第十二話
ブクマ200件行ってました。ありがとうございます。
「ここよ!早く隠れて、」
「分かりました!」
先輩が案内したのは洞窟のような場所だった。よくまあこんなところに気づいたな。
「とりあえず、ここにしばらく隠れて、もう少し情報収集しましょう」
「はい」
情報収集と言っても、俺は敵が来るのを見るくらいしか出来ることはないんだけどな。
まあ、千体以上の敵に気づいたことと言い、俺とは違って何かしらの情報収集の手段があるんだろう。俺も何か索敵する手段があればよかったのにな、羨ましい限りだ。
そんな事を考えたのが悪かったのか、俺の頭に唐突に電子音が鳴り響いた。
ピコンッ
気配察知lv1を取得しました。
……久しぶりだなこのパターン。
いや、別に損してるわけじゃないからいいんだけどさ。でも、ねえ?
「どうかしたの、楠君?」
「あ、いえ、何でもないです!」
よほど微妙な表情をしていたのか、北川先輩に心配そうに声をかけられた。
慌てて首を横に振る。
「そう?ならいいけど」
「心配かけてすみません」
「こんな状況だし、楠君が動けなくなったら困るんだから、気をつけてね」
「は、はい」
うーん、真面目に心配されると「スキル覚えたんでビックリしました!」なんて言えないわ。
まあ、なるべく自分のステータスは公開しないようにって言ってたのは北川先輩だし、言わなくてもいいか。
「それで今、敵はどうなってます?」
黙っているのは何となく嫌だったので聞いてみる。
ついでにスキルの詳細も調べながら。
「少し待って……。そうね、今のところ近づいてくる敵はいないわ」
「そうですか」
……ふむ、このスキルはあまり使えないな。
ホッとしたように、実際にはため息を吐く。
どうやらこのスキル、レベルに応じて範囲が変化するようで、まだレベル1の現状では精々半径30メートルが限界のようだった。
もう少し範囲が広ければ使えたろうに、こんなんじゃ戦闘時に役に立つかもしれないって程度じゃないか。
しかもこれ、隠蔽とか魔法で気配を消されると見つけることは難しいらしい。流石にレベルに差があれば別だが、同格以上はどうしようもないみたいだ。
使えるようで使えない、少なくとも現時点ではほぼ無意味ななんとも言えない微妙なスキルである。
「……楠君、来たわよ」
そうして軽く落ち込んでいると北川先輩が囁いてきた。
流石に落ち込んではいられないので切り替える。
「……何体くらい来ました?」
たぶん気づかれないためだろう、小さい声で喋る先輩を真似して小さな声で話す。
「4体……いえ、5体ね」
「ふむ」
思ったよりも数が少ない。これなら隠れて逃れることも出来るやもしれない。
そんな楽観的な事を考えるが、索敵が出来る先輩の考えは違うようで顔が険しくなった。
「何か問題でもありました?」
「ほとんどの魔物が場所を動いていないわ。たぶん、今動いている魔物達は斥候役よ」
「うへえ……」
先輩の追加情報を聞き、嫌な顔をする俺。
しらみつぶしに探すのなら、全ての魔物をバラけさせればいいはずだ。
それをせずに、わざわざ斥候を出したりするということは。
「つまり、斥候は囮でそれが倒されたりしたらそこに千体以上の魔物が集まってくる、と」
「たぶんそういうことね」
「回りくどい事を……」
「それに、ただの魔物ならこういった策は思いつかないはずよ」
「最低限、知恵がある魔物がいるってことですよね……」
面倒極まりない話に苦虫を噛み潰したような顔になるが、残念ながらこれでは終わらないらしい。
軽く頭を振ったあと、先輩はまだ話を続ける。
「もうひとつ。多分、この魔物は直接操られてるわ」
「……根拠はあります?」
更なる面倒な情報に、顔を引き攣らせる俺。
操られてるってことは千体以上の魔物を支配下に置く方法が魔王にはあるということになる。
だとすると、これが本当かどうかで、魔王といずれ対峙する際にかなり大きな差が出る。
「ええ。これは私の能力が関わってくるから、余り言いたくはないんだけど……」
「なら、言えるところだけでもいいです。教えて下さい」
普段ならまず教えてくれないであろう先輩のスキルを知れる機会だ、こんな状況ではあるが少しでも情報は欲しい。
と言っても、能力と言う事で固有スキルかどうかまでは名言しない辺りは流石北川先輩、って感じだけど。
「……私の能力の一つに、魔力を調べることが出来る能力があるの。それで、魔王特有の魔力を感じたわ」
「なるほど」
魔力感知、魔力識別が可能、と。ついでに気配察知の類いも持ってるとか、かなり多芸だよなこの人。
自分のことを棚に上げてそんな事を考える。
「それで、どうするの?」
「んー、そうですね……」
もう少し詳しく知りたいところだが、状況がそれを許さないので自重する。
考え込む素振りをする俺だが、今のところとれる手段は一つしかない。
「ま、とりあえずは隠れてましょう」
現状維持。
そもそも相手の姿を見るという最初の目的すら達成していないのだから、当たり前ではある。
「……そ、そうね。そうしましょう」
「もしかして最初の目的忘れてました?」
「そんなわけないじゃない!バカにしないで!」
……どうやら先輩は忘れていたようで、顔を真っ赤にして慌てていた。
あーもう、そんなに騒いじゃ気づかれるでしょうに。
気配察知……スキルレベルかける30メートルの範囲の気配を察知する。ON/OFF切り替え可能。
隠蔽や魔法で対策出来てしまう上に判断できるのが二足歩行か否か、敵性かどうかくらいというなんとも言えないスキル。




