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第27話:一か八かを賭けて、自分の首を短刀で切ってみたんだが!?

     *


 深夜。


 俺はふと、目を開けた。


 隣では濃姫が眠っている。


 俺は天井を見つめた。


 そして、思い出した。


 俺は、何度も人生をやり直している。


 本能寺で死んだあと。


 家康を死なせて処刑されたあと。


 そのたびに、過去へ戻った。


 なら。


 もう一度、死んだら?


「…………」


 俺はゆっくり身体を起こした。


 吉乃が生きている時間へ。


 あの井戸で初めて出会う前へ。


 戻れるかもしれない。


 そうすれば。


 今度こそ、助けられるかもしれない。


「……吉乃さん」


 俺は小さく呟いた。


 もちろん、保証なんてない。


 次は本当に死ぬだけかもしれない。


 そもそも、どうして俺が過去へ戻れるのかさえ分からない。


 でも。


 何もしなければ、吉乃はもう帰ってこない。


 俺は隣を見た。


 濃姫が静かに眠っている。


 昨日まで、俺の手を握ってくれていた人。


 俺が泣いている間、ずっとそばにいてくれた人。


「……ごめんなさい」


 小さく謝った。


 濃姫には、何の罪もない。


 俺のことを大切にしてくれた。


 それなのに。


 俺は、この人を置いていこうとしている。


「……本当に、ごめんなさい」


 俺は布団から出た。


 そして、部屋の隅に置かれた短刀を手に取った。


 かつて濃姫が、初夜に持っていた短刀だった。


 あのときの俺は、怖くて逃げ出した。


 死ぬのが嫌だった。


 本能寺でも、家康のときも。


 ただ生き延びたかった。


 なのに。


 今は違う。


「……吉乃さん」


 目を閉じた。


 井戸のそばで笑う吉乃が浮かんだ。


 お茶を淹れてくれた吉乃。


 俺のために菓子を用意してくれた吉乃。


 一晩、一緒に過ごしたいと言ってくれた吉乃。


 そして。


 もう二度と目を開けなかった吉乃。


「……待っててください」


 俺は短刀を握りしめた。


「今度こそ、助けますから」


 次の瞬間。


 俺は短刀で、自分の首を切った。


 意識が遠のいていく。


 最後に思い浮かんだのは、本能寺でも、天下統一でもなかった。


 ただ一人。


 吉乃の笑顔だった。


 今度こそ。


 絶対に、死なせない。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

第一部完結でございます。

第二部からは主人公の覚悟と自覚が決まり、その結果世界への解像度が上がるに伴い地の文もパワーアップします。

少しでも面白いと思っていただけたらブクマや評価を頂けると執筆の励みになります。

次回更新は10月11日12時予定です。第二部からは毎日12時更新となります。

引き続きよろしくお願いします。

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