第三十三花「認識」
「強いねー、全然当たらないよ」
五分ほど経過しただろうか。私は攻撃を仕掛け続けている。
が、まだ一撃も入ってない。
突破口を探しながら、櫛川と華のことを思い出す。
櫛川は……この男の側近と思しき黒の仮面を被った二人を相手している。
多対一だが、まぁ問題はなさそうだ。
華は…見当たらない。
機体の制圧に行ったんだなと思っていると、いきなりドアが弾け飛び、三人ほどこの部屋に跳ばされてきた。
絶対大丈夫だと確信した。数だけなどあまり意味を為さないし。
その時、目の前には凶刃が迫っていた。
慌てて反り返り、直撃を避ける。
厄介だ。彼は自分だけでなく、物の存在感も消せるようだ。
「…っち。余裕そうだな。周りを見やがって」
少しイラついたように男が言葉を放つ。
その言葉に耳を傾けると同時、またも凶刃が迫っていた。
今度は先ほどより早く気づけたので刀で弾く。
「いや?余裕じゃないよ。このままだと私打つ手ないよ?」
軽くそう言うと、さらにイラつきを表した。
「ハッ!異能使ってないのによく言うぜ。打つ手なしはこっちのセリフだ」
確かに。言う通りだ。
「そうだね。じゃあ訂正しようか?私は余裕ですって」
「…馬鹿にしてると痛い目見るぜ」
突如、真正面から距離を詰めてきた。
防御を捨てて突っ込んでくる。
……流石におかしい。何かある。
そう思いながらも、カウンターの姿勢を取った。
「そっちじゃねぇぜ」
その言葉はなぜか四方向から聞こえた。
前、後ろ、右、左全てに男の姿が見える。
どれが本体かはわからない。そもそもこれはなんだ?幻影か?
おそらく本体は一体だ。彼の異能は認識阻害系。
どれかに的を絞るか、それとも一気に全て切るか。
判断がつかない。なら、全て切るしかない。
ーーしかし
ザシュザシュザシュザシュ。
「……は?」
私は四方向全てから切られていた。
足、肩、両腕の一部が赤く染まる。
「だから言ったじゃねぇか」
今度は前から声が聞こえる。
「認識阻害が……君の異能じゃないんだね」
私は血を拭いながら彼にそう尋ねる。
すると、彼は口角を二ッと上げて言い放った。
「誰がいつそんなこと言ったんだ?」
挑発的。かつ自信と狂気に塗れた声だった。




