101.着せ替え人形、キター
バレーボールコートが余裕で入りそう、2面いけるかも?の広さに
立派な長ーいテーブルが置いてあって、その端にポツンと人が座っている。
感覚が庶民の俺には理解しがたい光景だ。
「おはよう。よく来てくれた。食事を用意させてあるので席についてくれ」
フルオロ伯爵が割と礼儀正しく話しかけてきた。
これは、あれだな。
「おはようございます、伯爵閣下。朝食にお招きいただきありがとうございます。
さらに同席の栄誉までいただき感謝いたします。」
正しいかどうか自信ないけど、それなりに返せたかな。
「ありがとうエア。ゆっくり楽しんでくれ。
そうだ、そこの娘はマリーという。
辺境伯令嬢と同じ名前でよく似ているが、多分別人だろう。
好奇心に負けたとかいう本物がこんな所にいるはずがない。」
エアヴァルトではなくエアと呼ばれたという事は設定守れという事ですね。
「お初にお目にかかります。マリーさん。エアと申します。お見知りおきを」
「マリーよ。よろしくね。そちらの方々を早く紹介して下さらないかしら」
朝の様子でだいたいわかってたけどね。
ちゃんと立ち上がって会釈を返してきて偉い。
伯爵が頷いているので構わないだろう。
「こちらから、バッチャ、エッチャ、ネッチャです。」
えーと礼法とか知らないだろうし、ややこしい言い回しの人語、
大丈夫かな?と思ったが、この程度は理解できるようだ。
インガ=エッチャは少しつっかえたけどちゃんと名前を名乗って
紹介を終えた。
「さあ、早くいただこう。作法は考えなくても良い。私たちだけだ。」
お貴族様の私たちだけって慣れない。
給仕する人はいるし、伯爵と辺境伯令嬢の周囲にはお付きの人が大勢いる。
その人たちに見られながら食事、開き直るしかないけどね。
エルフ達は気にせず食べてるけどね。
エルフだけどインガ=エッチャだけは別で給仕している人に
料理を持って帰れないか聞いている。
朝から肉や魚の料理は俺的には重いけど、令和日本でも十分ご馳走だと思う。
バルツには乳牛しかおらず、牛肉は見るだけで食べた事なかったけど
マンチェスに来てから食べ飽きるほどローストビーフが出て来る。
魚は鱈のクリーム煮と、ローストビーフと同じ技法で香草焼きにしたツナ、
話を聞いても間違いなくマグロ、が出てきた。
モイモイの集落で譲ってもらった生わさびと組み合わせれば刺身が食べられる。
近いうちに絶対実現させてやる。
で、食事中、お嬢様はバッチャに興味津々。
じっと見てるだけじゃなく、何が出来るの?とかあの話は本当?とか
流暢なエルフ語で質問している。
バッチャが笑いながら伯爵の方を見て、伯爵がたしなめて、
お嬢様は下を向いてぶんむくれている。
何人〇した?とか初対面で聞いちゃいけないよね。
お嬢様のお付きの人の顔も引きつってたよ。
「おじ様、あの子を私に下さらない?」
静かになったと思ったお嬢様が俺の方を指さしながら突然言い出した。
食後のミルクティ噴いたらどうしてくれるんだ。
「急に何を言うんだ。人間は物じゃないよ」
「そういう意味じゃないわ。バッチャに付けた小間使いでしょ?
私の小間使いに替えて欲しいの。」
「事情があってね。それはできない。我がまま言って困らせないでくれ」
「わがままじゃないわ。歳の近い話し相手が欲しいの。
それに可愛い顔してるから、私の子供時代の服を着せて遊び…
服を譲ってあげたいの」
お嬢様、人を着せ替え人形代わりして遊ぶつもりだな。
日本の妹の人形遊びに際限なく付き合わされた事が何度もあるんだ。
絶対長くなる。お断りします!
「言った通りあの子は訳ありでね。無理を言わないで欲しい」
「ねえ、少しだけでも貸して下さらない。お父様、お母様の消息が
わからなくて寂しくて、少しでも気を紛らわせたいの。」
あれは、日本の妹がやっていた上目づかいウルウル攻撃ではないか
伯爵、負けちゃダメですよ。そこに愛はないんですよ。
「ううむ。…バッチャ少しだけなら構わないか?
マリーは昼前にはリヒトのリクローと面談する。
それまで少しだけエアを貸してくれ」
「構わぬよ。」
おい、バッチャ。
俺が「お断りします」っていう前に答えるなよ。
「嫌ですよ。いろいろやる事もあるし、荷物も整理したいし。」
俺の魂の叫びは無視された。
伯爵の合図で数人の人間が俺の体を捕まえた。
「悪いが少しだけ相手をしてやってくれ。ああ見えてまだ13歳なんだ。
慰めて欲しい事も多いんだ」
伯爵が俺に申し訳なさそうに言うけど、お嬢様見てみろよ。
一瞬で元に戻って自分のお付きの人と楽しそうに喋ってるぞ。
というか、あのナイスバディ13歳なのか。どおりで童顔だと、
というか態度だけじゃなく実際も子供かい!
「嫌です。何かされるの確実です。離して!」
「埋め合わせはするから。少しだけ我慢してくれ。
そんな酷い事はしないと思うから」
思うから、じゃないだろ。責任持て!おい!
面白がって見ているエルフ二人、固まるインガ=エッチャ
気の毒そうに見ている給仕の人達。
誰か助けて、と言ってるのに、隣の辺境伯館の一室に連れ込まれた。
その後は拷問のような時間だった。
幸い下着だけは脱がされなかったが、服をはぎ取られたと思ったら
次から次に服を着せられた。
それだけじゃなく髪飾りやらブローチやら。
お嬢様が指示を出しているんだけど、お付きの人までノリノリになって
ああだこうだ言いながら俺の顔に化粧しまくる。
お嬢様の持ち物らしい豪華な鏡に映った自分の姿を見て感想をとか
ポージングがどうとか表情が硬いとか好きな事言われて、
「まあ、これが私?」ってなるかー!
エア君の体も、中身の俺もしっかり男性じゃ。
というか、化粧厚すぎて白浮きしてるじゃないか。
人の体で遊ぶんじゃない。やるならもう少し美しく。
幸い彼女達には時間制限があった。
公務の時間ですとお使いが来た時には、
もっと着替えさせようとヒートアップしたお姉さま方と
精神がボロボロになった子供がいた。
服を何着か貰ったけど、絹の服だけど、二度とごめんだ。




