだけど、


あの連中、組織的な事とは縁遠い感じだったぞ。


いかにもな小悪党で頭悪そうな連中で伯爵邸に密かにメモを届ける


可能性は低いと思う。


だいたい要求は”来い”だけ。


目的は金ではなくインガ=エッチャと俺の身柄だ。


その価値は?


インガ=エッチャの為ならリュシアンの貴族、


セレローさんが金を出しそうだけどその線は薄いだろう。


俺まで来いという段階でターゲットは多分バッチャだ


当人は怖くて手が出せないから弱そうな関係者を人質に取って


要求を通そうという事だろう。




ドアの外で聞いてるであろう監視に聞こえないよう二人に


俺の考えを伝える。


伯爵に伝えたらどうか?


対処はしてくれるだろう。騎士かなにかしらないが救出部隊が向かうだろう


うまくやってくれる可能性は高そうだけど、あの4人を大事に思ってくれるかな。


本当は誰も捕まってなくて、騙しておびき寄せようとしてないか?


メモと一緒に獣人のヒゲを渡された。昨日折れたスターニャのヒゲに似ている。


だいたいあの4人、脅して連れ去らなくてもちょっと上手い事言えば


フラフラついて行きそう。




どうしたもんか。


見捨てたり、危険にさらしたりするのはインガ=ネッチャが絶対に拒否


するだろう。俺も夢見が悪いから嫌だ。




こういう事件で人質の生存率が高いのは


短時間のうちに圧倒的な力で解決する場合だって何かで見たけど…




あるじゃん、圧倒的力。


俺の部屋にはAR-15と30連マガジン3個がある。


合法かどうか知らないがフルオートで撃てるやつだ。


一応拳銃もある。


相手が数人でも負けないだろう。




だいたいインガ=エッチャと俺を指名してくるという事は


簡単に制圧できる弱い奴認定しているんだろう。


油断している可能性が高い。




「僕が一人で行って取り返してくるよ。


 悪い奴はやっつけてやるから心配しないで」


外に聞こえないように小声で言うとネッチャが首を振った。


「エア一人では心配だ。それに相手の要求は二人だ」


「でもインガ=エッチャって…」


悲しそうな顔をしているインガ=エッチャは足手まといにしかならない


人質が増えると厄介、守る存在は少ない方が良い


「分からないか?こうするんだ」


ネッチャは剣を抜くと自分の長い髪を切り始めた。


短めの髪のインガ=エッチャと同じ位になると小声で言った。


「服を着替えて私が行く」




それから用意が始まった。


ドアの外には人が要る窓も見られてるだろうな。


窓を開けておいて一瞬の隙をつくしかないな。


尚暖炉からの脱出は煙突の構造上無理。


煙突からサンタが入れる訳がないというのはこの世界でも


あるあるになりそうだ。




えーと、ネッチャ俺の前で服を脱ぐのいい加減にやめて。


なんか恥ずかしいんだって。


インガ=エッチャも変な顔してるだろ。


絶対からかわれてる。いつか「ゲヒヒッ」とか言って反撃してやる。




俺が後ろを向いている間に二人は服を交換した。


体格は若干違うんだけど、服のサイズ的には何とかなるみたい。


仕上げにネッチャの切り落とした髪の毛を束ねて


カモジみたいにインガ=エッチャの髪に編み込む。


バレないと思う。特にチラッと見た程度の人なら。




さて、窓を開けよう。


天気が良いからそれ程変じゃないだろう。


開けた時に見られた気がするけど飛び出すのはそのタイミングじゃない。


壁の鏡を外して、向こうの部屋から見える位置に動かす。


それらしい動きをする事数分後、俺とネッチャは屋根の上に登った


並みの人間の目には追えない位の速度だった。




煙突の陰に隠れて様子を見たけど、騒ぎは起きていない。


後はインガ=エッチャが髪型を変えながら顔を見せればいい。




「エア、本当に覚えてる?」


「うん、大丈夫」正確にはテンプレが覚えている。


省エネモードとはいえ、位置の確認はやっていたようだ。


直線で4kmあるし、道路を行ったら見つかるって?


問題ない。


魔力を練って、屋根、城壁伝いに行く。


この方法は便利で、ほんの少し浮きながら進むため靴が傷まない。


バルツ村のボロ靴が何とか使えているのはそのおかげだ。




外側の城壁に見張りの人がいるけど、基本外を見ている。


町の中を見ている人がいたら驚くかな?


マンチェスは結構な数のエルフと獣人がいるから、


ここまでではなくとも、屋根上を飛ぶ奴がいるかと思ったけど


ここまで非常識なのは俺たちだけみたいだ。




あっという間に昨日の刑場に到着。


馬車よりずっと早くて楽。


ちなみにネッチャは丸腰、弓も持っていない。


短剣、刃渡り40cm、全長70cmも目立つのでなし。


素手で大丈夫なんだろうか。




俺は完全武装AR-15をスリングで背負い


ズタ袋に予備マガジン、エプロンのポッケにグロック


令和日本なら大騒ぎな装備はこの世界の人には武器に見えないので


堂々と持ち歩けるけど短剣はそうはいかないんだ。




この姿で刑場をうろついてたら、人相の悪い奴が出てきた。


この辺り、本当に治安が悪いらしい。




「エルフとガキ。


 お前らだな。仲間4人の命が惜しかったらついてきな」


面白い。俺がAR-15を向けているのにビビらない。実に度胸がある、じゃなく


知らないという事だろう。




『刃渡り20cm位のナイフを持っています。気を付けて』


テンプレが教えてくれる。


「見張りの連中サボりやがったな。全く役立たずどもめ」


ぶつくさ文句をいう男に連れられ少し行くと周辺のバラックよりは立派な


倉庫風の建物があった。


いかにも(やから)ですというのが3人入口に固まっている。


入口の三人は、俺たちを案内していた男を見ると黙って扉を開けたので、


間違いなく仲間だろう。




建物の中に入ると中扉を開けて入るように言われた。


中は窓がなく、数個のランプがぼんやりと灯っていた。


「インガ!なんで来ちゃったの。」


「だめよ、早く逃げて!」


縛られて大騒ぎしているのは間違いなくあの4人だ。




「こいつらの反応からみて間違いないな」


「武器も持たずに来るなんてバカじゃなかろか」


馬鹿はお前だ。さっきから銃を突きつけられてる。


安全装置は今SEMIの位置に動かした。


今言葉を発した奴含め縛られた4人の後ろに人影が6つ。


扉の外にここまで連れて来た奴1人、その外、屋外に3人


全部で10人+刑場までの道を見張ってた見張りか。


弾、もう少し持ってくればよかったかな。




「僕らが来たんだから、その4人は返して」


「返したらいろいろ面倒なのに返すわけないだろう」


「一緒に人質にする気なの?」


「そんな面倒な事するもんか。お前らバラバラにして海に放り込むのさ。


 死体さえ見つからなければ人質に使えるからな」


抜き身の長剣を持っていた男が縛られた4人を刺そうとした。


部屋の中に銃声が響くのとネッチャが駆けだすのとどっちが早かったか。

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