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火剣の嫁入り  作者: 安崎依代@6/5「絶華」6/9「真紅」コミカライズ開始!
迎娶

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3/4

弐

 ──まぁ、その辺りの目標は、割と達成できたと思うんだが。


 わずかな微睡(まどろ)みの間に懐かしい夢を見た玉緋(ぎょくひ)は、うっすらと瞼(まぶた)を開いて周囲を盗み見る。


 戦場となった荒野を離れてすぐ、玉緋と小(シャオ)鈴(リン)は馬車に乗せられた。荷物の運搬に使う物ではなく、本来ならば身分のある人間が乗るべき屋根付きの馬車だ。おかげで悪路を進んでいてもそれなりに乗り心地が良かったし、小(シャオ)鈴(リン)と二人きりにしてもらえたおかげで移動中に休息を取ることもできた。


 ──輿(こし)といい、馬車といい、本来ならば戦場に必要のない代物の用意がやたらいいな。


 窓はあるが、外から布が垂らされているせいで景色を眺めることはできない。今どの辺りを走っているのか推測することはできなかった。


 ──戦場を離れて二日といったところか。すでに聯(れん)国の領土の中だとは思うが。


 今のところ、玉緋と小(シャオ)鈴(リン)は至極丁重に扱われていると言っていいだろう。


 移動にこんなに良い馬車を充(あ)てがわれている上に、馬車の中には監視要員を置かずに小(シャオ)鈴(リン)と二人きり。さらに言えば玉緋も小(シャオ)鈴(リン)も、身に帯びた武器を取り上げられていない。


 食事時には監視がつくもののきちんと馬車から降ろされ、兵と同じだけの食事を与えられている。監視にあたる兵も、口にする言葉こそ必要最低限だが、きちんと礼節に適った態度を取っていると玉緋は感じていた。


 ──一兵卒に至るまで、将による教育が行き届いている証拠か。あるいは……


 玉緋が総大将である劉(りゅう)秀(しゅう)蘖(げつ)の『嫁』と見なされているからこそ、丁重に扱われているだけなのか。


「……」


 その考えが脳裏を過(よぎ)った瞬間、玉緋は袖の中に隠した手をギュッと握りしめた。


 ──私の身代ひとつで敗戦の責を終えるならば、安いものだとは思っているが。


 五歳で荷(か)家の責務を負うと決意した玉緋は、十歳の時に素性と性別を偽り、軍に仕官した。ちょうどその頃の景(けい)は、北西に国境を接している聯、北に国境を接している瑞(ずい)と三つ巴の争いをしており、戦が絶えなかった。


 戦が絶えないことは良くないことではあるが、武官としては好機である。


 その混乱に乗じる形で、玉緋は成果を挙げ続けた。父譲りの武才と母譲りの豪胆さ、そこに加えて天までもが玉緋に味方してくれたのか、玉緋はトントン拍子に地位を上げていった。


 若干十八歳で将の末席に名を連ねた玉緋は、その折に素性と性別を自ら明かした。もちろん内外からの反発は強くあったが、それでも二十四になった今に至るまで玉緋は追い落とされることなく将の地位にある。景国内でも有数の武功は、玉緋の手腕を示すのに十分なものであったはずだ。


 麗艶な見目に似つかぬ苛烈さを誇る荷家の姫将軍。ついた二(ふた)つ名が『景の火(か)剣(けん)』。


 今も『女の将軍など』と玉緋を面白く思わない軍関係者はそれなりにいるが、だからこそそんな玉緋の下につくことを決めた旗下の兵の忠義は固い。一際士気が高い荷軍に撃破できない戦場があるわけがなく、玉緋が出る戦は圧倒的に勝率が高かった。


 だからこそ景皇帝は、景と聯の間に広がる空白地帯で突如勃発した戦の鎮圧に、玉緋を総大将とした軍勢を送り込んだのだ。


 ──此(こ)度(たび)の戦の顛(てん)末(まつ)には、陛下も驚かれることだろうな。


 玉緋が自軍を率いて戦場に到着した時には、国境警備隊に加えて、先着していた援軍がすでに交戦状態にあった。


 その時点で、玉緋の目で見て戦況はほぼ五分。若干景に不利ではあったが、勝てない戦ではないというのが玉緋の見解だった。


 一旦、玉緋が率いてきた軍で相手を叩いて隙を生み出し、一時的に相手を後退させる。その間に景軍全体を再編成し、指揮系統をきちんと整え、事前情報に現場の将からの報告を加えてこれまでの戦況を分析。体勢を整えて落ち着いてかかれば、勝機は十分にある。


 その流れで、間違いなどなかったはずだ。


 ……玉緋をその考えに嵌(は)めるために、玉緋が到着する以前の戦の流れが組まれていなかったのならば。


 ──狙ってやったのだろうな、ここまでの立ち居振る舞いから考えるならば。


 乱戦になっていた横っ面から玉緋達が突っ込んで聯軍を蹴散らしたため、聯軍は一度戦場から退却した。そこまでは玉緋が考えた通りに事が運んだ。


 流れがきな臭くなったのは、翌朝、景軍が布陣を整えて再度両軍が激突した後だ。


 それまで聯軍は、騎馬による特攻を主戦法に置いていたという。前衛に置いた騎馬で景の隊列に穴を空け、散り散りになったところを中核になる歩兵で叩く。粗方崩れたところを歩兵より後衛に置いた第二騎馬隊でさらに追撃し、景の本陣を狙うという形だ。


 その話を聞いた玉緋は、軍を三部隊に分けた。中央の本陣前をあえて手薄にする形で敵の特攻を誘い、手薄になった聯の本陣を左右の軍で横から挟み込む形で迎え撃つ。さらに言えば左右どちらかの軍で聯軍の背後に回り込み、聯軍全体を包囲できればという思惑もあった。


 相手が一点突破の騎馬特攻を主体にしているならば、主力は中央に集中する。中央軍さえ押さえ込めればこちらが負けることはない。


 ……そう思い込ませることこそが敵の策だったのだと気付いたのは、両軍の前線同士が激突した後のこと。


 聯軍の背後を取るべく動き出した景の左右軍が、戦場の外側にあたる丘陵地帯の陰に隠れるように配備されていた聯の別働隊の襲撃を受け、またたく間に壊滅させられてからのことだった。


 ──あの形に誘い込むまで、何日も別部隊を配備したまま動かさなかったとは恐れ入る。


 本来ならば、国境警備隊が事前に気付くべきことだったのだろう。先着していた将軍が早期決着を急ぐあまりに、斥候を欠いたとも言える。


 だが最終的には、それらも含めて玉緋の落ち度だったと言わざるを得ない。此度の総大将は玉緋で、あの戦略の実行を命じたのも玉緋なのだから。


 景軍は左右両翼軍が不意打ちを喰らったことで大きな痛手を負った。総崩れこそ回避することができたが、結局は残った兵をまとめて防衛線を後ろへ引かざるを得なくなった。


 ──結局今に至るまで、私は聯軍の総勢がどれほどの規模だったのかを把握できていない。軍備がどれほどのものだったのかも。


 その日は景軍が陣を下げたことを受けて、聯軍は布陣を整えるために一旦兵を引いた。それが昼過ぎのことだ。


 混乱する景軍の本陣に聯軍の使者を名乗る男が単騎でやってきたのは、その日の夕方前のことだった。


 聯軍から単騎で使者がやってきた。景軍総大将への拝謁を希望している。


 その急報に景本陣が揺れたことは言うまでもない。折しも軍全体の被害の報告が上げられ、不発に終わった策の原因究明を急ぐべく、主だった将校達が玉緋の本陣で顔を突き合わせている真っ最中だった。押し殺した殺気を思いっきり浴びせられてしまった伝令役は、それだけで命を縮めたことだろう。


『単騎で来た使者など、こちらの陣地に踏み込ませる前に殺してしまえ』という声も上がった。そんな短絡的な発言が飛び出すくらいに、景軍が受けた痛手は大きかったのだ。その上でこちらの混乱を見透かしたかのように使者を送り込まれたとあっては、いくら将の立場にある人間達であっても平静を保つことは難しかったのだろう。


 使者が殺されなかったのは、玉緋が即座に発した『通せ』という一声があったからだ。


 玉緋の命に伝令兵はすぐに踵(きびす)を返し、ほどなくして聯軍の鎧(よろい)を身に着けた兵が一人連れてこられた。


 その瞬間のことを、玉緋ははっきりと覚えている。きっと一生、忘れることはないだろう。


【目通りに感謝する。貴殿が此度の景軍総大将、荷玉緋殿で相違ないか】


 声と体つきでまだ若いと踏んだ印象の通り、兜(かぶと)を脱いだ男の顔にはまだ幾(いく)許(ばく)か幼さがあった。真っ直ぐに玉緋を見据えた顔に躍る生き生きとした表情が、その印象に拍車をかけていたのかもしれない。どこか底が知れず、それでいて戦場で見るにはそぐわない無邪気さを含んだ、どこか現状を楽しんでいるかのような、そんな不敵な笑みだった。


 だがそんな値踏みするような感覚は、次のひと言で吹き飛ぶことになる。


【俺は此度の聯軍総大将、劉秀蘖。此度の戦を取り仕切っている軍師でもある】


 聯軍総大将が、たった一人で景の本陣にやってきた。おまけに軍師ということは、あの奇襲を立案した張本人でもある。


 目の前にいるこの男の首が落ちれば、戦況をひっくり返すことができる。


 その事実に、場にいた面々は皆剣に手をかけた。


 もっとも、刃が抜かれるよりも早く叩き付けられた『動くな!』という玉緋の大喝に、場にいる全員が固まって動くことはできなかったわけだが。


【おぉっと、短慮に走るのは良くないぜ。俺が一刻経っても戻らなかったら全軍で総攻撃をかけるように指示してからここに来てるんだ。今度は陣を引く余裕さえ与えず、皆殺しにされるぞ?】


 そんな状況の中で、唯一使者の男だけが玉緋の威圧に萎縮していなかった。おどけるようにヒラリと胸の前で手を広げた男は、試すような笑みを浮かべたまま玉緋を見据えている。


【この場にいる景軍が全員死に絶えるまで戦をするか、ここで兵を引いてやるか。その決定権が、俺にはある。俺の一存のみでどちらも可能だ。そのことをまずはご承知おき願いたい】

【何用でここへ来た】


 騙(かた)りなどではないと、直感で分かった。意図的に必要以上の圧を込めて叩き付けた玉緋の声に揺らぐ気配さえ見せなかった人物だ。飄(ひょう)々(ひょう)と振る舞っているが、並の人物ではないだろうというのが玉緋の見解だった。


 同時に、こちらの状況は聯本陣に筒抜けなのだということも察した。


 この戦が始まった時から、景軍はこの男の手のひらの上で踊らされている。男の言葉の端々から、こちらの動きは全てこの男の思い描いた筋書き通りになっているのだろうということも、玉緋には分かってしまった。


 玉緋は男を見据えたまま、内心で密やかに警戒を強める。


 そんな玉緋の内心を、使者の男……聯軍総大将、劉秀蘖は見抜いたのだろう。


 玉緋が固い声で問いを投げた瞬間、秀蘖は浮かべた笑みの種類を変えた。キューッと目が細められた笑みは、無邪気さが薄れた代わりにどこか満足そうな色があったように思える。酷薄さを滲(にじ)ませた笑みは、玉緋の背筋に氷塊を押し当てるような寒気を覚えさせた。


【停戦の提案に来た】


 ゾクリと背筋を戦慄(わなな)かせたことを、玉緋は表情に出さなかったはずだ。


 そうであるはずなのに、あの瞬間の劉秀蘖は、玉緋の心の底の底まで見えているかのように笑っていたような気がする。


【いくらこちらに有利といえども、戦い続ければ兵の消耗は避けられない。将としてそれは望むことではない。我ら聯軍は、停戦の意思がある】

【無条件に、というわけではないだろう】

【話が早くて助かる】


 配下達が勝手な行動を取らないように威圧を続けながら問いかけると、秀蘖はゆったりと笑みを深めた。


 その瞬間、秀蘖は間違いなく、聯軍全体を率い、策でこの戦場をかき乱した総大将の顔をしていた。


【景軍総大将、荷玉緋。お前が俺の嫁として俺の許(もと)に来ると言うならば、今すぐに聯全軍を引いてやろう】

【な……っ!?】


 驚きの声を発したのは、玉緋自身ではなく玉緋の副官達だった。長く玉緋を支え続けてきてくれた従兄(いとこ)にして副官である茜(せん)榮(えい)に至っては、秀蘖の発言に対して即座に剣を抜いていた。姿は見えなかったが、天幕の陰に隠れて密かに様子を探っていた小鈴(シャオリン)もその瞬間に匕首(ひしゅ)を抜いていたと思う。


【貴様、我らの将が女だからと戦利品扱いかっ!?】

【真っ先に出る言葉がそれか? 景軍にとって『景の火剣』とまで呼ばれる将の価値は、第一に『女』ということにあるのか?】

【なっ……】

【落ち着け、茜榮】


 対する玉緋の心は静かなままだった。むしろ秀蘖が乗り込んできた瞬間よりも冷静に頭が回っていたような気がする。


 こんな風に『女』として軽んじられることなど、軍に身を置いていれば日常茶飯時だった。それが無害ならば捨て置いていたし、実害に繋がりそうならば適宜排除していた。敵からも味方からも『負けたら俺のモノになれ』と何度迫られたか分からない。その全員を、相手のお望み通り『力尽く』で屈服させてきたからこそ、玉緋は今ここにいる。


 とはいえ、今回の相手は、すでに『力尽く』で玉緋を圧倒している状況にある。従った場合の利も大きい。


 正直に言うと、改めて読んだ戦況は圧倒的に景に不利だった。この場にいる将校の中には戦の継続を望む者もいたが、玉緋の中ではもはや『どうやって一人でも多くの者を無事に景に帰すか』という部分が一番の問題になっている。


 己の有利を聯軍が見逃すはずがない。撤退戦に転じるにしても、簡単には下がらせてもらえないことが目に見えていた。ましてや目の前に現れた総大将にして軍師は、こちらの内情を完璧に把握し、動きを掌握してしまっている。『この場にいる景軍が全員死に絶えるまで戦をするか』という発言は、決して言葉だけでの脅しではないだろう。


 ──正直、皆を無事に帰すためならば、荷軍だけでの玉砕戦も考えていたのだが。


 玉緋の身代ひとつで玉砕戦を回避できるならば、それに越したことはない。


 秀蘖の提案を聞いた瞬間、玉緋が真っ先に思ったのはそのことだった。


【ここまでのことをしておいて、その程度のことで聯軍全体が納得すると?】


 とはいえ、即座に秀蘖の提案に飛び付くなどという浅慮なこともできない。


 今にも秀蘖に飛びかかりかねない茜榮以下副官達をさらに一歩下げさせた玉緋は、臆することなく真正面から秀蘖を見据えた。


【この戦にかけた労力で得られたものが『総大将の嫁』では、兵も、聯国皇帝も到底納得はしないだろう】

【『景の火剣』は周辺各国を広く見渡しても指折りの脅威だ。その戦力を刈り取り、聯の身内に迎える。今回の戦にかけた労力と天秤にかけても、十分に釣(つ)りが来る戦果だと俺は計算した】


『己のことを《その程度》と考えているならば、一度考えを改められた方が良い』と、秀蘖は喰えない笑みを浮かべたまま続けた。そう口にした瞬間だけ、秀蘖の瞳の奥から笑みが消えたような気がしたのは、果たして玉緋の思い違いだったのだろうか。


【判断までに一晩の時間を与えよう。明日の昼、太陽が中天にかかる頃にこちらから迎えの輿を出す。条件を呑むつもりがあるならば、貴殿一人で、自ら輿に乗るがいい】

【乗らなければ?】

【さて。賢い貴女(あなた)ならば、結末は読めているはずだ】


『あぁ、侍女の一人ならば、同行を許そう』と言い添えた秀蘖は、チラリと玉緋の後ろの天幕に視線を向けると、ユルリと玉緋へ一礼した。その動きで暗に小(シャオ)鈴(リン)の存在に気付いていると示した秀蘖は、あえて言葉ではそのことを指摘しないまま玉緋の天幕を後にした。


 その後、玉緋の本陣で喧々諤々な話し合い、……もとい言い争いが繰り広げられたのは言うまでもない。


 玉緋の配下達は『我らが将をコケにされたまま大人しく引き下がれるか』と強固に主張した。『荷将軍が到着されてまだ二日。早々に敵軍に降るのは早計ではないか』という意見もあった。『戦い続けるべきだ』『荷玉緋が総大将にいて負けるはずがない』というのがその場の総意だったように思える。


 その意見を退ける形で、玉緋自身が『劉秀蘖の提案を受け入れ、早期決着を図る』という道を選んだ。


【現状で先方は、景の領地も、損害賠償金も、その他一切も要求していない。先方の要求通り『荷玉緋の身代』だけで手を打てれば、景の領土が損なわれることもなく、これ以上の兵の消耗も避けられる】


 この機を逃がし、戦を続けた末に再度提案される停戦協定は、この程度では済まされないだろう。


 このまま戦い続けても勝機が見える確率は低い。ならば景という国から見て損害がごく軽微である今のうちに手打ちとしておくべきだ。


【我々の使命は、国を守り、民を守り、国の利を守ること。それを最優先に考えるべきだ。違うか?】


 最終的に、玉緋のその言葉に反論できる者はいなかった。


 それでも茜榮を始めとした玉緋の副官達は『そうは言っても、それらに対する不利益をなぜ貴女だけが一身に受け止めねばならないのか』と最後まで反対したが、玉緋個人に長く付き従っていた小(シャオ)鈴(リン)は、思えば早々に玉緋の意を受け入れていたように思える。きっと玉緋の侍女であり、腹心の隠密である小(シャオ)鈴(リン)には、あの場にいた誰よりも客観的に戦況が読めていたのだろう。


【小(シャオ)鈴(リン)】


 全員を下がらせた後、玉緋が密やかに呼びかけると、小(シャオ)鈴(リン)はようやく天幕の裏から姿を現した。音もなく玉緋の足元に跪(ひざまず)いた小(シャオ)鈴(リン)の顔には、静かな覚悟が宿っていたように思える。


【私の最後の戦に、相応しい装束はあるか】

【潜入任務に備えた、襦裙が一揃えございます】

【ふはっ! 確かにやったことあるな、潜入任務】


『よし、それにしよう』と、玉緋は軽やかに口にした。


『着いてきてくれるよな?』という確認は、あえてしなかった。玉緋が初陣を迎える前から傍にあった玉緋の懐刀が、こんなことごときで玉緋の元を離れるとは思えなかったから。


 かくして翌日、玉緋は鎧から襦裙へ戦装束を改めると、小(シャオ)鈴(リン)だけを引き連れ、自らの足で死地へと向かったのだった。



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