第五十二花「耐久」
「カッカッカ!もっと仕掛けてこんかぁ!」
大太刀を振るいながら突進してくる老人。
華が前衛を担い、沈が後衛を務めている。
しかし、戦況は最悪と言っていいほどであった。
華の攻撃は全く通用していない。「流力」によって一撃の威力がとてつもなく高いが、それでも大太刀を盾に防がれる。
何度も崩れそうになりながらも耐えてはいる、と言った状態だった。
そして、戦況を変えるべく、沈が次の一手を施す。
息を吸い込む。そして、空高く飛び跳ねた。
「偽雨」
放たれたのは雨にも匹敵する量の矢。
老人が笑う。
「おもしろいのぅ!どれ、真っ向勝負といこうかのぅ!」
なんと、自ら矢の方へと飛んだ。
大太刀を握り締める音が辺りに響く。
そして、全てを弾き返さんと大太刀を振るった瞬間ーー
「偽り、だ」
全ての矢が、姿を消した。
「なんとぉ!…………やられたわぃ」
老人は無防備とも言える状態。
そこに、華がすかさず追撃を入れに接近。
「流力」による全ての力の累積を足に込める。
「はぁぁ!」
およそ人体から出たとは思えないような音が辺りに響く。
華の蹴りが、鳩尾を深く抉る。
老人はそのまま吹き飛ばされ、地面に打ち付けられた。
やっと大きな一撃が入った。
しかし、前衛で体を張っていた華は既に満身創痍。
そして、沈も危ない局面を乗り越えるために体に負荷がかかる技をなん度も使用。
ここから先、打つ手がないと言っても過言ではない状態。
(どうか、起き上がらないで……)
華は祈る。
段々と晴れる土煙。
しかし次の瞬間、その内部から土煙が爆ぜたように霧散する。
そこには、彼が立っていた。華の最大出力をまともに食らってもなお。
まだまだ余裕ということを誇示するかのように大太刀によって払われた土煙。
「いやー、今のは効いたぞぃ!おかげで完全に起きたわい!」
体をほぐすように大太刀を振るう。
そこで華と沈は信じられないものを見た。
その風圧だけで、大木が折れたのだ。
「敬意を表す!よって名乗らせて貰おう!ワシの名は真柄 刃郎!さあ、終幕といこうじゃぁないか!」
真柄 刃郎。ただ、「強さ」だけを求めた人生を歩んできた彼。
「精神」から違っていた。彼はこの状況を楽しんでいる。
まだ底は、見えない。
ーーーーー
暗い。ここはどこだろう。
当ても分からず彷徨う。
私は……あの剣の魔にやられて……。
その時、目の前に何かがいることに気づく。
何か、と表現したのは人間に見えないからだ。
姿形はまるで人間。でも、本当にそう思えなかったのだ。
その何かが振り向く。
「久しぶり、出来損ないの私」




