第5話:祝言の夜に納屋で寝たら、家臣にガチ説教されたんだが!?
第5話:祝言の夜に納屋で寝たら、家臣にガチ説教されたんだが!?
「昨夜のこと、すでに家中で噂になっております」
「…………」
やっぱり。
「祝言の夜に奥方様を置き去りにし、納屋でお休みになったとか」
「……はい」
「若殿!」
「す、すみません!」
反射的に頭を下げる。
男は深いため息をついた。
「まったく……。斎藤家との縁組が、どれほど重要なものかお分かりでございますか」
「……はい」
「奥方様のお気持ちもお考えくださいませ」
「……はい」
正論だった。
ぐうの音も出ない。
俺だって、悪いことをしたとは思っている。
ただ、怖かったのだ。
短刀が。
濃姫が。
結婚というものが。
「今宵こそ、奥方様のおそばでお休みくだされ」
「…………」
俺は黙った。
男が眉をひそめる。
「若殿?」
「……努力します」
「努力では困ります!」
怒鳴られた。
俺は肩をすくめた。
どうしてこの時代の人間は、すぐ怒鳴るんだろう。
男はさらに声を潜めた。
「それに、若殿。奥方様は斎藤道三殿のご息女。粗略に扱えば、織田家と斎藤家の関係にも差し障りますぞ」
「……分かってます」
「本当にお分かりですか?」
「はい……」
男は深いため息をついた。
「よろしいですか。夫婦仲もまた、立派なお役目にございます」
俺は黙って頷いた。
夫婦仲が政治問題になるなんて、聞いてないぞ。
しかも、相手は短刀を持って迫ってくる美少女だ。
どう考えても難易度が高すぎる。
「……あの」
「何でございます?」
「今夜も納屋で寝たら、どうなりますか?」
男の眉間に、深い皺が寄った。
「若殿ッ!!」
「すみませんッ!!」
俺は反射的に頭を下げた。
本能寺の変まで、あと三十三年。
歴史を変えるには十分な時間がある。
……はずだった。
だが、どうやら俺には、天下統一より先に解決しなければならない問題があるらしい。
誰か、この嫁から俺を助けてください。




