第十一話
咲やってたらあっという間に時間が過ぎていました。申し訳ないです。
※前半は主人公視点ではないのでご注意を
「まだ見つからないのか!もう丸一日経っているのだぞ!」
そこは迷宮の最下層。
魔王ルキフェルは怒り狂っていた。
「も、申し訳ありません!明日までには必ず見つけますのでお待ち下さい!」
もうすでに一日経つというのに勇者達が見つからない。
自分のテリトリーともいえる迷宮で、まさかここまで時間がかかるとは思っていなかったルキフェル。
「なぜだ、なぜこうも見つからないのだ!」
それにはもちろん理由があったのだが、今のルキフェルには知る由もない。
何から何まで思い通りにいかない状況に、ルキフェルはいい加減我慢の限界だった。
「ルキフェル様、やはりやつらを引き抜こうとしたことは失敗だったのでは……」
一人の部下がルキフェルに言う。
しかしこれがルキフェルを暴走させるきっかけとなった。
「……つまり貴様は我が間違っていたと言うのか?」
その声に込められた怒気に、身を竦める部下。
だが一度口にしてしまったのだから、最後まで続けるしかない。
「……え、ええ。ルキフェル様の判断が正しければ、このような事にはならなかったと思います」
一切反応しないルキフェルに恐々としながらも続ける。
「もし最初から殺そうとしていれば……」
そこで、部下の言葉は途切れた。
いつの間にか姿まで消えていたため、周りの部下たちは目を丸くする。
そんな様子を知ってか知らずか、魔王はおぞましい声で呟いた。
「……我のスキルを使う」
「そんな!」
「それだけは、それだけはおやめ下さい!下手をすれば迷宮が崩壊してしまいます!」
ルキフェルのスキル。
その一言に、慌てふためく部下達。
消えた部下のことなど一瞬で頭から消えていたが、それだけ彼らはルキフェルのスキルを恐れていた。
「ならばどうするというのだ!元はと言えば、貴様らが余りにも使えんからこうなったのだぞ!」
さきほどの部下の話などなかったかのように言うルキフェルだったが、その剣幕に誰も文句を付けることができない。
「ですが!」
「くどい!我はやると言っている!お主らはそれを手伝えばよいのだ!」
スキルを使わないで欲しいーーーそんな部下達の願いは届くことはなく、むしろその体たらくを責められる事になった。
反論も出来ない彼らは、暗い表情のままルキフェルに従う。
「……承知、しました」
これから訪れる災厄に身を震わせながら。
第五層まで来たところで、俺たちは立ち往生することになった。
理由は簡単。
「上層への階段が閉じられてる……」
ここまで来て、恐らく魔王が俺たちを本格的に潰しに来たからだ。
「どうしましょうか?」
いくつか行動は思いつくが、とりあえず北川先輩に聞いてみる。
一人ならまだしも、複数人で行動しているのなら周りの意見を聞くのもマナーだと思うからだ。
「そうね……」
少し考え込み顔を俯ける北川先輩。美人はこういった仕草が大変お似合いです。
「……まず、聞きたいのだけど。この後、魔王はどういった行動に出ると思う?」
「そうですね……」
魔王が取りうる行動。
直接ここに来るとか、迷宮の機能を使って探すとかだろう。
けれど、これはどちらも可能性は低い。
なぜなら、魔王は俺たちの場所が分かってないはずだからだ。
もし場所が分かっているなら、上層に登れなくするよりも直接来た方が早いし、わざわざそんなことをする必要もない。
それに、そんな機能があるのなら、もっと早く使っているはずだ。もったいぶって一日も無駄にする必要はない。
他にもいろいろ思いつくが、これだと言えるようなものはない。
「少なくとも、そうホイホイ出来るような事はやってこないと思います」
なんせ、今までは取ってこなかった行動なのだから。
そんな曖昧な事を俺が口にした瞬間だった。
「ガォォォォォォォォ!!」
「なんだ!?」
どこからか、獣の叫び声が聞こえてきた。
一体何が起きたのか。混乱しつつも一応戦闘に備えていると、北川先輩が焦りながら声をかけてきた。
「楠君、大変よ!」
「何があったんですか!?」
どうやら先輩は事態を把握したらしく、かなり顔を青ざめさせていた。
あの先輩が青くなるほどの緊急事態。一体どれほど大事なのだろう。
少し緊張しながら先輩の次の言葉を待つ。
すると、微かに震えながら、ポツリと先輩が呟いた。
「……この階層に、魔物が……たぶん千体以上、召喚されたわ」
「はあっ!?」
千体!?なんだそれ!
想定外の一言に、思わず取り乱す。
「ほ、本当に千体もいるんですか?」
焦りのあまり口をついて出たその一言に、北川先輩は更に悪い情報を晒した。
「少なくとも、千体よ!それ以上は数えられなかったの!」
「……」
空いた口が塞がらないとはまさにこの事で、唖然としたまま俺は何も口にすることができなかった。
「それで、どうするの!もうすぐここにもくるわよ!?」
しかし、魔物が待ってくれるわけもなく。
北川先輩が急かすのを見て、俺はようやく正気に戻った。
「とりあえず、どこかに隠れましょう!戦う前に、魔物が何なのかくらいは見極めないと!」
咄嗟に出てきたその言葉だったが、考えなしに言ったにしては的を射ていた。
北川先輩も特に否定せず、急いで逃げる準備をする。
「そうね。さっき通った道に隠れる所があったはずだから、まずはそこまで戻りましょう!」
「分かりました!」
そう言って走り出した北川先輩の後を追っていく。
よく通った道を覚えているなあ、なんて考えながら。
……意外と余裕あるな、俺。
ちなみにこの間、西原はずっと主人公に背負われてます。




