外に出る
三人は慣れ親しんだキャンピングカーに乗り込み、施設を後にした。
エンジンが低く唸り、タイヤが砂を巻き上げながら、ゆっくりと荒野へ滑り出す。
施設の外は、まるで別世界だった。
かつて街だったはずの一帯は、ゾンビの徘徊を防ぐために徹底的に建物が破壊され、草木も根こそぎ刈り取られている。
乾ききった地面はひび割れ、風が吹くたびに砂ぼこりが舞い上がった。生命の気配はほとんどなく、ただ灰色の空気だけが広がっていた。
20分ほど走った頃だった。
背後から、腹の底に響くようなどデカい爆発音が轟いた。
「っ……!」
思わず智春と紬は振り返る。
遠くの地平線の向こうで黒い煙柱が立ち上り、巨大な火球がゆっくりと空へ広がっていく。
爆風に乗って灰や煤がここまで飛んできて、フロントガラスにぱらぱらと黒い粒が当たり、視界を曇らせた。
紬が小さく息をのむ。
「あの施設……木っ端微塵になったんだね」
蓮は前を向いたまま、静かに答える。
「あぁ。一つの施設を潰しただけだけどな」
ここが本部とはいえ、同じような小規模施設はまだいくつも点在しているはずだった。
助手席の智春が腕を組み、ふんと鼻を鳴らす。
「まぁ、あそこは空気まで腐ってたしな。吹っ飛んでスッキリしたよ」
キャンピングカーは荒野をまっすぐ進む。
舗装されていない道は揺れが激しく、車体がガタガタと跳ねるたびに、後部の棚に積んだ荷物がカタカタと音を立てた。
三人はなるべく考えないようにしていた。
ゾンビと一緒に灰になった、施設に残っていた職員たちのことを。
彼らにもきっと、いろんな事情があって働いていたのだろう。
しかし、自分たちの罪を自覚していたはずだ――そう思いたかった。
紬が後部座席から身を乗り出し、蓮に問いかける。
「これからどうするの? 残ってる施設を一つずつ潰していくの?」
蓮はしばらく黙っていたが、やがて低い声で答えた。
「俺たちは正義の味方じゃない。命をかけてやる義務もないだろう。このままひっそり暮らしたい」
「……うん。僕も少し、疲れちゃったよ」
智春は、いつぶりだろうか、久しぶりにゆっくりと椅子に座った気がした。
「施設から食料もたんまりいただいてきたし、今日はパーティーにしましょう。私が腕をふるってご馳走作るよ」
「えぇー、蓮さんの方が料理上手いじゃん!」
「ちょっと! 私だって上達してるんだから!」
ワイワイ言い合う二人の姿は、まるで姉弟のようだった。
その光景に、蓮はほんの少しだけ肩の力を抜いた。




