第三十五花「罪を生み出した罪」
「……なんで謝ってんだ。同情か?」
私は言葉に詰まる。止血など、とうにやめていた。
「いや…えっと…その…」
呼吸が浅くなる。
「ごめん…言えない」
そう言うと、男は怪訝そうな顔をしながらも、話を戻した。
「ま、こんな話してもな…」
そう言いながら再びナイフを構える。
「俺を殺すのは一瞬待ってくれよ。俺には今、下がれない理由があるんだ。終わったら、情報教えてやっからよ」
ふむ…先ほどから言動と行動があまり一致していない。下がれない理由……脅されてるな。
私も浅くなった呼吸を整えながら、刀に手をかける。
一つだけ、聞かなければならないことがあった。
「君は今、死にたい?」
唐突な問いかけに対し、男は少し黙った後、
「……ああ」
その言葉を聞き、私も覚悟が決まる。
私の罪から生まれてしまった悲劇。人を殺してきた彼を、私は責めることなど許されない。
「…わかった」
再び切りに掛かる。
もっと速度を速くする。
が、当たらない。まるで元からそこにいなかったかのように感じられる。
「それじゃあ、俺はやれねぇよ」
再び四方に彼が現れる。
ここだ、ここしかない。彼の異能を見破るには。
私はさらに神経を研ぎ澄ます。
そして、迫り来る四体にーー私は、何もしなかった。
先ほどよりも深く切られる。
「なんだぁ?やる気ないのか?」
男はすでに前方に戻っている。姿は一つしか見えない。
私は先ほどよりも多くの血を流している。
「おいおい、失血死して死ぬなよ?」
私は攻撃を喰らい続けた。
そして、やっと理解した。ーー彼の、異能を。
なぜ、初撃意外のナイフには、血がついていたのか。そして、なぜ全てタイミングがずれているのか。
私はため息を吐く。
「はぁーー……やっとわかったよ。君の異能。これを一発で見破るなんて…君のボスは何者なんだい?」
男が少し動揺する。
「…っは!二回で見破ったんなら大したもんだ…ぜ!」
彼はもう目の前にいた。ナイフを振り下ろしかけている。
私はそれには構わず、前に出る。
そして、空気を一薙ぎ。
「……かはっ!?」
私の目の前に男が現れる。
胸を横に裂いたその一刀は決して浅くなかった。
「…まじか。こうなった以上、きつすぎるな…」
胸を押さえながら男がつぶやく。
「大した異能だよ。今回は相手が悪かったってことで」
形勢が、逆転した。
タネが割れた彼の異能など、私には脅威にならない。




