表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/19

外に出る

三人は慣れ親しんだキャンピングカーに乗り込み、施設を後にした。

エンジンが低く唸り、タイヤが砂を巻き上げながら、ゆっくりと荒野へ滑り出す。


施設の外は、まるで別世界だった。

かつて街だったはずの一帯は、ゾンビの徘徊を防ぐために徹底的に建物が破壊され、草木も根こそぎ刈り取られている。

乾ききった地面はひび割れ、風が吹くたびに砂ぼこりが舞い上がった。生命の気配はほとんどなく、ただ灰色の空気だけが広がっていた。


20分ほど走った頃だった。

背後から、腹の底に響くようなどデカい爆発音が轟いた。


「っ……!」


思わず智春と紬は振り返る。

遠くの地平線の向こうで黒い煙柱が立ち上り、巨大な火球がゆっくりと空へ広がっていく。

爆風に乗って灰や煤がここまで飛んできて、フロントガラスにぱらぱらと黒い粒が当たり、視界を曇らせた。


紬が小さく息をのむ。


「あの施設……木っ端微塵になったんだね」


蓮は前を向いたまま、静かに答える。


「あぁ。一つの施設を潰しただけだけどな」


ここが本部とはいえ、同じような小規模施設はまだいくつも点在しているはずだった。


助手席の智春が腕を組み、ふんと鼻を鳴らす。


「まぁ、あそこは空気まで腐ってたしな。吹っ飛んでスッキリしたよ」


キャンピングカーは荒野をまっすぐ進む。

舗装されていない道は揺れが激しく、車体がガタガタと跳ねるたびに、後部の棚に積んだ荷物がカタカタと音を立てた。


三人はなるべく考えないようにしていた。

ゾンビと一緒に灰になった、施設に残っていた職員たちのことを。


彼らにもきっと、いろんな事情があって働いていたのだろう。

しかし、自分たちの罪を自覚していたはずだ――そう思いたかった。


紬が後部座席から身を乗り出し、蓮に問いかける。


「これからどうするの? 残ってる施設を一つずつ潰していくの?」


蓮はしばらく黙っていたが、やがて低い声で答えた。


「俺たちは正義の味方じゃない。命をかけてやる義務もないだろう。このままひっそり暮らしたい」


「……うん。僕も少し、疲れちゃったよ」


智春は、いつぶりだろうか、久しぶりにゆっくりと椅子に座った気がした。


「施設から食料もたんまりいただいてきたし、今日はパーティーにしましょう。私が腕をふるってご馳走作るよ」


「えぇー、蓮さんの方が料理上手いじゃん!」


「ちょっと! 私だって上達してるんだから!」


ワイワイ言い合う二人の姿は、まるで姉弟のようだった。

その光景に、蓮はほんの少しだけ肩の力を抜いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ