102.戦士の修行キター
「何とか生き残った…」
着せられたかと思うと脱がされ、あーだこーだ好きな事言われ、
顔中塗りたくられながらも耐え抜きましたよ。
若い女性に囲まれて羨ましい?物凄い同調圧力でしたよあの方々。
有無を言わさぬとはこの事、しっかりもてあそばれましたよ。
朝ごはん食べたばかりなのに、もう疲労困憊ですよ。
とりあえず、服は貰えた。
何処でも着ていけるという絹の立派なドレスと
乗馬の時着ていたというパンツルック、
遊び着だという木綿の頑丈そうな服をチョイス。
13歳、もうすぐ14歳らしいけど何食ったらそうなる、
怪しからん体型のお嬢様の古着だけど
一桁年齢の時は常識的なスタイルだったらしく、
今の俺のサイズへの修正は微調整で間に合いそう。
衣装係のお姉さま方がチクチク直してくれている。
でもお嬢様と一緒になって人の頭にリボンつけて遊んでたの、
忘れてないからね。俺を見る目が笑ってるのも腹が立つ。
とりあえず元の服に着替え、顔を洗う。
勿体ない?子供が化粧するのは変な文化圏から来たんだよ。
僕っ娘なのね、次は合う服探してあげるだって?二度と来ないよ。
お嬢様の子供時代フリフリの服なんか着たくない。
フルオロ伯爵に文句を言ってやろうと伯爵邸に戻ったら、
辺境伯館で大勢集めて会議をしているんだって。
ああ面倒だ。もちろん行きません。お嬢様怖いし。
広い庭ではネッチャが一人で短剣の稽古をしていた。
バッチャは会議に行き、インガ=エッチャは
一旦仲間達の所へ帰ったらしい。
エルフの服は目立ちすぎるからと、
わざわざ元のボロボロになった服に着替えてから行ったみたい。
いや、あの泥だらけの服も目立つと思うよ。
軽く洗いはしたらしいけど。
ところでネッチャ、館の人が怯えるから剣術の練習は程々にね。
見えない位の速度で剣を振り回し、人の背丈より高く飛んで
空中で進行方向を変えるって、人間には出来ないんだよ、わかってる?
プロ野球選手のバットスイングみたいな音が連続でするんだけど気のせいだよね。
それだからか? ネッチャと庭のベンチで話し始めたらお茶が出てきた。
言っときますよ。脅してないです、要求してないです。
緊張の面持ちでネッチャから目を逸らしながら持ってくるんだよ。
失礼だろ。何も出さない方がずっと良くないか?
モイモイのエルフ、全然怖くないし、人間に悪く言われてるのを
気にしている位には繊細です。
一緒に旅したけどバッチャもネッチャも悪口言われる位ならスルーする、
常識あるエルフです。
ネッチャは全然気にせず片言でお礼を言っている。
…俺の人間が小さいだけかもしれない。
ひょっとすると俺とネッチャ、個々に付いている監視の人の心遣いかもしれない。
ご不自由がないように付いております? そういう事にしておこう。
フルオロ伯爵には相当やられている。
バッチャはどうしてもと言われ、何も言わない、聞くだけという条件で
会議に参加してらしいけど、他の人はどう見るだろうか。
バッチャは黒い森では長老の一人だし、その勇名は隠れもないけど
族長ではないし、族長ですら黒い森全てのエルフを代表はしていない。
でも知らない人間が見たら、あの、バッチャだろ?
利用する気満々じゃないか。
フルオロ伯爵には世話になっているし、こちらに付くしかないけど
こういうやり方は…なんか嫌だな。
「エア、何か怒ってる?お嬢様に何かされたの?仕返ししてあげようか?」
俺の様子が変だと思ったらしいネッチャが言ってきた。
うん、されたされた。でも仕返しはいいや。そのうち自分でやる。
ネッチャが仕返ししたらお嬢様が大変な事になりそうだ。
「怒ってはいないよ。フルオロ伯爵って勝手だな、と思っただけだよ。」
「それ、私も思った。外に出ないようにしろって。剣術の練習も庭だけで
やれって言うのよ、屋根とか煙突には登るなって。」
うーん。少しだけ伯爵の気持ちがわかるかもしれない。
今ですらこの状態なんだから森で見た木から木へ飛び移りながら
数十匹の魔物の首をポンポン飛ばして行くのを見たら
向こうで見ている騎士さん連中腰を抜かすかもしれない。
「インガ=エッチャの事で世話になっているし、協力してもらわないと困るけど
騙して利用するなって、言ってみるよ。」
「エアは交渉上手で口が上手いからね。私はカッチャを早く安心させてあげたい。
上手くやってくれると助かる。」
前世の日本で交渉上手なんて言われた事ないぞ。頼られても困るんだが。
ついでに周りで聞こえないフリしている監視の人、絶対エルフ語わかってるよな。
まったく。なんか居心地悪いなここ。
バルツの本館みたいだ。




