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104.脅迫状キター

「そうそう、出来てる出来てる。そういう感じよ」


庭で剣を振る俺にネッチャが声をかけてくる。


時間があるならと剣術の基礎を教えてもらう事になったんだ。


ネッチャによるとバッチャに教えられたのは超高度な技術で


できなくて普通、らしい。


「エルフだって最初は地面に足をつけてやるのよ。人間もそうじゃないかな?」


そりゃそうでしょ。ちなみに人間はずっと地面に足をつけてます。


「力を抜いて、自然な感じで立って。そこから前後左右に動いてみて。


 下半身を上手く使って目線が動かないようにするんだよ。


 上手上手、すごいできてる!」


日本で散々やってた野球、内野守備の基礎動作やったら褒められた。


バタバタ動かず、滑らかに、とっさのイレギラーにも対応できるように。


少年野球のコーチに指導されたみたいな内容だ。


「天才じゃん。本当はもう少し基礎やるんだけど剣を持って練習する?」


あのコーチに比べてもネッチャは褒め上手、教え上手だと思う。


わかりやすく手本を見せながら教えてくれる。


エルフの剣術は人間の剣術とはかなり違うかもしれない。


動き回る事を重視して、それに合わせて剣を振る感じだ。


「振る時は軸を作るの。振り回されちゃだめよ、自分が思うように振るの。」


これ、テニスの動きに似てないか?


そう思った頃から形になってきたと思う。


これ楽しい。できない事ができるようになっていく。


辺境伯館でお嬢様の相手をした嫌な疲労が心地よい疲れに変わっていく。


「初めてでこんなに出来てエライ。ちょうどエッチャが帰って来たから


 少し休憩しよう。汗拭いて、水分とらなきゃ。」


ネッチャに休憩しようと言われたのは結構な時間が過ぎた頃だった。




見るとインガ=エッチャがこちらに来る途中だった。


ネッチャ、警戒モードで広い範囲を見てたんだ。


『私も警戒しています。今の所敵意のような物は感じません』


テンプレがアピールしてくるけど、テンプレの警戒能力、微妙なんだ。


見落とし結構あるような気がする。


『詳細分析の方が得意ではあります。』


テンプレは堂々と開き直ったけど、放置しておこう。




インガ=エッチャは小ぎれいな服に着替えてきていた。


他のメンバーを誘ったけど、領主様の館なんか怖いし


買い物に行きたいと拒否されたらしい。




「食べ物だけ毎日持って帰ってきて、って言われた」


まあ、あいつららしいか。


「お金いっぱいあるからって、仕事休んでるの。ちょっと心配」


ちょっとどころじゃなく心配です。そのお金は俺が立て替えたお金です。


「返せなくなっても、エアー、許して♡とか艶っぽく言えば大丈夫だって」


それ気になってたんだ。俺の愛称はエアだ。エアーじゃどっか抜けてて


自転車屋で入れられてるみたいじゃないか。


それより、あれ艶っぽいつもりだったんだ。何かのギャグだと思ってた。




聞くと、短剣を質屋に入れた時も、思ったより10倍も高かったから


就職に有利な綺麗な服買ったり、


話題についていけるようにとお芝居見たりしたらしい。


「それで気が付いたら銀貨が50枚位しか残ってなかったの。


 そんな時に皆病気しちゃって…」


一人当たり銀貨10枚位は余裕で稼いでいたのに不思議よね、って馬鹿か


だいたい質屋で借りる金額を何故最小限にしない?


俺は立て替えてはいけないお金を立て替えたような気がしてきた。


あのメスガキ共が買い物に行ったという事は今頃お金は溶けてるとみた。


元はあぶく銭だけど、本当は俺のお金なのに。




よくアニメでお茶会をやってるような小さいテーブルと椅子の席でそんな話を


していたら、昼食をここで食べるか聞かれた。


部屋で食べても良いそうだけど、天気も良いからここで食べる事にした。


何より監視の人、部屋までついてくるでしょ?同じ監視されるなら


狭い部屋より広い所で離れて見られてた方がマシだもん。




お食事は分厚い羊肉のサンドイッチと酢漬け野菜のサラダ、


お茶、お菓子だった。


辺境伯邸でパワーランチをやってるので、簡単につまめるメニューらしい。


バッチャ可哀想だな。俺たち以上に食べる環境に恵まれていない。




味は美味しいよ。香辛料の効いた肉と焼き立てパンだもん。


お菓子も、果物も美味しいんだけど心の底からは…




良くないな、俺。


ネッチャとインガ=エッチャが片言で話して、


笑い合っているのを見て反省。


モヤモヤしているだけ損だ、食べ物や作ってくれた人に失礼だ。


吹っ切れたら楽になって、お菓子の名前聞いたり、


持って帰るようにできないか聞いたりした。


多分、というか絶対に最低のマナーなんだろうけど、


お貴族様じゃないんだし、無作法と思われても構わないもんね。


ネッチャとインガ=エッチャの通訳に入る。


入りすぎないよう気をつけなきゃ。


二人とも自分の思いとかを話しているけど、俺のつたない頭じゃ


良い言葉を思いつかない、というか表情や態度で言いたい事が通じてる。


単語を並べてるだけの片言で十分だと思う。


通訳は最小限でいい、言葉の重さが違う。




そうこうしている間にテーブルを片付けにきた。


バッチャはまだ出て来ない。パワーランチとやら長いな。


後で伯爵に言う文句がまた増えた、バッチャを便利に使うな。




あれ?インガ=エッチャの様子がおかしいぞ。


「どうかした?」


「これ、今の人が、…」


インガの手には小さなメモが握られていた。


”昨日の子供とお前の二人だけで来い。


他の者が来たらお前の仲間を殺す”




えらく古典的な脅迫状だな。それが俺の第一印象だった。

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