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二十六話

 何だか首の後ろがぞわぞわして落ち着かない。

『おいおい、そんなに緊張してると動けなくなっちまうぞ』

 肩にポンと置きながら村長が声をかけてきた。

 首から下を包む鎧は所々に小さな傷があるが、しっかりしていてかなり重そうだ。

 その背に背負う槍は自分の槍より明らかに大きく、腰に下げた分厚い刃を持つ斧も見た目に違わぬ重量があるだろう。

『……そんな重装備で動けるんですか?』

『鎧には軽量化の魔法がかかってるし関節には……』

 そう言っておもむろに右手を目の前に掲げ開閉させると黒い何かが見えた。

『シェリムリザードて言うトカゲの皮を使ってるからそんなに重くねぇんだよ』

『なるほど……』

(関節部だけ他のもので補強する……)


『おい何か近づいてくるぞ!!』

 その声を聞き背負った槍を構えると同時に、森から複数の人影が飛び出してきた。

『調査隊か!!』

 どうやら調査に出ていた人たちが戻ってきたようだ。皆かなりの距離をはしってきたのか息が荒い。

『全員いるみたいだな。何があった』

『かなりの規模の魔物が来ます!!』

『やっぱりか……一旦下がるぞ仕掛けはすんでるだろうな』


 森の入り口から少し距離を置き、近くにある岩に身を隠す。魔法で作られた明かりも最小限まで消され森から来る魔物もすぐには気付かないだろう。

 今回は今までの狩りとは比べ物にならない規模の魔物が来るらしい。此方も100人程度いるがそれをはるかに上回る数だと聞いた。

 背負った槍を抜き目の前に掲げる。村長から貰った槍は特別性らしく何度も使ってきたが一度も刃こぼれしたことが無い。

(自分は……)

『どうした?』

『優と栄治……』

 いつの間にか二人がいた。

 優は、森の中の戦闘でそのレザーアーマーが汚れているぐらいで大した傷はなさそうだ。

 栄治が身に纏う金属製から小さなジャラジャラと言う音が聞こえる。手に持つハルバードは森に行った時の物よりも大きい。

『もしかして緊張してる?』

『そうだな……今までとは全然違うし』

『うーん』

 手を顎に当て小さく唸っていると途端に何かいいアイデアでも浮かんだのかポンッと手を叩いた。

『なら僕たち3人でチームを組もうよ』

『チーム?』

『と言っても今から連携とかの練習も出来ないだろうから、出来るだけ近くにいて何かあったら互いに助け合うようにするのはどうかな?』

『分かったよろしく頼むよ』

『俺もそれでいい』

 2人の了解を得て満足げにうなずき森の入り口付近を見据える。

『後はあの仕掛けでどれだけ削れるかだね』

『何を仕掛けたんだ?』

 森に探索に行ったため仕掛けを知らない優が不思議そうに言う。

『時間もそんなになかったから2つだけなんだけど』

 そう言って指さす先は森だ。

『まずは、精霊魔術を使って森の出口付近に魔物が近づいたら周囲の木々や草花に妨害を受けるようになってるんだ。まあこれは奇襲されないためのものであんまりダメージはなさそうなんだけどね』

『そうか俺が森の中でやったのと同じ事か』

 どうやら優もすでにやったようだが樹の精霊に頼み魔物が近づいたら周囲の木々を操り妨害をして貰う手はずになっている。と言っても数が数なので大きな効果は望めないだろうが。

『そしてもう一つが――――』

《キタヨキタヨ》

 不意に精霊の声が聞こえた。どうやら時間らしい。

『村長魔物が来ます!!』

『おう!!やってやれ!!』

 村長の声を背に魔力を精霊に渡し魔術を発動させる。

《イッツァショータイムダー!!》

《テンチュウデスー!!》

 精霊たちのふざけたような声?と同時に森から獣たちの悲鳴と雄叫びが響いた。どうやら成功したようだ。

『助かったよありがとう』

《イエイエドーイタシマシテー》

 精霊たちが嬉しそうに周囲を飛び回るのを横目に森を見ると、すでに多数の魔物たちが森を抜けこちらに向け走ってくる。

 魔物は、森の中で戦った赤手猿や黒い毛並みを持つ黒狼、醜い小さな体に汚い布をより合わせた服らしきものを纏うゴブリン、ゴブリンより一回り大きな体に犬の頭を乗せ素早く動き回るコボルトなど、多くのモンスターたちが瘴気により汚染され漆黒の眼球に宿る真紅の瞳を向け迫ってくる様は下手な映画よりも迫力がある。

『でもう一つの仕掛けは?』

 言うよりも見た方が早いと周囲の岩の上を指さす。

 岩の上にはいつの間にか数人の男女が立ち手に持った杖や剣などを向け口々に魔術を唱えた。

『『【火矢】【火槍】【火弾】』』

 炎が凝縮され出来上がった矢や槍、弾丸達が魔物たちの周囲の地面に触れた瞬間の強烈な爆音が響き地面が捲れ上がり運の無い魔物達を粉々に吹き飛ばした。

『村に備蓄されてた爆薬の大半を地面に埋めてたんだ。これでどれだけ削れたか……』

 今までに見た事ない位に真剣な顔でまだ土埃の収まらぬそこを見つめながら栄治が呟く。

『よし成功だ!!あとは後続の魔物達を応戦しながら村まで撤退するぞ!!』

 村長の声に立ち上がり走り出そうとして――――


『まあもちっとゆっくりしていけや』

『このままやられっぱなしと言うのも面白くありませんしね』

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