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第三十四花「罪」

「さて……どうする?ついに異能解禁か?」

私は止血中。ご丁寧にも追撃してこない。

「うーん…どうしよっか。私、自分の異能嫌いなんだよね」

その言葉を聞いた男が、少し目を見開く。

「……笑わせてくれるな。俺もだ」

そして、体の力を少し抜き、語りだした。

「俺はなぁ、気づいた時から檻の中にいたんだ」

そのまま地面に腰を下ろす。

「当時はまだよくわかっていなかった。一定の時間が経つと、飯が運ばれてくる。ただそれだけ。退屈なんか感じたことなかった。それ以外知らないからな」

いきなり何を言い出すんだという目で見ると、男は苦笑しながら、

「止血してんだろ?その間くらい話聞いてくれや。……最後かもしれねぇし」

哀しい目だった。とても、悪人には見えない。

黙ったままでいると、肯定と受け取ったのだろう。続きを話し出した。


ーー在りし日の過去

俺は檻の中で何不自由ない生活を送っていた。それしか知らない俺は、そう思っていたんだ。

だがある時、俺の頭の中に一つの言葉が浮かんだ。

まぁ、それが異能の名前だったんだが…。おっと、言わないぞ?

当時は意味もわからない。だが、発音だけはなぜかわかったので俺は思わず呟いていたんだ。

その次の日くらいだろうか。

「立て。貴様は今から「選別」だ」

言葉はわからなかった。誰とも話したことなかったし、当然だ。

強制的に連行され、ある開けた空間に着いた。

そこには、同年代と思しき男女数名が立たされていた。

そして、目の当たりにする。

傷だらけだった。そして、大声で怒鳴られている。

そして、俺は初めて知った。「怯え」という感情を。

やがて俺にも何か言葉が放たれる。

ああはなりたくないと思っていたが、言葉もわからないし、当然うまくできるはずもない。

数分もすると、俺も傷だらけになっていた。

意識も途切れてかけていた。

その時、さらに拳が飛んできた。

俺は必死だった。だからこそ、異能が開花したんだ。

それからの日々は、訓練。ただそれだけ。言葉は自分で学ぶしかなかった。

そして、数年が経過した頃、俺は自分が最強だと思うようになっていた。

そして…人間として最低の部類まで堕ちていた。

悪を悪と思わない。無知が一番罪って話だ。

言われたことはなんでもこなす。まぁ…内容はわかるだろう?

そして最近の訓練では、上官ですら相手にならなくなっていた。

そんな時だ。上官がバタバタしだした。

そして、呼び出されたんだ。

もはや敵なしとまでなっていた俺は、態度でかく、施設の応接間に入ったんだ。

…そこにいたのは組織のボスだった。

一緒にいた上官は、顔がずっと青白い。

一般人みたいな奴だと思っていた。そう、その少し後まで。

俺は仰向けに倒れていた。

信じられなかった。勝負すら成り立たなかったんだ。

いきなり、一戦しようと言ってきたんだ。俺は調子に乗っていたのですぐに了承した。

その結果、この在り様だ。

そして、そのまま去り際に一言、俺の異能を言い当てやがった。

その時だけだ。俺の異能が見抜かれたのは。

その日は、それで終わった。

そのまま普段通りの生活に戻る。

その一週間後ぐらいだろうか。俺はある任務をもらった。

ある一家の殺害。

俺は普段通り、夜中に忍び込み、終わらせようとした。

家の前に来た時、なんとも言えない奇妙な感覚になった。

ーー俺はこの場所を知っている。

家に入り、リビングを覗いた。

誰もいないことを確認して、中に入る。

そこで、一枚の赤子の写真が飾れているのを見つける。

何故かはわからないが、それが誰かわかった。ーー俺だ。

その時、リビングの電気が付いた。

入り口に立っていたのは、四十ほどと思しき男女二人。

俺はその姿をみた瞬間、任務を思い出し、二人を切っていた。

床が血で染まる。男は即死だったが、女の方はまだ息があった。

「…… ◼️◼️◼️?」

そして、俺に名前を問いかけてきた。

「…お前は、俺の産みの親なのか?」

そう聞くと、女は涙を流しながら、言葉を紡いだ。今にも消えそうな声で。

「……あぁ、ごめ、んね…貴方を見失って……。ちゃ、んと育ててあげられなくて…ごめんね…」

俺は戸惑った。そして、目が覚める。

俺は、とんでもないことをしてしまったと。

罪の意識に囚われていると、もう一人現れた。

「お母さん?お父さん?今何時だと…」

寝ぼけながら部屋に入ってきた少女は、目の前の現実をすぐに受け入れられていなかった。

程なくして、糸が切れたように崩れ落ちた。

「あ……」

そして俺を見てくる。怯えた目。

俺は、耐え切れなかった。すぐに家を飛び出して、組織の施設に帰った。

しかし、入り口で待っていたのは、この前会ったボス。

「任務お疲れ様〜」

軽い様子で肩を叩いてくる。

俺はそれを振り解いて、叫んだ。

「お前か!!俺にあんなことをさせたのは!!」

息が荒い。目の前のやつを今すぐぶちのめしたい気持ちになった。

「あんなことって……君ぃ。いつもやってたでしょ」

何も言い返せない。ただ睨みつけた。

「いいねいいねぇ!その感情!恨みと罪悪感!君はまだまだ強くなれるよ!」

そう言い、またもそのまま去っていった。

その後は、また訓練に明け暮れた。彼を倒すためだ。

俺をこんなことにさせた元凶、「異能」を使って。

それから任務は一切拒否ってる。

強さだけを証明し、地位だけが上がっていった。

んで、今に至るわけだ。


ーーー

「今ここにいるのはボスの勅命だからなぁ…。断れなかったわけだ。……長々とありがとよ」

そう言ってゆっくり腰を上げた。

「同情するな。俺を罵ってくれ。まだこんな事を続けている俺を」

私は何も言わなかった。

沈黙が流れる。

そして、

「ごめんね」

私はそう、呟いた。


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