第三十六花「一方」
……一方その頃……
華は下位の部隊と思われる者達の相手をしていた。
……こう言えば聞こえはいいが、実際はただ一方的な蹂躙。
最初なんて、いきなり奇襲をかけたもんだから、それだけで半数近くが壊滅した。
今はなんとか立て直したようで、隊を組んでこちらに攻撃を仕掛けてくる。
少々マシにはなったが、実力差が違いすぎる。
華の異能は「流力」。それは至ってシンプルなものだ。
ーー出力の調整、ただそれだけ。
特別な点と言えば、「蹴る」と言った行為に対し、「殴る」などの力を上乗せできること。
具体的に言うと、華ができる攻撃手段の全てを、一撃に込めることができる。
つまり、最大出力が異常に高いのだ。
しかし、最大出力を出さずとも、ただの「蹴り」が強すぎるので、異能がなくても大抵の輩はなんとかなってしまうのだ。
ただただ目の前の敵を蹴散らしていたが、違和感を覚えることがあった。
部隊は日本人と中国人の両方で構成されている。
時折聞こえてくる声は中国語と日本語が混じっている。
にも関わらず、隊は崩れない。
そこが問題だ。両国の言語を全ての者が理解している可能性もなくにはないが。
華はそんな疑問を頭の片隅に置きながら、ただ敵を蹴散らしていったのだった。
櫛川はあの男の側近と思われる二人と対峙していた。
立ち位置から一人は近接系、もう一人は遠距離系だと思われる。
近接系と思われる者が、口を開いた。
「うまく私たちの予想外を作ったようですが、奇襲をかけなかったのは詰めが甘いですね」
顔はわからないが、声から女と思われる。
「いやー…本当はそうしたかったんですけどね」
そう言って、天井裏での出来事を思い出す。…セクハラで訴えられたら紫様に弁明してもらおう。そもそも彼女が間違えたことから始まったのだ。
そんなことを考えていると、
「……随分と余裕そうですね、「七華総監の側近」さん?あなたの異能の情報は持っていますよ」
そう言って、少し空気が変わる。
「そうですか…。それにしてもその言い様、私の異能が脅威にすらならないと言っているように聞こえますが」
そう言い終わるなり、距離を詰めてきた。
「ただ移動するだけの能力でしょう?もちろん、脅威になんてなりませんよ!」
彼女が距離を詰めてくるのと同時、あらゆる方向から銃弾が飛んでくる。
いつのまにかもう一人の姿が見えない。銃弾はそっちの仕業だろう。
こうなると、安全な場所が限られる。
…なるほど、異能対策でこうしてきたのか。つまり「瞬転」した瞬間に次の攻撃がくると思って問題ない。
ここは一つ、魅せてやることにした。
銃弾と彼女が達する直前、私は彼女の背後へ移動した。
そして、予想通り彼女が体を反転させ、瞬時に次の攻撃が迫ってきた。
ーーおそらく、彼女は、「瞬転」にクールタイムなるものが存在していると踏んでいるのだろう。
だが、物事に「絶対」は存在しない。
ーーーーーテロリスト視点
私は迷いない一刀を繰り出した。
ーーが、その刃が届くことはなかった。
突如、目の前の存在が消え、後ろから衝撃が来る。
完全に予想外の一撃だった。
咄嗟に距離を取る。
「確かに…私って弱いと思われて舐められがちなんですよね。攻撃系の異能じゃないですから」
彼はため息をついた。そして、
「ですが、そんなわけないじゃないですか。ただ移動するだけの者に、「総監の側近」は務まりませんよ」
私は、勘違いしていた。
彼は紫や藍などと比べると弱いと。そんな馬鹿な勘違いを




