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ゾンビゾンビゾンビ

蓮と智春は、施設を固く囲っている門を手動で開けた。

錆びついた金属がガラガラと悲鳴を上げ、隙間ができた瞬間、外に溜まっていたゾンビたちが一斉に奇声を上げて押し寄せてくる。紬は思わず蓮の背中に身を隠した。


蓮の袖をぎゅっと握りしめ、震える声でつぶやく。


「すごい……本当に私たちのことを避けてるのね」


ゾンビたちは蓮たちのすぐ脇を、まるでそこに壁でもあるかのように避けて通り過ぎていく。智春はその異様な光景に目を丸くしながら、感心したように頷いた。


「やっぱ蓮さんすげぇや。これなら全然怖くねぇ」


ゾンビたちは迷うことなく一直線に走り出す。

目指すのは施設の奥にある巨大な焼却炉だ。

彼らはまるで何かに導かれるように、死の穴へと躊躇いもなく身を投げていく。次々と落ちていく音が、遠くで鈍く響いた。


蓮はその様子を確認しながら、淡々と説明する。


「避ける匂いを作れるってことは、逆に“好む匂い”も分かるってことだ。ここらのゾンビを一気に片付けるぞ」


先ほど蓮たちは、ゾンビの好む匂いを発する薬品を焼却炉へドバドバと投げ込んだ。

薬品は甘ったるいような、鼻の奥にまとわりつく匂いが広がる。ゾンビたちはその匂いに引き寄せられ、次々と焼却炉へ吸い込まれていった。


一方で蓮たちは、ゾンビが嫌う刺激臭の薬品を体に塗りつけていた。

鼻をつく匂いだが、命を守るためには贅沢は言っていられない。


「匂いはそのうち消えるけど、今はこれで十分だ」




「助けてくれた磯川さん、どうしたのかな……」


紬はずっと磯川のことを気にかけていた。

蓮は少しだけ口元を緩める。


「あぁ、きっと大丈夫だよ。さっき研究室に行ったら、研究資料をごっそり持って出た形跡があった」


「さすがだな」と蓮は心の中で思う。

磯川の慎重さと判断力は、蓮が信頼する理由のひとつだった。


紬は安心したように笑顔を取り戻す。


「そっか。じゃあ磯川さんなら、きっとすごーい研究をして、あっという間に世界を平和にしちゃうかもね!」


その無邪気な想像に、場の空気が少しだけ明るくなる。


だが智春は、ふと疑問を口にした。


「蓮さん、この焼却炉を燃やしたところで、新しいゾンビがまた運ばれてくるんでしょ?」


蓮は真剣な表情で大きく頷いた。


「智春の言う通りだ。燃やすのは焼却炉じゃない」


「ええ?」


智春と紬は顔を見合わせる。


「導火線とか起爆剤とか、いろいろ説明したいんだ。少し手伝ってもらうぞ。

まずは智春の持ってきたスケッチブックを貸してくれ」


智春はポケットにクシャクシャに入れていたスケッチブック数枚を、延ばして蓮に渡した。


「さぁ、今から書くことをしっかり覚えるんだぞ」


蓮の書く計画に、二人の顔が引きつった。

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