第十話
風邪を引いてるとむしろ話を書き進めるくらいしかやることがなくなった……。
それでもやっぱり体調が悪いせいで話が短くなったりしていますので、そこはまあ仕方ないってことで。
「は……?」
呆然とする西原先輩を、剣を振り切った体制のまま見る。
やはりというか、今の俺の動きには着いてこれていなかったみたいだ。
「ふぅ」
隠していた札にはそれなりに効果があったようで一安心する。
もしこれで固有スキルを使っても通じないってなったら、いよいよ北川先輩を見捨てて逃げるしかなくなるところだった。
ーーー俺が使った奥の手、固有スキル【転化】。
これは一言で言うなら「何かを何かに変えるスキル」だ。
これだけ聞くと大したことないように聞こえるが、このスキルのぶっ飛んでいるところは「【転化】するものが等価でなくても構わない」ということ。
1:10どころか1:100、1:1000で【転化】できるのだ。
極端な話、STRを1消費してMPを1億増やすなんてことも出来る。
もちろん、何のデメリットも無しに使える訳ではないので、そこまで極端な【転化】は出来ないのだが。
だが、それを踏まえても、固有スキルの名を冠するに相応しい、まさにチートスキルである。
しかし、このスキルのいかれているところはこれだけじゃない。
このスキルは、一般的なスキルとは異なり、スキルを使う対象を選ばないのだ。
……そう、つまりは自分以外の何かを代償にして自分を強化出来るのである。
まあ、他人のステータスや所持品に触れる場合は許可が必要だったり、余りにも等価ではないもので【転化】したりすると時間制限で消滅したり、なんて制限はあるのだが。
ともあれ。
俺はそんなスキルを使って、髪の毛数本を失った血に変えて、切られた腕を再生力に変えて、傷を治したのだ。
ここまで来るともう人間じゃない何か違う生物な気がしないでもないが、それは置いておく。
そんな事を考えていると、ようやく動き出した先輩が音の発生源を見た。
「……ひ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そして、自分の左腕を見て、絶叫した。
俺は「お返し」の言葉通り、西原先輩の腕をぶった切ったのだ。
その辺に落ちていた石ころをAGIへと【転化】して。
「痛え、痛えよおおおおおお!!あああああああああああああ!!」
剣を手放し、失った腕の傷口を抑えながら泣き叫ぶ先輩を見て少し笑ってしまう。
先ほどの俺と何も変わらない反応、いやむしろ先輩の方が過剰な反応をしているくせに、なぜ先ほどは俺をあざ笑っていられたのだろう。不思議でしょうがない。
「楠くん」
と、今まで唖然としていた北川先輩が俺に話しかけてきた。
「何です?」
一応まだ戦っている途中なのだが。
そう言おうとしたところで、ようやく思い出した。
「ああ、そういえば西原先輩を黙らせるんでしたね」
すっかり忘れてた。
最初は気絶でもさせようと思っていたのだが、油断して腕をぶった切られてからはやり返すことしか考えていなかった。
「じゃあ、【サイレンス】」
風属性の下位魔法、【サイレンス】。そのまんま対象を黙らせる魔法だ。
それを西原先輩にかけると、バタバタ暴れているのに声だけは聞こえないという何とも面白い光景ができあがった。
「ぷっ、お似合いだな」
ジタバタもがく虫のように見えて、つい笑ってしまう。
「……はぁ」
そんな俺を見た北川先輩は少し眉をひそめた後、どこからか取り出したぶっとい縄で西原先輩を縛り始めた。
「え、そのまま縛ったら失血死しません?」
特に心配をしたというわけではないが、黙らせろと言ったはずの北川先輩の行動に違和感を覚えたので聞いてみる。
「大丈夫よ、この縄には特殊な効果があるから」
いやどんな効果だよ。
そう言いかけた俺だったが、なにやら怪しい笑顔を浮かべている北川先輩を見て口をつぐむのだった。
気絶し、縛られた西原先輩ーーー何故か亀甲縛りーーーを担いだ俺は、休憩するために近くにあった広い部屋に向かっていた。
「とりあえず、楠くんが勝ってよかったわ」
「そうですね」
もし負けていたらどうしたのだろうか。
歩きながら、頭の片隅で考える。
……いや本当どうしたんだろうね。大人しく西原先輩に好き勝手させるくらいしかないんじゃ?
「楠くん」
西原先輩が好き勝手する光景を思い浮かべてゲンナリしていた俺に、北川先輩が再度呼びかけてきた。
「何です?」
「えっと」
少し躊躇い、一度西原先輩に視線を向ける。
たぶん起きているかどうかを確認したのだろう、ほっと一息ついてから俺を見つめてきた。
そして。
「ーーーありがとう。このご恩は一生かけてでも返すから」
軽くはにかみながらそう言った北川先輩に、俺は思わず見惚れてしまうのだった。
熱に浮かされたのか、変な作品を思いついてしまいました。
まあ、投稿するかは未定ですが。




