第四十七花「一日目午後」
午後は、施設の見学。
ここには、アレクサンダーが治める組織の支部があるらしい。それもかなり大きいだとか。
「いやー、大統領さんに見学してもらえるなんて光栄ですよ〜」
隣で歩いているのはその組織のトップのアレクサンダー。
当然のように私の隣にいる。
「……なんでここにいるの?」
さて、なんでリーダーさんが一介の護衛とやらの横にいるのか。
「……ショックです。僕って嫌われてたんですか……?」
ええい、なぜそうなる。
「いやいや、普通こんなとこにいないでしょ。今から君のとこの施設なのに、君は案内しないわけ?」
その時、横から肘で突かれた。
「なに?」
「話し方くらい、弁えてください」
「あ……」
「まったく……。赤を連れてきた方が良かったと言わせないでくださいね」
腹立つ。そして私は決意した。
この任務中に一回は藍を黙らせてやる。
その時、もう片方から笑い声が聞こえてきた。
「あははは!いやー、敬語じゃなくて大丈夫ですよ?嫌われてるわけじゃなくて良かったです」
なんていい人なんだ。藍も見習った方がいい。
口には出さないが。
「あ、さっきの質問に答えてなかったですね。実は、僕自身はあまり護衛などに向いてないのですよ。あ、全く戦えないってわけではないんですが、ここにいる方々に比べるととてもとても……」
意外だった。ということは彼の異能はどれほど優秀なのだろう。
「それに、施設の案内はそこの人達に任せますよ。僕よりも上手いでしょうしね」
彼は、謙虚さの塊のようだ。朗らかに笑いながら話すその姿は完璧だ。
「なるほどね。じゃあ今ここで襲撃者が来たらアレクサンダーさんも守らないといけないわけ?」
「ええっ、守ってくれないんですか!?」
おっと、思わず軽口を言ってしまった。それほどまでに打ち解けたことに自分自身もびっくりしていた。
「あ、着きましたよ」
「え……」
支部だと聞いていた私には少々衝撃が強過ぎた。
「藍……これって七華の本部よりおっきくない?」
「ええ、そうですね。さすがは国際組織です」
国際組織……。ちょっと舐めてたかも。
「いやー、これほどの支部はそう多くありませんけどね。あ、でも人が多いだけで実力で言ったら七華の方が断然上ですよ」
まあ、確かに。試験が鬼のような七華に比べたらそうなのかもしれない。
でも、人数が多いというのはそれだけで多大なアドバンテージとなる。
その時だった。
空気を切り裂くように、剣がまっすぐに私に向かっていた。
剣だけが、だ。
「おっと」
皮スレスレで避ける。
「紫様!ここは任せます。私は怪我人を運びます!」
櫛川の声が聞こえる。
私達のところまで辿り着くとは、流石にやるな。
「藍、ここは私がやるから、アレクサンダーさんと一緒に大統領のところへ行って」
「分かりました」
ここに残ったのは私と一本の剣。
「悪いけど……任務だし、最初から本気でいかしてもらう」
手に「ゆかり」を呼び出す。
剣は空中で向きを変え、まるで意思を持つように再び私へ襲い掛かった。
戦場は、壮絶な斬り合いへと変貌した。




