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二十五話

 日が傾き夜が来る。森の入り口にいる自分が振り返ると村が辛うじて見えた。

『はい充吾くんおにぎりだよ、食べる?』

 軽くうなずき栄治の持つ箱から一つ受け取る。一際デカいそれはかなりしょっぱかった。

『それ理子ちゃんが作ったんだって』

 微妙な表情を見て笑いながら隣へ腰を下ろす。日中は暑い位だが夜は涼しく、イス代わりの岩もヒンヤリしている。

『なにかあった?』

『いやまだ何も』

『便りがないのが良い便りかな?』

 森に目を向けるがほとんど何も見えない。優たちは無事だろうか……


 森から帰った自分たちは一目散に村長宅へ向かい精霊から聞いた話をした。

『瘴気汚染か……』

 村長と要さんの口から深いため息が漏れる。まだ日が高いのに室内は夜のようだ。

『要何人か連れて波風に行け。国とギルドに連絡して調査を依頼して来い』

『俺とお前らで村中にこの話をして回るぞ。村中の男達で夜警戒が必要だ』

 

 その後村の男達で森の調査と南の集落の確認に15人が向かい、残りは森の入り口での警戒班と、村の近くでの防衛班として2つに分かれている。

 ふと顔を上げると丁度月が雲に隠れ一層闇が濃くなる。周囲に小さな明かりがあるが消えてしまうような錯覚を覚えた。


 森の中は暗い。俺のようになにかのスキルがないと動くこともできないだろう。

 俺こと優は、森の中を南へ向かい走っている。南の集落の確認を目的に15人の集団はほとんど音もなく静かに駆ける。全員が感知系のスキルを持ち、小さな異変も見逃すまいと周囲に目を向け耳を立てている。

 虫の音も聞こえぬ不気味なほど静かな森を1/3程進んだとき、何かが倒れるような重苦しい音が聞こえた。

『なんだ?』

『おい誰か【視覚拡張】持ってるやついただろ』

 スキルを持つ二人が前に進み目を凝らす。かすかに聞こえた音が大きくなってきた。

『ウソだろ魔物が群れてるぞ!!しかもかなりの数だ!!』

『なに!!群れだと!!』

『くそっ調査してる場合じゃない、村まで逃げるぞ急げ!!』

 クルリと反転し走り出そうとしたとき、突然黒い影が複数飛んで来た。

『こいつら黒狼か!!いつの間に――!!』

 黒狼は一体だけならすばしっこいだけだが群れで連携されると厄介だ。飛び掛かってきたもの以外にも周囲にちらほらと影が見える包囲されかかっている。

(タイミングが良すぎる)

 魔物の群れを見て動揺したタイミングでの奇襲しかも数が多い。ただ魔物が暴れているだけじゃないのか。

『おいあそこ!!』

 手に持つ短剣で一匹の首を刎ね、はじかれたように目を向ける。一回り大きな黒狼が木々の間を擦り抜けながら此方へと向かってくる。あれが群れの長だろう。

 いまあれと戦うのは得策じゃない。早く村に伝えないといけない。なら――――

『力を貸してくれるか?』

《オッケーイマッカセテヨ!!》

 こんな時でも陽気な精霊にあきれつつ魔力を流す。同朋の声に周囲の木々が力を貸す。

 草木の蔦に縛られ宙吊りになり、樹の根が手足に絡みつき枝に体中を刺され悲鳴を上げる。ぎりぎり逃れたモノも警戒している。

『よくやった!!逃げるぞ!!』

 全力で駆けだす。後ろから怒りと憎しみの籠った咆哮が響いた。

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