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カゼキリ風来帖  作者: ソネダ
カゼキリ風来帖(9) ~ 最終章 新しき風 吹き抜ける世界
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新しき風 吹き抜ける世界(48) ~ エピローグ 『第二次火焔事変』

 八霊山を破滅の脅威に陥れた事件から10年が経った。

 あの事件は『第二次火焔事変』として護山家の記録に残された。

 その記録を手に取っている護山家が一人、書庫に佇んでいた。

 「ふぅ……」

 一つ溜息を吐いた。高山はるかであった。

 あの事件以降、部下を失い、どうにも寂しい思いをしている彼女である。

 彼女の部下……それは風切あやかに佐渡せきだ。

 どうして彼女達がいないのだろう?あの戦いで死んでしまったのだろうか?

 それについて、彼女が目にしている『第二次火焔事変』の記録を見てみるとしよう。

 

 

 『第二次火焔事変』佐渡せき

 水炎邪霊姫 サン・ラジェイドとの決戦において重傷を負うも、なんとか一命を取り留める。

 しかし傷は深く、持ってもいない魔力を無理やりに引き出した反動で、完治に3年余りを要した。

 そこからリハビリを行い、運動や日常生活…・・・及び護山家の任務を行うまでには更に2年を要してしまう。

 もはや引退をした方が本人にとっては幸せなんではないかと上司である『高山かなた』が進言するも、

 「あやかさんが護った八霊山だから……」

 と頑なに拒否、5年の歳月を掛けてようやく復活を遂げる。

 復活後は地底へ帰る火焔族と一緒に修行の旅と称して連れ去られてしまった。

 今は地底の探索と脅威と戦うための修行に明け暮れる日々を送っている。

 

 佐渡せきについては、そう記されている。

 そのページをめくると次のページにはナオキやサキ、地底の面々の名前(と似顔絵)が記されている。

 

 

 ナオキ

 元々は『地底の奈落王』

 水炎邪霊姫 サン・ラジェイドとの決戦において死亡したかに思われていたが、死亡してはいなかった。

 よく読んでみれば分かるが、どこにも『死んだ』という記述はない。

 サン・ラジェイドと戦った面々の中では一番早く復活を遂げた。

 「この体は生物体じゃないからな。握られたくらいじゃ死なねェよ」

 ということらしい。

 復活後は火焔族を率いて『第二次火焔事変』で荒廃した地上の再興に従事した。

 一通りの再興が完了すると、

 「そろそろ地底が恋しくなってきたぜ……」

 と話し、火焔族を率いて地底へと帰って行った。

 地底も長いこと無人のまま放置されており、また何やら脅威が発生しているやもしれない。

 そこで修行と地底探索のため、共に戦った佐渡せきが同行することとなったのだった。

 「えっ、ちょっと、私はあやかさんに代わって八霊山を護らないと!?」

 「つれねぇなぁ。一緒に戦った仲だろ?」

 そういう問題じゃない!と佐渡せきは拒否したが、

 「いいじゃないですか。あなたもあやかのように強くならないと、やっていけませんよ」

 高山はるかの賛成により佐渡せきの同行が決まったのだった。

 ちなみにナオキは今では『地底の火焔王 ナオキ』と名乗っている。『奈落王』の称号は捨ててしまったそうだ。



 サキ

 サン・ラジェイドにより重傷を負わされるものの、奇跡的に命を取り留めた。

 こちらはナオキと違って生身であるため、致命傷を負わされれば死んでしまうが、生身であるため体力や防御能力は高い。生き残ったのもそれによるものらしい。

 ナオキ同様、『第二次火焔事変』後は地上の再興に積極的に協力した。

 彼女は力には自信があったようで、荒れ果てた大地を一人で耕し、家屋を建て大いに働いた。

 「いやぁ、助かっているよ。良かったら護山家に入らないかい?大歓迎だよ」

 山城 暁に誘われるも、

 「いえ、私はナオキ様について行きますので……」

 丁重にお断りを入れていた。この時、既にナオキは地上を後にして地底へ帰ることを考えていたようだ。

 火焔族には地上が気に入った者もおり、自分の考えを押し付けるわけにもいかない。

 そのことはナオキは誰にも口にはしなかった。しなかったが、サキにはその気持ちが分かっていた。

 だから進んでナオキのお供へ名乗り出た。サキが名乗り出ると、続いて多くの火焔族が前へ出た。

 「お前ら……」

 ナオキは感動し涙した。そして地上の護山家や水の精に別れを告げると、佐渡せきを連れて地底へと帰って行ったのだった。

 


 クァーシア&ウェンシア

 二人は新天地を求めて旅に出た。

 『第二次火焔事変』で密かに炎の魔力を身体に吸収していた彼女達は、元の人間の姿を取り戻していたのだった。

 「オウムの姿の方が世界を旅しやすかったんじゃないかしら?」

 「いや、合体して大きな火の鳥……フェニックスになるのも良かったかな?」

 佐渡せきのフェニックスモードについて、二人は今尚、考えを巡らせていたものだった。

 どうしたらあれを自分達に応用できるのか?応用できれば、いつまでも一緒に……密着していられるのではないか?である。

 「ふむ、そのことを考えながら旅をするのも面白いね。いつか世界の果てで伝説になるのも良い。永遠に残る二人の愛……あぁ、素晴らしいね」

 そうして数百年後に二人は八霊山に戻ってきたのだった。

 その頃には八霊山はどうなっていたのだろうか?

 この記録の筆者でさえ数百年もの時は生きることができないので、知る由もない……。


 

 首領リィザと火狩ヒィ

 邪炎帝、赤金ほたる、火紗とバーン・アウトで発生した邪炎霊はことごとく消滅してしまったが、彼女達だけは生き残った。

 「どうすっかねぇ……俺らは」

 リィザが呟くとヒィは、

 「私たちがとるべき道は3つあるさ」

 一つ目、地上で、八霊山で暮らすこと

 二つ目、地底に帰ること

 三つ目、八霊山を出て、外の世界へ行くこと

 もっぱらこの3つじゃないかとヒィは話した。

 「うーん、どれもめんどくせぇなァ。いっそのこと、母上さまのところへ行っちまった方が良かったかなァ」

 「リィザのバカ……」

 気持ちは分からなくもなかった。血の繋がりはないとはいえ、自分の母親を失ったのだ。

 その喪失感はリィザとヒィの心の中に大きな穴をあけていたのだった。

 「どうすっかねぇ……」

 リィザが溜息を吐いたときだった。

 「あっ、あんなところに居た!リィちゃん!ヒィちゃん!!夕食できてるんだってばぁー」

 「ハァ!?リィちゃん!?」

 思いもしない言葉にリィザは素っ頓狂な声をあげた。『リィちゃん』そんな呼ばれ方をしたのは、この時が初めてだったのだ。

 誰なんだろう?こんな呼び方をしているのは……?

 そう思って声がする方を見ると、そこには青い透き通る髪をした女性が立っていた。

 「誰だっけ?アレ」

 「えっと……どちらさま?」

 ヒィが尋ねると、その女性は『流 ヨゾラ』と名乗った。

 元々は水霊さまだったのだが、そんなことは今は昔。現在は『流 ヨゾラ』と名乗り、食事処『せいりゅう』で働いているらしい。

 「貴方達が手すきだって聞いたの。貴方達、炎の精霊なんでしょ?」

 「邪炎霊だよ、邪炎霊。邪悪な炎の精霊だぜ?」

 「同じ同じ!魔力は使い手の気持ちの持ちようで、善にも悪にも変わるのよ。邪炎霊も炎の精霊も元は一つの炎なのよ……あ、コレ水の精も同じね」

 「そんなことどうでもいいや。その水霊さま……」

 「流 ヨゾラ!」

 「あぁ、ヨゾラさんが何の用だって?」

 水霊さま……いや違った、流 ヨゾラが話すには、なんでもリィザとヒィを『せいりゅう』にスカウトしに来たという。

 『せいりゅう』は食事処であるが故に、炎を使った調理も行っている。その炎……強い火力を出すことが出来れば、更においしい料理が作れるというのだった。

 そんな強い火力を出すことができるのは、今現在八霊山にいるだけでもバーン・アウトから生まれたリィザとヒィだけである。

 それを蒼水れいから聞きつけた(強引に聞き出した)水霊さま……ではなく流 ヨゾラがこうして自ら出張ってきたというワケだ。

 「どうする?リィちゃん。私らどうせやることないし、行ってもいいんじゃない?」

 「そうだなぁ……でも俺を従わせるにはよォ……」

 「フフ、分かっている。力で屈服させる必要があるのだろう?よろしい…・・・掛かってきなさい!!手加減なんかしないんだからね!!」

 「久しぶりに退屈しのぎが出来るってもんだぜ!!あとヒィ、さりげなくリィちゃんとか言ってんじゃないぞ!!」

 「あっ、バレてた?反応ないから、案外、気に入ったのかと思ってたよ」

 そうして数日後、蒼水れいが『せいりゅう』へ行ってみると、

 「おっ、やっぱりヨゾラさまからは逃げられなかったんだね」

 リィザとヒィが働いていたのだった。



 地底の面々のその後はこのようになっている。

 地上には一部の火焔族が残ったが、大半がナオキやサキと一緒に地底へと戻っていった。

 さて……。

 その残った勢力といえば水霊さまと水の精である。

 サン・ラジェイドはもとを正せば水霊さまの娘である『流 あさひ』であった。

 ということは今回の『第二次火焔事変』の元凶の一人ということになってしまう。つまり、同族である水霊さまや水の精への風当たりが強くなったのではないか?という心配があったのだった。

 その後のは八霊山での水の精達に対する扱い、状況をこの記録から読み取ってみよう。


 

 蒼水れい

 彼女は『第二次火焔事変』ものんびり変わらぬ日々を過ごしていた。

 ただ以前と変わったことが一つだけあった。

 「そういや『せいりゅう』に見慣れない人が入ったね。あんな人、八霊山にいたっけ?」

 ある日、佐渡せきが蒼水れいに問いかけた。

 蒼水れいの生活と同様に『せいりゅう』の営業も変わってはいない。

 中では水の精が自慢の八霊名水でうどんやそばを作っている。

 「あぁ、あの人は水霊さまだよ」

 「ええっ!?水霊!?あの水霊さま!?!?」

 「1回目『さま』が抜けてるよ。まぁ、いいんだけどさ」

 蒼水れいの話によれば、水霊さまは神の座を降りてしまったという。

 今では一人の水の精として『せいりゅう』で楽しく働いているのだとか……。

 「でも、魔力は健在なんでしょ?危なくないのかな?」

 「あの人だけならそこまで怖くないさ。怖いのは……」

 そこまで言うと、蒼水れいは口をつぐんでしまった。もともと水の精と水霊さまは殆ど関係性を持ってはいない。

 水の精に直接指示や指令(必要に応じて)を出していたのは、次期水霊さまとなるはずだった流 ヒスイだったのだ。

 それ故に流 ヒスイには厳格さや風格、威圧感が備わっていて、蒼水れいをはじめとする水の精は、彼女を苦手としていたのだった。

 そんな流 ヒスイももういない。

 安心したような、寂しいような、悲しいような……。

 複雑な気持ちを抱いたまま、水の精達は日々を送っている。そんな気持ちを見透かしたように水霊さまは、

 「大丈夫大丈夫!気にしなーい!ほら手が止まってるぅ!そんなことしてる場合じゃないでしょう!!」

 明るく振舞って水の精達を元気付けていたのだった。

 遠い未来、いつかまた水霊さまが八霊山の神さまに戻る日がくるのだろうか?

 水の精達はそれについて考えることがしばしばあったが、水が流れるように気ままに生きている彼女達に、その答えを出すことはできなかったのだった。

 これもまた知る由もないことなのだろう。


 

 あとはおまけ項目として、山城 暁と高山かなたについてが掲載されていた。

 この二名については別段、特別なことは記載されてはいない。

 というのも彼女達については『第二次火焔事変』においての活躍はほとんどなかったからである。

 詳しく載っているのはむしろ彼女達が戦った『災厄邪炎獣 ズィー・ガーネアス』の方であった。

 ズィー・ガーネアスについては発生が邪炎獣による炎の魔力であり、特別強力な魔力の持ち主からでしか生まれない特別な邪炎獣である。

 詳しく語るにしても不明点が多く対処法も確立されていないため、現在でも対処法は研究されているのだ。

 話が逸れた……元に戻そう。

 以上の二名は、八霊山の復興に尽力した。

 高山かなたなどは、また旅に出たいと日頃から話しており、復興の目処が付いたらすぐにいなくなってしまった。

 「もう昔のことは気にするよりも、ここに腰を落ち着けても良いのではないでしょうか?」

 と高山はるかは話したが、

 「旅が癖になっちまってさ。ズィー・ガーネアスみたいな……見たことのない奴がまだまだ世界に沢山いるんだ。そいつらを見ないことには人生って始まらないんだよ」

 「はは、なんですか。それ」

 理屈は分からなかったが、ともかく世界へ出て色々なものを見たいというのだった。

 「はるかもどうだ?ここに居るよりも面白いぞ」

 高山かなたは誘ってみたが、高山はるかの答えは決まっていて、

 「私はここが良いんですよ。あなたと違って、見たいものはここにあるのですよ」

 と言ったそうだ。

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