第四十五花「子ども」
「それでは、挨拶程度は済んだと思いますので、それぞれ配置についてください!」
五分ほど時間が経った頃、ハリンソンがそう告げた。
世界中から実力者が集まっているんだ。それなりに会話も弾むだろう。
………が、私はそうはいかなかった。
遡ること、五分前……。
私も会話に加わろうと思い、三人ほどで話しているところへ足を運んだ。
「こんにちは」
普通に挨拶をした。
なのに返ってきた言葉は、信じられないものだった。
「どうして、こんなところに子どもが紛れ込んでいるんだ」
一人がそう言った。
ピシッと、私の頭に亀裂が入る音が聞こえたようだった。
子ども……と言ったか、この野郎。
まあ、私は「大人」なのでここは下手に出る。
「えっとーー……私も護衛の一人なんですが……」
「はっはっはっ!笑わせてくれるね、お嬢ちゃん。その小さな体で何を守れるっていうんだい?」
「まあまあ、こういうのに憧れる年頃だ。それで……ここにいるということは、君は大統領の娘さんとかかな?送られてきた概要には、書かれていなかったが……」
他の二人が、そう答える。
どういう間違いをしたら、そんなことを思うのか。
私が大統領の娘?いや、どう見ても違うだろ。
あと、体の大きさなんて関係ないぞ。なんなら今ここで力比べしてやろうか。
まあ、でも悪気があって言ってるわけじゃないし……怒るのは違うか。
誤解を解くには……あ、そっか。私が日本の七華ってことを名乗ればいいのか。
「えー……誤解しているようだけど、私は……」
「何やってるんですか、あなたは。ハリンソンさんが呼んでいますよ」
「藍……タイミングを考……え?今、なんて言った?」
「ですから……」
その時、私と藍の間に先の三人が割り込んできた。
「もしかして、日本の色である藍さんですか!?」
「はい、そうですよ」
「本物だ……護衛の仕事、引き受けてよかった…」
「そう言ってもらえるなんて、恐縮です」
「あれほどの実力と実績を持っておきながら、なんと謙虚な……」
私をそっちのけで、盛り上がり始めやがった。
藍……許さんぞ。
「そういえば、同じ色の紫?さんも来ているんですよね?」
「ええ、まぁ…はい」
「どこにいるんですか?見たことないので、一目見てみたいんですが」
「先ほどから、ここにいますよ」
「「「え?」」」
突如、私の方を見る。なんだ、なんか言いたいことでも?
数秒の沈黙。
そして、一人が口を開いた。
「君が……紫さんなんだね?ごめんよ、勘違いしてしまって。あ、お菓子で許してくれるかい?」
私の怒りは、頂点に達しそうだった。
「舐めてる?実力差、わからせてあげよっか?」
その時、藍が笑い声を上げた。言っておくが、藍、お前もだぞ。
しかし、次の言葉で、私は黙らされることとなってしまった。
「はぁ……こんな小さなことで怒るなんて、子どもに間違えられても仕方ありませんね」
「うっ……」
そんな滑稽な私を嘲笑うかのように、冬の冷たい風が、私に向かって吹いたのだった。




