二十話
奏さんは銛とナイフを一本づつ持ち海中を自在に泳ぎ回る。よく見ると腰から下が魚になっていて、さながら人魚伝説の再現のと言った所か。
奏さんは海蛇の周囲を泳ぎまわりながら、隙を見て銛やナイフを刺している。海蛇も負けじと、体をくねらせ刃を避けながら長い体を巻きつけ捕えようとするがぎりぎりで避けられ傷と苛立ちを募らせていく。
自分が足手まといにならぬようにと海面を見上げ逃げようとした時、背後で白い光が瞬いた。
振り返ると海蛇の周囲を泳いでいた奏さんが意識を失ったように動きを止め海蛇に巻きつかれようとしていた。口を悦びに歪め舌なめずりしているように見える。
頭の中で自分に笑いかけてくれた奏さんがフラッシュバックし全身の血が滾った。
『きっさまぁぁ!!』
海水を全力で蹴りつけ海蛇へ向かう。【泳法自在】のおかげで猛スピードで奏さんのもとへ向かう。海蛇も食事中にそばへ寄ってくる存在に煩わしさを感じたかこちらを睨みつけ牙をむいた。奏さんを放しこちらへ向かってくる。
蛇の動きは早く躱せないだろう。初撃を受け反撃だ!
『ぐぅ!!』
差し出した左腕に噛みつかれ痛みに呻きながら海中を引き回される。痛みを我慢し右手に持ったナイフを叩き突けるように刺す。
ナイフを刺したままスキル【吸着】を使い全身で抱きつくようにして捕まる。そこから【放電】をしようとしたが出来なかった――――
『がああぁぁ!!!!』
海蛇が放電してきたからだ。先ほどの白い光は奏さんに放電した時の光だったようだ。全身から力が抜けていく。視界が徐々に黒に染まっていく。
奏さんを助けようとして助けられずに死ぬなど笑い話にもならない。愛華さんの顔が頭に浮かぶ。自分のようなつまらない人間を家族と呼んだあの人はどうなるのだろうか。
(泣くに決まってる!!)
助けてもらったあの人に何もできずさらに悲しませるなど愚の骨頂。こんなところでくたばるなどあり得ない!!
≪生きたいか≫
あの声が聞こえる。
≪生きる意志があるなら誓え≫
(誓う?何を?)
≪喰らい続ける事という誓約を≫
(誓ってやるよ喰らってやる!!!!)
≪ならば与えよう俺の“魔をも喰らう獣”の祝福を!!≫
“魔をも喰らう獣”から祝福が与えられました
祝福によりスキル【魂吸引】【瘴気耐性】【魔力耐性】【大喰らい】
を与えられました
誓約《魂を喰らい続ける》
力が漲ってくる。まだ電撃が続いているが我慢できるぐらいになっている。いける!!
刺したナイフを両手で掴み直し捩じる。次第に何か固いものを削るような嫌な感触に変わった。さらに噛みつき肉を喰らう。
激痛から激しく身を躍らせていた蛇も次第に動きを止めていき、黒い魂を出した。
スキル【喰らい得る魂】発動
スキル【締めつけ】【赤外線探知】【麻痺毒精製】【麻痺毒耐性】【電撃耐性】
をラーニングしました
魂が勝手によってきて吸収された。スキルの影響だろう。
視界がゆらゆらと揺れだした。蛇がスキルで【麻痺毒精製】を持っていた事を思い出す。海中を漂っていた奏さんをどうにか捕まえ海面まで運んだ所で今度こそ何も見えなくなった。




