第四十四花「アレクサンダー ハリンソン」
それにしても、実感がないのか三文字に対する反応が薄いと言うかなんというか……。
念を押しておこう。
「藍と櫛川?もう一度言うけど、三文字はやばいんだよ?」
私は後ろ歩きで、顔を見てしっかりと言った。
藍が口を開く。
「そんなことわかってますよ。あなたがいうのだから、本当にやばいのでしょうね」
「だったら、もう少し……」
「いいですか、紫。わかっていないようなので、教えてあげましょう」
なんだと。
そう反論しようとしたが、すぐに藍は話し始めてしまった。
「その三文字異能者の能力はわからない。今、できることはせいぜい警戒するくらいです。勿論、警戒はしてますよ?それに、それは普段の時と、なんら変わりはありません。それともあれですか?三文字異能者と聞き、それをとても深刻に捉え、怯えれば良かったのですか?」
「いや、そう言うわけじゃ…」
「そうでしょう?過度な緊張や警戒は逆に、視野を狭くしますよ」
何も言い返せない。悔しいが、藍が言っていることの方が正しい。
「まあまあ。その辺で、藍様もあんまり紫様をいじめると、また喧嘩になりますよ」
櫛川が仲裁に入る。
「そうですね。言いたいことは言えたのでこの辺で。紫が心配して言ってくれているのはわかってますから」
ぐっ……完敗だ。そんなこと言われたら、もう何も言えない。
そして、あれこれしているうちに、集合のかけられたところまで来ていた。
後二分ほど時間がある。
私は台の上に立っている人に目を向けた。
誰なのかわからないが、なんかリーダーっぽいし、有名な人なのだろうか。
「ねぇ、藍。あれって誰?」
「……え?まさか、読んでないのですか?あれほど言ったのに……」
心底諦めたようなため息を吐かれた後、説明を始めてくれた。
まあ、ため息は要らなかったかな?失敗は誰でもある。
「あれは、今回の護衛を仕切ってくれる、アレクサンダー ハリンソンさんです。忙しいなか、わざわざ今回の護衛に参加してくれたそうです」
あーー……なんか聞いたことあるかも。
「その人って……RWのトップだっけ?」
「そうですよ。流石にそれくらいは知っていましたか」
なんだと。……まぁ、教えてくれたし、目を瞑ってやるか。
言っても負けると思ってしまったのは、そっと心の奥底にしまったのだった。
その時、突如何か掛けられた感覚に陥る。
攻撃的なものではなかったので、私の体は抵抗しなかった。
「皆さーん、こちらに注目してくださーい!」
その声により、集まっていた全員の視線が一箇所に集まる。
「今回、この場を仕切らせてもらう、アレクサンダー ハリンソンです!普段はRWのところで活動してます。早速ですが、みなさんに異能を掛けさせてもらいました。詳しく説明するのは難しいので、一言で言うと、ここにいる人同士は、言葉が通じるようにしました」
まじか、そんな便利な異能持ってるのか。
辺りが少しざわめきだした。
それぞれ確かめ合っているのだろう。
「コミュニケーションが取れないことには護衛の仕事もうまくいきません。ですが!もう安心です。今回仲間となるみなさんはもう、言葉が通じるのですから!」
意気揚々と説明する姿は、人を惹きつける何かがあった。
「それでは、頑張っていきましょう!」
互いに話し出す護衛達。
そんな中でただ一人だけ、少し違和感を覚える者がいた。
そして、そんな彼女もすぐに違和感は忘れ、他の護衛達と共に話し始めたのだった。




