週が明けると
佐益さんかも知れない混信メール、怒って帰った比奈森さん。
二つの懸案事項を抱えたまま、僕は週末を過ごして、何だか休んだ気がしない。
とりあえず比奈森さんに、高島の事を謝らないといけないな。クラスで目立つのは避けたいところだけど、謝るなら早いうちがいいはず。
僕は決意を固めて月曜日の登校を迎えた。
徒歩で通える僕は、自分の都合で登校時間を決めている。母は夜勤が多いために、朝は1人で起きて勝手に学校へ行く。
朝食は採らないことが多いが、今日は早めに起きたこともあって、トーストと目玉焼きを食べた。
いつもよりかなり早くに教室へとたどり着き、比奈森さんの登校を待つ。
待ち時間は、ラノベを読んで過ごしつつ、ちらちらと入り口を確認。
まだクラスの4分の1も埋まらないうちに、比奈森さんが登校してきたので、僕は彼女の席へと向かう。
内心ではドキドキだが、彼女はこちらに気づいていないようなので、その間に距離を詰める。
「おはよう、比奈森さん」
「え、あ、西藤くん。おはよう……?」
いきなりクラスで話しかけた事に、戸惑いを隠せない彼女。その間に僕は要件を伝えてしまう。
「金曜日はゴメン。高島も悪い奴じゃないんだ。ちょっとムキになる所がある奴でさ」
「うん、わかってるよ」
「へ?」
少し早口に言い訳じみた事を話す僕に対して、彼女は柔らかな笑みを返してくれていた。
「ふふっ、友達のために謝ってくれるなんて、優しいんだね」
「いや、それは、その」
「実はあの後ね……」
比奈森さんがもう怒っていない理由を説明してくれた。
あの日、怒ったまま学校を出た比奈森さんと意気消沈した高島は、再会したらしい。
その場所は、駅前のレンタルショップ。
高島は見てもないアニメを批判してしまった事を反省して、即座にレンタルショップで借りる決断をしたらしい。
2クール、24話分をまとめて手に取った所を、比奈森さんが目撃したらしい。
そしてケースを手に取り振り返った高島と目が合った。一瞬、ワタワタと戸惑いを見せた高島だったが、我を取り戻して素直に謝ったそうだ。
ちゃんと見てから感想を述べると約束して帰ったらしい。
「それで日曜にはちゃんと感想を言ってくれて。まだ批判的ではあったけど、ちゃんと見ての感想だなって納得はできたの」
「日曜に?」
「うん、メールだけどね。そこから、電脳使徒の話で盛り上がっちゃって。今日も部室にお邪魔するね」
「え、あ、うん……」
予鈴が鳴ったので、僕は自分の席へと戻った。
二人のわだかまりは解けていた。しかも何だかメールのやりとりまでして、意気投合しているようである。
僕は胸を撫で下ろすと共に、不安にも駆られていた。僕はまだメアドの交換もしていないのに。
高島はイケメンだ。
性格に難があるものの、根は良いやつでもある。普段の言動が気にならなければ、モテるはず。
メールという媒介で、いつものウザさが軽減された中でやりとりすれば……。
授業が始まり、僕の焦燥は強くなる。
そこへメールの着信が。
『やっぱりつけられてた……』
佐益さんからのメールか?
僕の左斜め前方にいる佐伯さんを見つめる。こちらからは手元が見えなくて、ノートをとっているのか、スマホを操作してるのかは分からない。
『もしかするとクラスメイトかも』
!?
あの日、すれ違った事で僕に疑いが向いているのか!
『顔は隠してたからよくわからなかったんだけど、制服を着てた』
咄嗟に俯いたから、顔まではバレてない……のか。
『わかんないよ。でもかなり家に近いところまでついてきたかも』
ん?
ついてきてた?
自転車である彼女を追跡するには、同じく自転車が無いと無理だ。
それに僕はすれ違っただけ。
彼女の言っている人物は別人か。
ホッとする反面、彼女はクラスメイトかもしれないと言っていることが気になってくる。
いったい、誰のことなんだ?




