二十二話
『やあ充吾くん。』
『栄治どうした。』
海蛇の一件から数日が経ち、また海に行こうとした時偶然彼、栄治に会った。栄治とはすでに何度も一緒に漁(複数の漁船で沖に向かいおもりをつけた網を引く引き網漁・海に潜り魚を銛などで仕留める潜水漁など)をして名前で呼ぶようになった。
『今日、森に行こうとしているんだけど君もどう?』
『森か。良いよ行こう。』
そういえば森には行ったことが無かった。海ではたいてい狩ったので別の場所に行くのも良いだろう。
『良かった。今日は優くんと二人っきりだったから君がいてくれてよかったよ。』
『すぐる?だれ?』
今まで聞いたことの無い名だ。漁師ではないのだろうか?
『優くんはよく南の森で狩りをしていて……おっ丁度良いところにいた。おーい!!優くーん!!』
南の門の近くに来た時、栄治が声を上げ手を振り出した。その先には全身を黒い装備で固めた青年がいた。黒い何かの毛皮で作られたレザーアーマーに腰に差した2本の短剣も黒く、暗い場所では見えなくなりそうだ。
『栄治叫ぶな。うるさい。』
低い声で淡々と喋るとうさん臭そうにこちらを見た。
『でこいつはなんだ。』
『充吾くんも一緒に行こうと思ってね。2人より3人の方がいいでしょ。』
『素人がいる方が危ないだろ。馬鹿かおまえ。』
睨みつけられた。まだ何もしていないはずなのに。
『大丈夫だよ。充吾くんも何度も漁をしてるし。なんなら森の浅い場所で何度か試してから考えるっていうのはどう?』
『……ふんまあいいさ。』
とだけ呟き踵を返し森へ向かった彼を追い南の森へと向かった。
『おい来るぞ。』
森に入ってしばらくすると急に黒い彼が立ち止り腰の短剣を抜き構えた。それに習い栄治は背負っていた大きなハルバートを、自分は村長に貰った槍を構えた。
横目でちらりとこちらを見た彼の前から6匹の猿が飛び出して来た。
『赤手猿だね。棍棒とか剣を持っているけど落ち着いて対処したら敵じゃないよ。すばしっこいから注意してね。』
『俺が突っ込む。栄治はそいつの子守りをしていろ。』
とだけ言い灰原さん(なかなか名乗ろうとしなかったので栄治から聞いた優の苗字だ)が2本の短剣を逆手に持ち群れに飛び掛かった。猿たちも簡単にやられるつもりは無く、素早く避け2匹は灰原さんに向かい棍棒を向け、残りは甲高い叫びを上げながらこちらに向かって来た。
『さて僕たちも行こう。2匹づつやるよ。』
『了解。いくよ!!』
栄治と離れ猿へ向かう。一匹はさびた短剣を持ちもう一匹は無骨な棍棒を持っている。
『うきゃーー!!』
気勢を上げ飛び掛かってきた剣持ちの切り払いを、斜めに構えた槍で受け流し石突で腹を突く。衝撃で剣を放した右腕に今度は刃を振るい切りつける。スキル【切断】を使い一撃で千切れ飛んだ腕の付け根から赤黒い血が噴き出した。
『うらぁ!!』
痛みに叫び声を上げる猿の胸を全力で突き刺すと、しばらく痙攣しあっさりと動きを止めた。魂を喰らう。
スキル【喰らい得る魂】発動
スキル【剣の心得】【脱兎の如く】
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もう一匹の猿は仲間を殺された恨みを晴らそうと、棍棒を振り上げ飛び掛かってきた。受け流そうとしたが力が強くできそうにない。棍棒を避けながら近くの大樹に近づきその前で構える。
怒りに目をくらませた棍棒の一撃を上に飛び枝にぶら下がる事で避ける。ゴンッと鈍い音が響き、樹に叩きつけた衝撃でしびれた手を抑えた猿を上から踏みつける。もがく猿の首を数回切るとすぐに動かなくなった。
『おめでとう充吾くん。』
『ふん少しはやるようだな。』
2人からの賛辞(片方は皮肉気味だが)を聞き礼を言う。二人の周囲には手を切られたり頭をつぶされた猿が転がっている。
『ほらさっさと奥に行くぞ。』
『へえ良いんだ。認めるのが早いね。』
『ふん……』
さっさと歩き出す彼に遅れないよう槍と靴に着いた血を拭い追いかけた。




