第四十二花「外交問題」
私たちが降りてきた飛行機の周りには、結構な人数が集まっていた。
まあ当然だろう。見た目も結構いかついし、「もう狙われている」ということも加味されているだろうし。
それにしても結構な人数の護衛だな。
堂々としている者、気配を消している者、楽しそうに話している者…。
それにしても全員レベルが高い。これなら私らの出番はないんじゃないかな。
それから少し歩くと、中国の大統領のところに着いた。藍もいる。
待たせたという意味も込めて深く礼をする。
……そして、今から無礼を働くことについても。
「藍」
私は手招きをして、藍を呼ぶ。
なんか嫌そうな顔をされたが、ちゃんと来てくれる。
「なんですか?」
「今から私が言うこと、翻訳して欲しい。何を言っても」
「はい?」
さらに嫌そうな顔をする。
「……何を企んでいるのかわかりませんが、無礼を働くなんてこと、しないでくださいよ」
「……まぁ、とりあえずお願い」
「……はぁ…。わかりましたよ。責任は自分でとってください」
私は大統領の方を向き、言葉を放つ。
「李大統領、その身がご無事で何よりです。先刻、そちらの華さんのおかげで、スムーズにいきました」
まずはお世辞。藍もすぐに翻訳してくれている。
李大統領も機嫌良さそうに頷いた。
さて、ここからが問題。
「……ところで、突拍子もないことを聞きますが……「二十年前の幼児大量失踪事件」これについて何かお知りですか?」
さらっと。何事もないかのように聞く。
そして、翻訳を聞いた李が険しい顔を見せた。まるで、なんでそんなことを聞くのか、と言いたげな感じの。
だが、私は見逃さない。心拍数が上がっている。普通の反応ではない。
表面だけ取り繕ってもダメな相手が、この世にはいるのだ。
ーーそして。
地を割るほどの蹴りが飛んでき、とてつもない速さの矢が私の眼球の前まで来ていた。
ここで下手に喰らっては、示しがつかない。
残念だが、本気を出した私より速く動けるものはいないだろう。……多分。
華の蹴りの威力は、とてつもない。
だが、いなして力のベクトルを変えてしまえばどうってことない。
私はそり返り、矢を避けた瞬間、蹴りを横へいなす。
そして、私の上を通り過ぎていく矢を、木っ端微塵に切り裂いた。
完封。それ以外の言葉が見つからないほど、差は圧倒的だった。
「ふぅーー。いきなりやめてよ、話してる最中なんだからさ」
そう言って、体を起こす。
その時、華は李の横まですぐに戻り、私を睨みつけた。
そして沈も。「不敬は死」そう言われている気がした。
私はそれを一瞥した後、再び李を見る。
「いきなりすみません。変なことを聞いてしまって。ですが……」
そこで少し圧をかけながら、
「過去は消えない。その意味をよく考えてください」
なぜ、「中国の大統領が一番最初に狙われたのか」その意味をもう少し深く考える必要があった。
まぁ、あの男の情報がなかったら私もわかってなかったけど……。
「失礼しました。改めて、この度は私たちを連れてきてくださりありがとうございました」
そう言って、その場を後にする。
藍は頭を抱えながら、後ろから着いてきた。
「……何かやらかすとは思っていましたが……はぁ、外交問題に発展したらあなたどうするんですか?」
小言がうるさい。これは言わなければならないことだったんだ。
「藍。私が貰った情報、まだ誰にも話していない。というか、話したらまずいかもしれないものも書かれていた。……最後にとんでもない置き土産してくれたよ」
「……教えてくれますか?」
「大丈夫。元々そのつもりだから。誰が聞いてるかわからないから、ちょっと移動しよう。櫛側連れてきて」
戦いはもう、始まっている。




