第七話:再会と因果
夜の酒場。
ざわめきと笑い声、酒の匂い。
マリクは静かにカウンターの端に座っていた。
「……あれ」
マリクが小さく呟く。
視線の先。
そこにいたのは――
「……あいつ」
かつてマリクを追放したパーティのリーダーだった。
顔は赤く、完全に出来上がっている。
「ははっ、俺たちは最強だ!」
「前線は任せろってんだ!」
大声で笑い、酒をあおる。
周囲の仲間も苦笑いだ。
「……変わってないな」
マリクがぽつりと言う。
ただ、ゆっくりと立ち上がった。
背後から近づく。
気づかれない距離。
ほんの一瞬、手をかざす。
淡い光。
それだけだった。
何も起きていないように見える。
マリクはそのまま、何事もなかったかのように酒場を出た。
翌日。
ギルド前がざわついていた。
「おい、あいつどうしたんだ?」
「動きがおかしくないか?」
問題のリーダーは、広場の中央で苛立っていた。
「……なんだこれ」
体が、妙に重い。
特に下半身。玉袋が異常に大きい。そして重い。
踏み込みが鈍い。
「くそっ……!」
剣を振るう。
だが――
遅い。
明らかに遅い。
「昨日までこんなじゃなかっただろ!?」
仲間たちも戸惑う。
女性メンバー
「性病…じゃない?」
「そんなわけあるか!」
だが昨夜はひどく酔っていた。
記憶も曖昧だ。
何が起きたのか、自分でも分からない。
「リーダー……それじゃ前線は……」
一人が言い淀む。
沈黙。
そして――
こすれて痛く重いせいで動きが遅くなり使い物にならなくなっていく。
その後かつてと同じ構図が出来上がる。
「……悪いな」
誰かが言った。
リーダーの表情が固まる。
「お前のその玉袋の状態じゃ、前線は無理だ」
胸に突き刺さる言葉。
「街で頑張れよ」
その言葉は。
かつて、自分が言ったものと――
まったく同じだった。
広場では、元リーダーが歯を食いしばっていた。
屈辱。
怒り。
そして――
初めて味わう、“切り捨てられる側”の現実。
握りしめた拳が震える。
だが、誰も手を差し伸べない。
それが現実だった。
少し離れた場所。
人混みの向こう側で。
マリクは一瞬だけ視線を向けた。
何も言わない。
ただ、確認するように。
そして――
興味を失ったように背を向ける。
「行くぞ」
「うん」
リオは静かに頷いた。
二人は歩き出す。
もう、振り返ることはない。
因果は巡る。
この世界の、ひとつの現実だった。




