第四十三花「三文字」
私たちは少し離れた場所へと移動した。
まあ人気のないところに行っても、多分誰かには聞かれているとは思うが。
ここにいるのはほとんどが異能持ち。そういう類の異能持ちがいてもおかしくない。
「では、教えてもらいましょうか」
藍が真剣な顔をして聞いてくる。
「わかったわかった。焦らないで」
うーん、何から話そうか。
「とりあえず、李大統領にあんなことを聞いた理由の説明からお願いします」
あ、それのことがあった。
「そうだね。私が言った二十年前の幼児大量失踪事件については知っているよね?」
「ええ、世界中で幼児の失踪が相次いだあの事件ですよね。それでも、そこまで捜索がなされていなかったので、何かあるとは思っていましたが……」
おお、詳しい。私もそこまでは知らなかった。
その時、藍がハッとした。
「まさか……」
「多分考えている通りだよ。それには李大統領も関わってる。No.25の情報は確定ではないから、鎌をかけたんだけど、見事に引っかかってくれたよ」
あの感じは、知らない人間のものではない。
「なるほど。しかし、二十年前はまだ李大統領ではない……。つまり、その時立候補者だった彼がその事件に加担することで、何かしらアドバンテージを得たのでしょう。そして、事件の黒幕、彼が加担したのが……」
櫛川も口を挟んだ。
「今回襲撃してきたところの組織ってわけですか」
「そうだね。そして、加担してきた彼に対し、襲撃をかけたんだ。そして、他の大統領は襲撃を受けてない」
全てがつながる。矛盾点が見つからないのなら、それは真実として行動した方が賢明だ。
「口封じ、ですね。なるほど……。では、なぜ今になって?」
確かに、それにしてもなぜ今なのか。
「それはわかんない。まあ、考えるだけ無駄だよ」
まあ、色々と思いつくものはあるが……。
「とりあえず、そのことについてはわかりました。では、No.25が残した情報の中に、敵の情報はありましたか?」
藍が次を急かす。あと少しで護衛全員が集まる時間だ。
「あとは……」
私は、少し止まってしまう。
「……?早くしてください」
わかったから急かすな。そういう意味で手で牽制し、一旦考える。このことを伝えても良いのか。いや、でも伝えるしかない。
「三文字異能者。組織のボスが、そうらしい」
「はい?」「え?」
藍と櫛川が同じような反応を見せる。同じタイミングで目をパチクリさせていたので、少し笑ってしまった。
「待ってください。三文字、異能者……?そんなの聞いたことが……って、時間ないのですから早く教えてください」
笑っていると、藍がまた少し切れ気味で言ってきた。
「ごめんごめん」
さて、この異常性に気づくだろうか。
藍と櫛川、二人とも異能者の中で世界トップレベル。そんな二人が、知らないのだ。
「三文字異能者……その呼び名を知っているということは、No.25のこの情報は本当だと思ってもらって構わない」
私も、その呼び名を聞くのは久しぶりだった。私も、かつて一人しか出会ったことがない。
「決して、相手してはいけない。かつてそうだった者は二人。世界中を恐怖に陥れた」
藍が、少し考えて後口を開く。
「つまり、今の話からすると、私達は「二文字異能者」。……誰なんです?かつてそうだった者、とは」
目を閉じると、今でもその光景が浮かんでくる。
「かつて、アジアを飲み込まんとした男。その名は、チンギス・ハン」
「………あの、有名な……」
櫛川がそうポツリとつぶやいた。
「かつて、勢力を広げたのには、そういう理由が…。いや、でも……」
なんかぶつぶつ言ってる。櫛川歴史好きだからな。
「でも、なんであなたがそんなこと知ってるんですか?」
おっと、藍から鋭い指摘が。
こう言われると思っていたので、言う言葉はもう考えておいた。
「秘密」
「え?」
口に指を当てて、そう答えた。
すごいびっくりした顔をされたが、それ以上何も聞いてこなかった。
意外に空気読めるじゃないか。
「では……もう一人は?」
「秘密」
またそう言うと、今度は肩を落とした。
その時、櫛川が入ってくる。
「紫様!なぜ、日本に攻めてきた時、日本は無事だったのですか?」
興奮してるな。滅多にそういうのは見れないので、なんか新鮮。
「うーん、それも秘密」
「ええ〜、まじか〜」
おっと、口調が崩れているよ。
「もし…」
そろそろ、集合の時間だ。
私は歩きながら話す。
「答えを見つけられたら……私が教えてあげる…世界の、真実を」




